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 日本大学医学部付属板橋病院を巡る背任事件で、「日大のドン」こと田中英寿理事長(74)の共犯としての立件はひとまず見送られたが、新たに総額1億円超の所得隠しの疑いが浮上した。

日大背任事件まさかの2度ガサ入れ…ドン田中理事長のアキれた“ごっつぁん”体質

 建て替え工事の設計や医療機器の調達などで大学に計4億2000万円の損害を与えたとして、背任容疑で起訴された田中氏側近の日大元理事の井ノ口忠男(64)と医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳両被告(61)。2人は過去3年間、取引業者からリベートをもらったことへの「謝礼」として、田中理事長に多額の現金を提供していたとされる。

 だが田中理事長は東京地検特捜部の任意聴取に対し、「金はもらっていない」と現金の授受を否定。3年間、日大理事長の報酬と、保有する不動産関連の収入しか税務申告していなかった。

「井ノ口は昨年2月から今年6月まで設計関連で4000万円、機器調達で3000万円、4回にわたり、計7000万円を理事長に渡したと供述している。一方、籔本は昨年8月と10月の2回、仕事をもらったお礼と理事長再任祝いの名目で3000万円ずつ渡している。籔本が秘書に出金を指示したメールも残っています。8月に都内の焼き肉店で3000万円渡した際は井ノ口も同席していたので、その3000万円に関しては同じ金だと思う。それでも理事長が2人から受け取った金は1億円に及びます」(捜査事情通)

通帳代わりに入出金メモ

 特捜部は今年9〜10月、東京・阿佐谷の田中理事長の妻・優子氏が経営するちゃんこ屋兼自宅を2回、家宅捜索した。部屋には1億数千万円の現金が保管されており、特捜部は井ノ口被告から理事長に渡った1000万円の銀行支店の帯封を押収している。

 逮捕後、すぐに口を割った籔本被告に対し、ようやく井ノ口被告も現金を提供したことは認めたが、「詳しい資金の流れは説明していない」と供述。田中理事長も自宅にあった現金について「ちゃんこ屋の売り上げや夫婦の個人的な財産だ」と説明しているという。問題は、田中理事長が受け取ったとされる現金が、どういう経緯で手元に来た金なのかを理事長が知っていたか、どうかだが……。いずれにせよ、井ノ口と籔本両被告から受け取った現金を意図的に隠していたとしたら、所得税法違反にあたる。

「理事長は昔から現ナマ主義でクレジットカードはおろか、銀行口座もないそうです。収入はすべて現金のまま、自宅で保管しています。常に100万円の札束を持ち歩き、自分を慕う取り巻きや、かわいがっている相撲取りなどに酒や食事を振る舞ったり、気前よく小遣いを渡しています。通帳がないと金の出入りが分からないので、いつ誰からもらった金か、どこの誰に支払ったか、相手の名前や日時までメモに残しているそうです」(日大関係者)

 1億数千万円もの現金を自宅で保管していること自体、あまりにも不自然。これも「証拠」を残さないための手段なのか。

東京地検特捜部は現金2億円超を発見

 東京地検特捜部は、日大元理事の井ノ口忠男、医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳両被告を逮捕した10月、関係先として日大の田中英寿理事長の東京都杉並区の自宅を家宅捜索した際、2億円超の現金が見つかったことが分かった。

 田中理事長は5年前、国税当局から数億円の所得を申告していない疑いがあるとして調査を受け、数千万円の申告漏れを指摘されて修正申告した。

 こうした経緯から、理事長は保管していた現金について申告の必要性を認識しているとみられ、特捜部は申告漏れではなく、所得隠しの疑いがあるとみて調べている。