個のクリエイターのエンパワーメントをミッションに掲げる株式会社foriio。今回は同社が開発・運営するクリエイターのためのポートフォリオサービス「foriio」のコンセプト・活用方法を、同サービスを社内に導入しているイクリエの事例を交えつつ紹介してもらった。
TEXT_山田寛仁(foriio)、濵島広平(イクリエ)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
個人のクリエイターの活躍の場を広げたい
周りの同業者をサポートしたいという想いから始めた、クリエイターのためのサービス
YouTube、TikTokと新しいメディアが台頭する中で表現の幅も広がり、あらゆる人がコンテンツを制作し、発信できる1億総クリエイター時代になりつつある中、クリエイターのスキルをより詳しく把握できる手段は未だに乏しい状況です。
特にSNSなどで目にする最終の成果物だけではなく、何をどうつくったのかなどのスキルの詳細はなかなか見えてきません。また企業側も、いざクリエイターに仕事を頼みたいと思ってもほとんどが人づてで探しているのが現状で、誰とつながっているかに依存し極めて属人性が高い。日本には国内のクリエイティブに関わる人が集うデータベースやプラットフォームが構築されておらず、発注側と制作側の需要と供給のマッチングは未だに最適化されているとは言えない状態です。
デジタルリテラシーが高いクリエイターであれば、ウェブサイト作成サービスを用いて自分の作品サイトを作成したり、デザインツールを使ってPDFなどで共有できる作品集を作ることができます。以前からそのような手段を通して自分の作品集をホームページや印刷物にしている方は一定いました。ただし、クリエイティブな案件はそういった方たちだけで完結することは稀です。デザインであれば、文章を考えるコピーライターやイラストレーターと仕事をすることも多いですし、カメラマンであれば撮影の際はスタイリスト、ヘアメイク、照明(そしてそれぞれのアシスタント)、モデルなど、関わるクリエイターは多いにもかかわらず、そういった方たちの実績や作品集をオンライン上で目にすることは多くありませんでした。
そんな業界で10年以上アートディレクター・デザイナーとして働いてきた経験を元に、すべてのクリエイターが使えるポートフォリオツールを提供することで、日本そして世界に存在する1人でも多くのクリエイターのスキルや実績を可視化し、それぞれが仕事の新しい機会と出会うサポートができればと考え、ポートフォリオサービス「foriio」の開発に着手しました。
今回はこの「foriio」を紹介する機会をいただきましたので、サービスコンセプトと主な機能などを紹介できればと思います。foriioがクリエイターの方々の活動をサポートできれば幸いです。
30秒でつくれるポートフォリオサービス「foriio」
簡単につくれて詳細に可視化できる、クリエイターが使いやすいサービス
foriioはクリエイターが自身の実績を簡単にまとめることができるサービスです。統一されたシンプルなフォーマットで、テンプレートをカスタマイズする手間がいりません。そして画像、動画、ウェブURL、音源、3DCGという様々なタイプの作品を投稿することが可能です。
▲foriioメイン画面
また、foriioはポートフォリオサービスとしてより正確にクリエイターのことを把握できるように、以下の3つの特徴的な機能を設けています。
①クレジット機能
ひとつは「クレジット機能」で、こちらを登録することによって自分が投稿した作品のどこを担当したのかを明確化できます。また、このクレジット機能はInstagramやFacebookのタグ付けと同じ感覚で一緒に制作した他のクリエイターを追加することができます。こうすることで、映画のエンドロールのように「どんな人とどんな役割で携わったのか?」が可視化されます。自分1人で完結する作品もありますが、お仕事の多くは自分以外の人の手も加わって最終の成果物が完成します。
例えば、貴方が3Dキャラクターのモデルをつくったとしましょう。実際にそのモデルの制作をしたのは自分かもしれませんが、服のデザインやキャラクターのデザイン案は他の方がつくった場合も多いはず。そういったときに、自分は「3Dモデリング」とクレジットに記載し、キャラクターをつくったイラストレーターさんを「キャラクターデザイン」としてクレジットを追加してもらい、服のデザイナーさんは「コスチュームデザイン」として……など、具体的にそれぞれのクレジットを追加することで「自分はこの作品のどの部分を担当したのか?」が明確になります。また、クレジットに追加されているクリエイターの人数でも、いつも1人でつくっているのか、大勢のクリエイターとチームとして制作に携わった経験があるのかなど、それぞれのスキルをより詳細に知ることが可能になります。
▲クレジット機能画面
②制作ノート機能
また、クレジットの下には「どうつくったか」を記載できる「制作ノート機能」があります。ここではそもそも制作するに至った経緯や、完成までのプロセスを画像や文章を用いて説明し、作品の文脈を紹介することができます。対面で会えないオンライン上や非同期なコミュニケーションが発生する状況でも「これをつくりました」と成果物を見せるだけでなく、どうつくったのか、どういった経緯でつくることになったのかなど、作品に文脈を加えることが可能です。これは本来対面の面接などにポートフォリオを持って行ったのであれば、自然と口頭で説明していること。オンラインで掲載するポートフォリオでも同じように文脈を伝えられるよう、制作ノートも活用してみてください。
▲制作ノート機能画面
③アピール機能
そして3つ目は「アピール機能」です。アピール機能を使うと自分の関心や興味を、ポートフォリオを見てくれた方に知ってもらうことができます。ポートフォリオは実績やスキルの可視化をしてくれますが、それらはいってしまえば”過去”のこと。今後やってみたいことや、今興味があることなど”現在~未来”のことを可視化してくれるわけではありません。ですので、このアピール機能を使い、これからの関心ごとや興味をアピールしてみましょう!
例えば、「今までは広告の仕事をやっていたが、UI・UXの仕事に興味がある」だったり、「都内で大手クライアントを中心に仕事をしていたが、地方創生の案件に興味がある」など、今までの実績だけでは把握しきれないあなたの”これから”を可視化します。
▲アピール機能画面
非公開機能
3つの特徴的な機能に加えてご紹介したいのがこの「非公開機能」です。作品によって公開・非公開を分ける機能で、まだ完成していないラフの作品や一般には公開したくない作品を非公開にして投稿が可能です。また、それらの作品は限定URLを発行することができ、そのURLを知っている人のみが閲覧できるようになっています。
▲非公開機能の利用画面
このような特徴な機能を通して、foriioではクリエイターの過去から未来、そして表層から経緯など、制作の背景を知ることができるポートフォリオサービスとなります。これを機会にforiioを使ってあなたのスキルや実績をお手軽にまとめてみませんか?
リモートワークで高まりつつある、オンラインでシェアできるポートフォリオの重要性
オンラインがデフォルトなアフターコロナの時代に高まる需要
昨年にパンデミックが起こり、世界中のクリエイターの働き方も劇的な変化を求められました。不要な外出の自粛を求められる中で、今までリアルな場での交流により広がっていたネットワークが遮断されてしまい、クリエイターの方々が新しい仕事や出会いの機会を得ることが困難になってしまいました。そういった背景から、今まで印刷して持ち歩いていたブックや、コストをかけて作成するウェブサイトという選択肢ではなく、オンラインで気軽にシェアできるポートフォリオの需要は一気に高まり、自粛が明けた2020年の6月頃には前年比で10倍の登録者数となり、今では35,000人以上のクリエイターがforiioを利用してくださっています。そして、この「クリエイターのスキル・実績の可視化」は、フリーランスなどの個人だけへの需要だけではなく、リモートワーク・テレワークが強制された組織やデザインチームにも及んでいます。今までは同じ空間の中で、すぐに先輩やチームの仲間どうしでコミュニケーションをとり、見せながらやりとりができたものが、今や完全に隔離されている中でどうチームが取り組んできたものを組織内で共有し、ナレッジシェアの機会を創出するのかというところに企業も注目し始めています。
クリエイター組織のためのナレッジシェアツール「foriio Team」
そういった企業からのご要望に応えるため、ソリューションとして「foriio Team」をつくり、組織やチーム内でもforiioを活用できるサービスの提供を始めました。今回は実際の現場での活用事例として、foriio Teamを導入しているイクリエの活用方法を以下にご紹介します。
法人での「foriio Team」の活用方法 ~株式会社イクリエの場合~
昨年より、イクリエではフルリモートの制作体制を採っており、会社全体、各チーム内での情報共有の必要性は以前に比べ増しました。そこで社内の情報、各社員の習作や成果物の共有の場としてforiio Teamを活用しています。
イクリエには映像・イラスト・フィギュア原型・グッズの4つの制作チームがあり、2020年から準備していた『創業10周年』の取り組みとして、弊社のオリジナルキャラクターを使い、各制作チームの強みを制作物で表現する企画を実施しました。この企画では各チームの進捗状況を、制作担当者が随時共有、意見交換するためにforiio Teamを活用しました。具体的な活用場面は以下のスクリーンショットをご覧ください。
▲映像制作チームの進捗共有
▲イラスト制作チームの進捗共有
▲フィギュア原型制作チームの進捗共有
▲グッズ制作チームの進捗共有
このようにforiio Teamは各社員の制作物を様々なかたちで共有することができ、SNSの感覚でメンバー同士のページを確認することができるので、情報共有の場として活用しています。
イクリエの社内評価の軸には『アウトプットスキル』があり、foriio Teamの活用内容と評価が連動するしくみを導入しています。各自がどんなプロジェクトのどういった内容に取り組んでいたのか、制作スキルの習得のため作成した習作などもforiio Teamを通してチーム内で共有し、テレワークでもお互いの取り組みを可視化されたかたちで伝えることができるので助かっています。
▲プロジェクト時系列のサムネイル
▲習作のデッサン
以上、ポートフォリオサービス「foriio」のコンセプト・活用方法をご紹介させていただきました。foriioにご興味のあるクリエイター、企業の方はぜひお問い合わせください。
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問い合わせ先
foriio公式サイト:www.foriio.com
foriio Team:team.foriio.com
©2021 foriio, Inc