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M-1グランプリ2021」(テレビ朝日系列・ABCテレビ制作)が12月19日に放送される。決勝に進出する9組が発表されたが、その“吉本興業率”が話題になっているという。

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【写真5枚】今年のM-1では「非吉本」のコンビに追い風が吹くとも言われている。出場が決まっている9組のうち、該当するのは3組だ

 バラエティ番組の制作に携わるスタッフは「顔ぶれが発表されると、例年以上にファンの期待が高まっているようです」と言う。

「かなりの番狂わせが起きたため“マジでガチ”と喜ばれているのです。優勝候補と言われていた見取り図、ニューヨーク。人気コンビのアインシュタイン、ハライチ、アルコ&ピースといった面々が、決勝進出どころか準決勝で敗退してしまいました」

「M-1」公式サイトより

 そして決勝進出9組のうち、吉本興業の所属が5組、非吉本系4組となっている。

 テレビ業界の一部からも「非吉本の芸人に追い風が吹くかもしれない」と注目が集まっているという。

「非吉本のコンビで優勝したのは、第2回が松竹芸能のますだおかだ、第4回が人力舎のアンタッチャブル、そして第7回がフラットファイヴ(現在はグレープカンパニー)のサンドウィッチマン、この3組だけです」(同・スタッフ)

 M-1グランプリは2001年に第1回が開催され、吉本興業の中川家が優勝した。以来、11年から14年の中断期間を除くと、栄冠に輝いた16組のうち吉本所属が13組と圧倒的多数を占めている。

M-1の決勝に進出したコンビ

実力主義vs.忖度

「第1回から7回までの内訳は、吉本4組に対して非吉本が3組とほぼ互角でした。しかし、08年の第8回以降10年以上も、非吉本のコンビが栄冠から遠ざかっているのですから、視聴者から疑問の声があがってもおかしくないでしょう」(同・スタッフ)

 審査員の顔ぶれは4年連続で同じだ。視聴者の期待に応え、どこまで非吉本コンビに“忖度”するのか、あるいは何らかの思惑が働くのか、テレビ業界は注視しているという。

「非吉本系の決勝進出コンビを見ると、モグライダーがマセキ芸能社の所属です。同社は関東お笑い界の総元締めと言われ、ウッチャンナンチャンや審査員を務めるナイツの塙宣之が所属しています。ランジャタイのグレープカンパニーには、07年のM-1王者で同じく審査員を務める富澤たけしのサンドウィッチマンが所属。真空ジェシカは人力舎で、先輩のアンタッチャブルが04年に優勝しました。錦鯉のソニー・ミュージックアーティスツからはM-1王者が出ていませんが、12年のキングオブコントで優勝したバイきんぐが存在感を示しています」(同・スタッフ)

 もちろん、非吉本系を自動的に勝たせる、という意味ではない。実力主義であることは言うまでもない。しかしながら、審査員はプロデューサー的な観点も併せ持っているという。

実力だけでは勝てない

「審査員は実力だけでなく、話題性や華も意識して点数を付けています。19年に優勝したミルクボーイに歴代最高得点を与えたり、昨年は優勝コンビのマジカルラブリーのネタに『あれは漫才なのか!?』と議論が起きたり、というのが良い例です。単純に芸達者なコンビを選ぶだけでなく、大会が終わってからも世論が盛り上がることが多い。テレビ的な反響を呼ぶということも考慮して選考しています」(同・スタッフ)

 実力が図抜けているコンビが出現すれば、優勝で問題ないだろう。だが、迷った場合はどうなるか。話題性を考慮して、そろそろ非吉本のコンビを選ぶ──こういう事態が発生するか否かも興味を集めているというわけだ。

「審査員は『優勝後の活躍が想像できるか?』という観点でも見ています。マジカルラブリー、霜降り明星、アンタッチャブル、サンドウィッチマン、ますだおかだ、中川家、いずれもMC番組を持ったり、それに等しいポジションを得ていたりするなど、文字通りテレビ界の人気者です。未来のスターを発掘しようという意識は、常に審査員にあると思います」(同・スタッフ)

無名コンビが有利!?

 ただ、玄人好みの芸人だからといって、切って捨てられることはない。芸達者もきちんと評価される。

「具体的にはミルクボーイ、銀シャリ、笑い飯という話術が飛び抜けているコンビです。彼らは民放キー局のゴールデン番組に起用されることはないかもしれませんが、劇場で大爆笑を確実に取ることができます」(同・スタッフ)

 広範な視聴者から人気を獲得することも、ましてや、お笑い好きを唸らせることもできないコンビは、たとえM-1の決勝戦で爆笑を取っても、高評価にはつながらない傾向があるという。

「あとは会場の客を、どれだけ味方につけられるかです。敗者復活から優勝したサンドウィッチマンとトレンディエンジェルが代表例です。その年に突然現れたコンビが優勝をかっさらうことは珍しくありません。そういう意味では、オズワルド、ゆにばーす、インディアンス、錦鯉は、既に知名度を持っています。とんでもない新星が登場すると、割を食ってしまう可能性があります」(同・スタッフ)

 観客や視聴者が、非吉本のコンビを積極的に応援するような雰囲気になれば、更に追い風は強くなる。

注目はランジャタイ

 初出場で非吉本のコンビとなると、真空ジェシカ、モグライダー、ランジャタイの3組となる。

「中でもランジャタイは、決勝進出が発表されるとTwitterのトレンドランキングで1位になりました。世間の注目は高く、好感を持たれています。ちなみに昨年の敗者復活戦ではスベって最下位でした(笑)。こういう“一か八か”の芸風は、決勝戦で台風の目になるのではないかと期待できます」(同・スタッフ)

 そして大穴は敗者復活枠だ。ベテランが意地を見せるか、もっと無名の若手が飛び出してくるか──。誰が出てくるかによって、非吉本のコンビが有利になったり、不利になったりするかもしれない。

 明石家さんま(66)は12月4日に放送されたMBSラジオ「ヤングタウン土曜日」でM-1に触れ、「大会やからその日の調子、空気あるし、非常に難しいと思うわ」と挑戦者を気づかった。

 決勝戦が行われる19日は日曜。午後6時34分から放送される予定だ。

デイリー新潮編集部