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 政府は、55兆7000億円程度の財政支出となる過去最大規模の経済対策について閣議決定しました。住民税非課税世帯に10万円、GoToトラベル再開、子どもへの10万円給付など分配重視にも見えますが、実際に困っている人がもらえないという声が聞こえてきます。

 都内に住むAさん(53)。14年前に離婚し、シングルマザーで3人の娘を育てましたが、今は皆、成人。10万円の給付が受けられない人の一人です。

 「ほとんど見切りの金額だったから、今日はすごい収穫です」

 今年春まで市役所の生活相談員をしていました。ただ、非正規雇用で1日6時間、週5日働いていたほか、飲食店や清掃のアルバイトの掛け持ちをしても年収は250万円程度でした。しかし・・・

非正規雇用だった女性
 「コロナの関係で(バイトがなくなり)確定申告で、手取りは140万円になりました」

 貯金残高はおよそ4万円。今は新しい仕事を探しています。

岸田文雄首相
 「非正規、女性、子育て世帯、学生をはじめ、コロナでお困りの皆さまへ、給付金をお届けする」

 しかし、10万円給付の議論は子育て世帯の年収制限の問題に終始。働いても生活が苦しい「ワーキングプア」の人たちは議論されませんでした。

非正規雇用だった女性
 「(給付金の対象から)外されたんだというか、存在していない人というか、困ってないと思われてる」

 年収100万から300万円の人はおよそ1500万人います。ただ、行政がこうした人たちを困窮者と位置づけていないことが給付の対象外になった理由だと専門家は指摘します。

NPO法人POSSE 渡辺寛人事務局長
 「日本でこれまで、貧困とか生活困窮者は働けない人、失業している人を想定して、これまで政治家も考えてきたと思う。今回の10万円給付に関して言えば、排除されてしまうような設計になってしまっていると思う」

 政府は給付以外で経済対策に非正規などの人たちに対する職業訓練の支援策を盛り込んでいます。すでに一部の大学などで無料で受けられる「学び直しの講座」が設けられていますが・・・

神田外語キャリアカレッジ 仲栄司校長
 「(国から)対面授業も入れてくださいということで、鹿児島とか長野とか、通えないなという方もいて、断念された方もいらっしゃるので」

 活用できている人は、ごく一部です。55兆円の経済対策。コロナで最も影響を受けた非正規や女性への支援は十分とは言えません。