大阪で24人が死亡した放火殺人事件。現場から皆川玲奈キャスターの報告です。
大阪市北区の現場はこの夕方の時間も歩行者が多く、また交通量も多い繁華街です。火事があったのは道路の反対側の灰色の建物です。ビルの4階部分を見てみますと、今もブルーシートがかけられています。そして、4階の左側は天井の部分が黒く焦げていて、この場所からもそれを確認することができます。あの辺りがクリニックの入り口だということです。
これまでの調べで、火を付けたのは出火元のクリニックに通っていた61歳の患者の男とみられることが分かりました。更に現場から見つかった油の成分はガソリンの可能性があるとみて調べを進めています。
17日、大阪・北新地の雑居ビルで起きた火事。27人が心肺停止で病院に搬送され、うち24人が死亡する大惨事となりました。
皆川玲奈キャスター
「火事から一夜明け、ビルの4階部分には今、オレンジと青のシートがかぶせられています。ビルの下にいましても、少し風が吹くと焦げたような臭いがします。飲み物を置いて手を合わせている方がいらっしゃいます」
献花に来た人
「悲しいを通り越して虚しさというか。放火ということが報道されてからは、憤りという気持ちに変わって」
一方、警察と消防は18日午前10時から、現場検証を始めました。火事が起きた際、火元となった4階の心療内科クリニックでは、うつ病などで休職した患者らの職場復帰を支援する「リワークプログラム」を実施していたとみられています。
クリニックの患者
「3、4人は確実に顔見知りなんですよね。友達っていうか、一緒に20代から60歳くらいまで、いろんなメンバーでしゃべったりした」
「優しい。診察自体はすごく早い。すごく丁寧に診てる。プライベートなことも軽く聞いてくれて、何かトラブルがないか、とか、『気を付けてくださいね』って、そういうところまで気を遣ってくれる、優しい先生。絵を見てもらって、私の才能を認めてくれて、天才だって言ってくれて、それがうれしかった」
警察によりますと、18日午前10時ごろ、エレベーターを降りて入ってきた男が、持ってきた紙袋を暖房器具の近くで蹴って倒しました。そして、紙袋から液体が漏れだし、その直後に火が燃え広がったという目撃証言があるということです。
通院していた女性は、「クリニックの入り口で出火したら、とても逃げられない」と証言します。女性にクリニック内の見取り図を書いてもらいました。
クリニックの患者
「ここに(扉が)あって降りられるんですけど、若干、扉は重たい。ここに火があったら逃げられない。(Q.火の手が上がってたら、ここが通れない?)ここ狭いんです。(コロナ禍で)扇風機がずっと回ってるので、すぐ煙も回ると思う。辛かっただろうなと思います。言葉にならない」
被害者の多くは診察室付近で倒れていたといいます。エレベーターや非常口という出入り口を猛烈な火で塞がれたため、クリニックの奥の診察室などに逃げた末に一酸化炭素中毒になったとみられています。
また、火を付けた男は、現場にとどまったあとに病院に運ばれましたが、重篤な状態だということです。男はその後の警察の調べで、このクリニックに通っていた61歳の患者とみられることが分かりました。
皆川玲奈キャスター
「男の家の家宅捜索が行われていて、右側に男の家があるのですが、そこから2~3人捜査員が出てきて、何やら話しています」
男の自宅とみられる住宅は北新地から西に3.5キロほど離れた大阪市西淀川区。この住宅でも18日、北新地の火事が起きる30分ほど前に、放火とみられる火事が起きていました。
近隣住民
「(男を初めて見たのは)4、5日前でした。(Q.何と声かけした?)『引っ越ししてきたんですか』と。小さい声で返事して、自転車で行った」
この住宅からは、男のものとみられるクリニックの診察券が見つかったということです。男はなぜクリニックに火をつけたのか、一体どんなトラブルがあったのでしょうか。
トラブルについてですが、18日に取材をした人に聞くと、「特に無かった」と言っていました。院長については、1人で診察や復職支援を担当していて、忙しいながらも一人一人に寄り添ってくれる人だと話していました。3年前からクリニックに通院していた方は、「個人的な相談を院長がすごく聞いてくれて、自分が絵を描くのが得意だと話したら、じゃ、その絵を描くのをどんどん伸ばしていった方がいいよと、すごく褒めてくれたのが、うれしかった」と言っていました。そういった話を聞きますと、本当に今回の事件、胸が痛みます。
17日から現場で取材をしているMBS毎日放送の國土愛珠記者の報告です。
Q.放火当時の状況について詳しいこと、分かっていますか?
出火元となった4階のクリニックですが、出入り口付近が激しく燃えていて、目撃者の話によりますと、男が来院してすぐに紙袋を蹴りだし、液体が漏れて暖房器具に燃え移って火が出たということです。また、現場からは油分のような成分が検出されていて、警察はガソリンの可能性もあるとみて詳しく成分を調べています。
Q.現場、18日朝からの動き、何かありましたか?
18日も朝から取材に当たっているのですが、17日以上に通りかかる方が手を合わせられたりとか、通院していた方が現場にお花を手向けられたりとか、多くの姿がみられました。話を聞きますと、皆さんやはり「先生は優しい、いい先生だった」と口をそろえて話していました。
警察は18日から、亡くなった24人の司法解剖を進めていて、身元の確認を急ぐとともに死因を詳しく調べています。