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バルセロナを拠点とするモバイルキーボードソフトウェアメーカーのFleksy(フレキシー)が160万ドル(約1億8250万円)のシリーズAを獲得し、AndroidおよびiOS向けのホワイトラベルSDKのB2Bへの移行を進めている。

今回のラウンドはスペインの資産管理会社Inveready(インベレディ)が主導。また、既存の投資家であるSOSVとSimile Venture Partners(シミールベンチャー・パートナーズ)からも資金提供を受けている。

今回のシリーズAにより、2015年の創業以来のこれまでの総調達額は300万ドル(約3億4200万円)弱となった。

AIキーボードメーカーである同社は、スマートフォンのサードパーティ製キーボードの分野で長く活躍しており、当初は生産性向上に特化したキーボードThingThing(シングシング)を開発していた。その後米国で有名なカスタムキーボードFleksy開発チームがPinterestに買収された後、停止状態となっていた)のアセットを買収し、以来Fleksyの開発に全力を注いでいる。

しかし、コンシューマー向けカスタムキーボードの分野で収益化を図るのは至難の技である。今や単語予測やスワイプ入力などの機能がスマートフォンのネイティブキーボードに組み込まれているため、サードパーティ製のアドオンの価値は低下しているからだ。

また、AppleやGoogleのような大手企業も独特の方法でこの分野で幅を利かせている(例えば、iOSにおける頼りないサードパーティ製キーボードの実装状況によって、ユーザーはAppleのネイティブキーボードから乗り換えられないでいる。また、GoogleのPlay Storeは一時期に不愉快なポリシーを実施していた)。

Fleksyは2020年SDKを発表して以来、カラーチェンジやブランド化などさまざまな方法で適応させることができ、強力な予測機能や文脈に応じたカスタムAIキーボードソフトウェアを必要とする他のアプリメーカーや企業に、同社キーボード技術のライセンス供与を行ってきた。

キーボードSDKは、サードパーティがユーザーをより深く知るために、あるいは自社の販売促進のために使用することも可能だ。

またFleksyがウェブサイトに掲載している、SDKを介してクライアントが実装できる機能としては、キーボードに文脈に応じた広告を埋め込む機能(文脈に応じて製品やサービスを提案し、トリガーを設定して適切なタイミングであらゆるアプリにブランドを表示する機能)や「ショップがキーボードからマーケティング資料、請求書、更新情報、タスクを送信したり、支払いを徴収したりできるようになる」という近日公開予定のCRM機能などが挙げられる。

セキュリティ関連の機能も「近日公開」とされており「データ漏洩や機密情報の流出防止、リスクを抱えた従業員の監視、メッセージの保護、不正行為の防止」などを実現するカスタム機能も完備する予定だという。

このようなB2B戦略と並行して、同社はコンシューマー向けソフトウェアの分野にも注力しており、GoogleのGboard(ユーザーの検索データをGoogleに送っている)のようなソフトウェアとの差別化要因としてユーザーのプライバシーを強く強調している。また最近では「アートキーボード」で顧客の心を掴もうと試みていた。

しかし、同社の重心がB2Bに移行しているというのは明白だ。「Fleksy for Business」のメッセージがウェブサイト全面に押し出され、ディープテックな雰囲気を放つデザインに一新されている。

それでもコンシューマー向けキーボードはコアなファンのためにも、また、ショーケースやテストベッドとしての有用性を考えても残り続けることだろう。

「Google やAppleなどの大手企業が公平に競争してくれないため、消費者分野は厳しいものになっています。そこで私たちは、他の企業が優れたキーボード体験やそれを超えた体験を構築するのをサポートしてライセンス料によって提供するという、収益性の高いニッチな分野を見つけたのです」と、FleksyのCEOであり、ThingThingのCEO兼共同設立者でもあるOlivier Plante(オリビエ・プランテ)氏はいう。「我々が作り上げたものはなかなか簡単に作れるものではないので、こういったデジタル企業にとっては非常に使いやすい製品になっています」。

サードパーティが同社のキーボード技術を使ってユーザーをデータマイニングしようとするのではないかというプライバシーに関する疑問を投げかけたところ「FleksyのSDKは、各企業が独自の原理で成功するために必要なすべてのツールを提供します。Fleksyは技術的な役割を果たしているだけで、クライアント自身のプライバシースタンスには関与していません」と同氏は答えている。

ただし「誤解のないようにいうと、Fleksyのコンシューマー向けアプリは常にプライベートを守ります。その原理を変えることはありません」と付け加えている。

Fleksyによると、同社の技術をライセンス供与している企業は現在「数十社」にのぼり「パイプライン」にはさらに50社が含まれているという。また、SDKビジネスの収益は1年で10倍になったという。

シリーズAの規模が比較的小さかったのは、このような背景があったからだとプランテ氏は考えている。

「現在かなりの収益を生み出しているため、この程度しか必要なかったのです」とTechCrunchに話しており、今シリーズAを調達する理由は「より早く拡大するため」だという。

今回得た資金は、成長、雇用(現在13人のチームを拡大するため)、および顧客ポートフォリオの拡大のために使用される予定だ。

Fleksyにとってキーボード技術のライセンス供与に最適な市場は、現在米国と欧州となっているが、プランテ氏は世界中に顧客がいると考えている。

SDKはまた、デジタルヘルスやフィンテックからゲームまで、幅広い顧客層を惹きつけている。

「あらゆる企業が新たなキーボード体験を探し求めています。ウェブサイトの/solutions/にあるように、これらの業界、さらにはますます多くの業界がFleksy技術によって支えられるようになるでしょう」。

「当社にはさまざまなニーズを持つあらゆるタイプの顧客がいますが、サードパーティのブラックボックスではなく、すべてを自社で構築しているため、顧客に合わせてすべてを修正することができます。これは現在、他の企業では実現できないことです。そのため、例えばデジタルヘルス分野の企業は、技術スタックを完全にコントロールできる収益性の高い企業と提携することができるのです」と同氏。

「Fleksy SDKは、レイアウトや辞書からオートコレクトや予測、センチメントなどを支えるコアエンジンに至るまで、さまざまな方法で変更を加えることができます。これこそがFleksyが選ばれる理由なのですが、将来的には『画面入力と言えばFleksy』という、より大きなビジョンを実現できるよう取り組んでいます」。

シリーズAの資金調達の一環として、InvereadyのIgnacio Fonts(イグナシオ・フォンツ)氏がFleksyの取締役に就任する。

フォンツ氏は声明中で次のように述べている。「私たちは、パーソナル・コンピューティング(携帯電話、モバイル、デスクトップ)デバイスのコントロールポイントの1つであるキーボード技術において、世界的なリーダーの地位を獲得したFleksyチームに参加できることを大変うれしく思います。今回のラウンドにより、ユーザーにはデバイスとの新しい関わり方を、企業には顧客に関する新しい洞察を提供する、非常に魅力的なロードマップの開発を加速させることができるでしょう」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)