総務省は2004年度より周波数再編アクションプランを策定しており、毎年度改正・公表しています。
現在その中の携帯電話向けとして案が上がっている中で最も動きがある周波数は2.3GHz帯(2330~2370MHz)で、早ければ本年度中に割り当てられる予定となっています。
その2.3GHz帯の利用に関する調査が行われた際の結果が公表されたようなので、簡単にまとめます。
なお2.3GHz帯の詳細については、こちらの記事でまとめています。
全キャリアが最大の帯域幅の割当を希望
対象の通信事業者であるNTTドコモ、KDDI(沖縄セルラー電話)、ソフトバンク、楽天モバイルの4キャリアおよび5社が割当を希望する意見を提出しました。
各社の概要は以下の通りです。
NTTドコモ
- 最大の40MHz幅を希望し、イベント会場などの局所的な利用を想定。
- 割当時期:準備が整い次第の割当を希望。
KDDI及び沖縄セルラー電話
- 最大の40MHz幅を希望し、郊外部・夜間のトラフィック対策(既存周波数の補完)としての利用を想定。
- 割当時期:2021年度中を希望。
ソフトバンク
- 共用相手に影響を与えない最大の帯域を希望し、イベント会場や地下施設などの局所的な利用、既存周波数と組み合わせたトラフィック対策などの利用を想定。
- 割当時期:準備が整い次第の割当を希望。
楽天モバイル
- 最大の40MHz幅を希望し、東名阪の地域において制約が少ない地域から5Gエリアの構築を補完するような利用を想定。
- 割当時期:2021年度中を希望。
ソフトバンクでは40MHz幅という明確な表記はしていないものの、一般的に解釈すれば40MHz幅を希望していることとなり、実質的に全社最大の40MHz幅で希望するという結果になっています。
また、この周波数は5Gで運用する前提で話し合いが行われていることから、4Gでの運用は行われないでしょう。
運用時間や場所の制約が多くエリアが限定的となる見込み
このように各社割当を希望するものの、既存の周波数と比べ制約が多く、どの事業者に割り当てられても運用地域は限られるということが予想されます。
2019年に割当が行われた5G向け周波数では、狭くても100MHz幅という広めの帯域幅であったため、これらと比べても速度の向上は見込めません。よって、かなり有効活用が難しい周波数になるでしょう。
なお、現在この周波数は公共業務無線と放送事業者で中継等に用いられるFPUに利用されています。
その他周波数も各社割当を希望
その他、周波数再編アクションプラン(令和3年度)(案)に記載されている周波数についても、各社同様にほぼ全ての帯域の割当を希望しているようです。
これら周波数帯と運用が想定されるNRバンド(策定予定も含む)は
- 2.6GHz帯:n41
- 4.9GHz帯:n79
- 26GHz帯:n258
- 40GHz帯:n259
となっています。
なお、これら周波数についてはまだ検討段階となっており、割当時期は未定です。また2.3GHz帯同様に、ダイナミック周波数共用の適用を想定して検討されています。
まとめ
日本では諸外国で一般的な電波割り当て方法であるオークション方式を採用しておらず、国が審査を行い、どの事業者に割り当てるかを決定します。
総務省の資料によると、これらの提出された意見は審査に直接関与しないようですが、各社割当希望への意欲を示している様子です。つまり、どの事業者に割り当てられてもおかしくない状況です。
また楽天モバイルは東名阪以外の1.7GHz帯が割り当てられているためか、東名阪地域での5Gエリア補完と記載しているのが印象的です。
このように2.3GHz帯は割当への準備が着々と進められているようなので、続報に期待です。
アイキャッチ画像:ぱくたそ
参考
総務省|報道資料|「周波数再編アクションプラン」の見直しに係る意見募集 (令和3年9月13日)