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ロシアの通信料金は、世界的に見ても信じられないほど安いことをご存知でしょうか? ヨーロッパの平均通信料金の4分の1とも言われています。近年では銀行が通信サービスに参入し、さらに安いサービスが登場。各社の携帯電話通信費や家の通信費を比較しながら、ロシアの破格な通信料金の背景を解説します。

↑ロシアの通信料金はありがたいほど安い

 

まずは、ロシアの通信料金(※)を見てみましょう。モバイル通信分野でロシア国内最大手のエムテーエスは、下記のような月額プランを打ち出しています(2021年11月3日現在)。

※1ルーブル=約1.6円で換算(2021年11月1日時点)

 

携帯電話の通信費(5GBの通信費付):470ルーブル/月(約757円)

自宅のインターネット回線(200mbps):500ルーブル/月(約806円)

 

通信費はアプリで手軽にいつでも変更可能。新しいプランはすぐに適用されるなど、日本と違い、プラン変更の容易さはロシアの特徴の1つです。

 

ロシアのインターネット環境は街の至る所で整備されており、レストランやショッピングモールはもちろん、地下鉄をはじめとする公共交通機関、さらに路上の多くの場所でフリーWi-Fiが使えます。このWi-Fiは自宅の中からでも繋がるので、端末のモバイルネットワークを使用する機会はそれほど多くありません。よって、携帯電話の通信費が安いプランでも問題がないのです。このような理由で、ロシアは「Wi-Fi天国」といえるかもしれません。

↑ロシアの地下鉄のフリーWi-Fi

 

なぜそれほど通信料金が安いのでしょうか? その理由を明らかにするため、筆者はヤンデックス社のプログラマー数人にインタビューを行いました。ヤンデックス社はロシア最大のインターネット企業で、「ロシアのGoogle」とも言われています。

 

彼らによると、主に3つの理由が挙げられるとのこと。

 

その1: ロシアの平均収入が低い

ある法律系情報誌の調査によると、ロシアの平均月給は5万1344ルーブル(約8万2680円)と、日本や欧米と比べると低い水準。それに合わせる形で通信料金の価格が設定されたといいます。

 

その2: ロシアにはインターネットプロバイダーが多数ある

国家通信情報管理庁によると、ロシアでライセンス登録されているプロバイダーは18万4810社(2021年11月2日時点)。消費者は数多くあるプロバイダーから自由に選ぶことができるので、自然と価格競争が起きた。また、プレーヤーが多いからこそ吸収や合併も頻繁に起こり、その結果として1社の経営規模が大きくなり、価格を抑えることができる。これは価格を下げることでユーザー数を増やし、一人当たりの費用を少なくするという仕組みです。

 

その3: ネット普及率がとても高く、需要が大きい

Digital 2020によると、ロシアのインターネット普及率は81%。ヤンデックス社のプログラマーによれば、ロシアは通信回線の速度、質、金額において世界で最もコストパフォーマンスが良い国の1つであるそう。ロシアはインターネットを普及させる際、アメリカから最新技術を輸入しました。しかし、価格はロシアの生活水準に合わせたので、質が最新であるにもかかわらず、価格はユーザーにとって「ありがたいほど安かった」とのこと。これにより需要は増え、上で述べたように供給側で競争が起こり、価格が低いままであるそうです。

 

銀行も参入

ロシアのプロバイダーは増え続けており、近年では銀行も参入し、口座を持っている顧客には携帯電話通信サービスを安く提供するシステムが登場しました。ガスプロムバンクはロシア最大の非国有銀行であり、同国三大銀行の1つですが、2020年12月に次のようなサービスを始めました。

 

携帯電話通信費(4GBの通信費付):250ルーブル/月 (約403円)

口座を持っており規定を満たす場合:75ルーブル/月 (約121円)

 

銀行口座保有者に提供されるこの価格は、特に低所得者層や年金受給者層の間で人気です。年金受給者である筆者の義父もこのサービスに変えましたが、問題なく使えるそうで、とても満足しています。

 

昨今のコロナ禍でネット需要はますます高まっており、今後もロシアではプロバイダーが増え続けることでしょう。そうなったとしても吸収・合併が起こり、通信サービスは低価のまま提供され続けることが予想されます。ロシアの安くて速い通信回線は今後も国の成長を助ける大きな力となるでしょう。