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 東日本大震災の被災地で国が「復興道路」として整備を進めてきた自動車専用道路「三陸沿岸道路(三陸道)」が18日、全線開通した。岩手県普代村―久慈市(25キロ)の工事が完了し、仙台市―青森県八戸市(359キロ)の全区間がつながった。物流促進による被災地の活性化が期待される。

 三陸道とともに、沿岸と内陸を結ぶ4路線(宮古盛岡横断道路、東北横断自動車道釜石秋田線、相馬福島道路、みやぎ県北高速幹線道路)も「復興支援道路」として整備され、既に全線開通している。今回の三陸道の全線開通で計約570キロ、総額2・2兆円の道路復興事業が完了した。

 三陸道は1974年度に事業化された。震災前の開通区間は全体の3割(130キロ)だったが、国は震災後、復興支援や災害に強いインフラ(社会基盤)整備などを目的に建設を加速させた。西銘復興相は18日に岩手県久慈市で行われた記念式典で、「全線開通は東北被災地の復興を力強く
牽引けんいん
するものだ」と述べた。

 仙台―八戸間は震災前、三陸沿岸経由で車で約8時間半かかったが、約5時間に短縮される。また、仙台東部道路経由で常磐道に接続するため、首都圏への輸送効率が上がる。沿線では、震災の教訓を伝える伝承施設の開業も相次ぎ、自治体などは観光誘客にも取り組んでいる。

 民間の調査研究機関「岩手経済研究所」は復興道路と復興支援道路による経済効果について、東北全体で年760億円に上るとの試算を公表している。

 岩手県北部にある田野畑村のシイタケ工場「サンマッシュ田野畑」は3年前から関東地方に販路を拡大した。三陸道が順次区間開通して運送時間が短縮され、鮮度の良い状態で出荷できるようになったためだ。今年の生産量は2018年の2倍の300トンを見込んでおり、青木貴行常務(51)は「三陸道がなければ、会社はなくなっていたかもしれない」と話す。

 震災時、沿岸の国道45号が津波で寸断された教訓から、三陸道は津波浸水エリアを避けたり、高い場所を通ったりするよう設計された。災害時に緊急輸送路となる「命の道」としての機能もあり、道路上に避難するための階段が、岩手県内では14か所設置されている。