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Clutch(クラッチ)は、カナダ最大のオンライン中古車購入プラットフォームになりたいと考えている。2016年に設立された同社は、8000万ドル(約91億円)のシリーズBラウンドを完了したばかりだ。同社はこのラウンドで獲得した資金を、カナダ国内の新しいマーケットに進出するための準備として、チームの拡大、物流機能の拡充、在庫の拡大に充てる。

ClutchのCEOであるDan Park(ダン・パーク)氏は「我々は2023年末までにカナダ人の90%にサービスを提供したいと考えています。そのためには、カナダのいくつかの主要都市でサービスを開始する必要があります。モントリオールやウィニペグなどはカナダの中でも大きな都市であり、最終的には進出する予定です」とTechCrunchに語った。

Clutchは、近年市場に登場した数少ないオンラインカーディーラーの1つだ。オンラインカーディーラー各社は注力する地域を抱える。米国ではCarvanaとVroomが、英国ではCazooが、メキシコではKavakが、それぞれ最大のプレイヤーとなっている。Clutchはトロントに本社を置き、アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、ノバスコシア州、ニューブランズウィック州、オンタリオ州、プリンスエドワード島州でサービスを展開しているが、2022年にはさらにエリアを拡大する予定だ。海外進出よりもカナダ市場に注力することで、Canada Drivesのような競合他社に先駆けて、数十億ドル(数千億円)規模のビジネスチャンスをつかみたいと考えている。

パーク氏によると、Clutchはこれまでに数千台の中古車を販売し、現在は約1250台超の在庫を抱えているという。同社は、過去の債務融資を使って車両を購入し、オークション、個人販売者、フリートなどから調達した車両を210項目におよぶ厳しい再調整プロセスにかけ、その間にClutchの点検・整備部門が車両の安全性と外観をチェックする。その後、一新されたクルマは平台型トラックにのせられ、パーク氏がいう「ボタンをクリックするとクルマがあなたの家の前に現れるという、可能な限り魔法のような方法で」最終消費者に直接届けられる。

D1 Capital Partnersがリードし、Flight Deck Capital、Canaan Partners、Upper90、Real Ventures、GFC、BrandProject、FJ Labsが参加した今回の資金調達ラウンドは、Clutchが2022年中に従業員を約160人から250人超に増員するのに役立つだけでなく、事業拡大に必要なインフラと物流ネットワークの構築にも役立つ。Clutchはカナダ国内に倉庫を持っていて、そこに車を保管し、最短で翌日には納車できるようにしている。

「在庫を増やし、幅広く多様な車種を揃えることが、来年の大きな課題です」とパーク氏は話す。「顧客がClutchのファンであったとしても、もし顧客が走行距離5万キロのスバルの青いOutbackで2018年以降のモデルを本当に探していて、当社にそのモデルの在庫がない場合、顧客がClutchから購入する可能性はかなり低くなります。我々は、できるだけ多くのカナダ人に対応したいと考えています。そのため、在庫を増やして品揃えを充実させることは、来年のことを考えるとき大きなフォーカスであり、間接的な資金の使い道でもあります」。

eコマースはClutchのビジネスモデルの一部にすぎず、売上高の約半分は保証、保険、融資などのフィンテックサービスによるものだとパーク氏は話す。

「我々がここでやろうとしているのは、本当に合理的な体験を提供することであり、これまでその面での垂直統合はあまり行われてきませんでした」とパーク氏は指摘する。「すばらしい自動車購入体験を提供するだけでなく、消費者をサポートし、また一部のケースでは消費者の信用回復に役立つ金融商品の提示などすばらしい所有体験も提供できます」。

Clutchは、事業規模の拡大にともない、ユニットエコノミクスの向上を目指している。同社のビジネスで最もコストがかかるのは、車両の購入と、生産工程を経て車両を手に入れるための物流だ。カナダ国内でさらに規模を拡大すれば、部品の購入、配送トラックの使用、リフトの使用、その他のコストを効率化することができ、いつかはより多くのユニットで償却できるようになる。

Clutchは中古車マーケットプレイスであるため、在庫のうち電気自動車(EV)はごく一部にすぎないが、パーク氏は今後数年でそれも変わってくると考えている。

「我々のモデルは、EVにより適していると確信しています」と同氏は話す。「EVは一般的に再調整が少なくて済みます。ガソリン車の可動部品は2000個ですが、EVは200個で、当然メンテナンスも少なくなります」。

従来のディーラーの多くは、利益率を得るために部品やサービスに大きく依存しているが、Clutchはそこで利益を得ているわけではない。利益率はさておき、Clutchが内燃機関搭載車を販売する際には、そのクルマが送られる地域に3本の木を寄付するとパーク氏は話した。同社はこれまでに約8000本を植林したという。

画像クレジット:Clutch

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi