コロナ禍のイギリスでは、自宅のDIYやリフォームをする人が急増し、工事の依頼が殺到した大工さんたちが大忙しとなりました。この現象は他国でも見られますが、もともとイギリス人は一般的にDIYが大好きなので、コロナ禍はそんなイギリス人の性格に拍車をかけた格好です。ホームセンターの売り上げも大幅に増えましたが、その一方で輸入資材が不足するという深刻な事態が起きています。
ホーム・スイート・ホーム
イギリスでは以前から歴史がある築年数の長い家を購入し、自分の好きなように改修や改装を行うことが一般的です。まるで一生終わることのないライフワークや趣味のように、家の改修や改装を楽しんでいる人が多く、近所を見渡すと大抵いつも誰かが家の工事をしています。中古で購入した自宅の壁をペンキで塗り直して印象を変えることは当たり前で、キッチンやバスルームなどの工事や増築も自分たちで行っているのです。
ただ、理想の状態に近づけるためにはお金だけでなく時間もかかるため、まだ在宅勤務が普及していなかった新型コロナウイルス前には思うようにはいきませんでした。
ところが時間に余裕ができたうえ、外出制限でイギリス人の日課であるパブにも通えなくなったことで、「せめて自宅では快適に過ごしたい」と思う人が増加。「そう来たら家をDIYして楽しもう!」と、自宅内にパブを作ったり小屋でビールを醸造したりする人が次々に現れ、テレビやWebサイトで注目を集めるようになりました。
もちろん大がかりな工事が必要なときは、近所で大工さんを探して仕事を依頼します。しかし、信頼できて相性もよい大工さんを見つけるのは、普段でも簡単なことではありません。特にリフォーム熱が高まっている今日は職人も大忙しで、たとえ依頼できても日程を組むのが大変です。このような理由で、できる範囲でDIYをするイギリス人は少なくないのです。
DIYやリフォームに必要な資材は、ホームセンターで購入できるものも数多くあり、例えば、トイレやバスタブが単体で販売されています。BBCニュースは、ロックダウン(都市封鎖)が始まった2020年5月から同年7月までの期間に、イギリスの大手ホームセンターにおけるペンキや壁紙などの売り上げが、前年同時期に比べて21.6%増加したと報じました。ロックダウンで店舗が一時閉鎖されるなか、オンラインでの購入が増えたことも売り上げ急増を後押しした要因のようです。
ロジスティクスの大混乱も……
しかし、このようなブームに水を差すような出来事が発生。昨年からロジスティクスの混乱状態が続いているのです。イギリスでは、中国からの輸入資材は、新型コロナウイルスのパンデミック前から3か月待ちが当たり前でしたが、現在は半年以上待つこともあるようで、リフォーム資材の調達に時間がかかっています。しかも、イギリスのブレグジット(EU離脱)の影響で、EU圏内の他国から来ていたドライバーが減り、一時はガソリンの供給も追いつかないなど国内配送も滞りました。このような状況は、家の改修・改装スケジュールにも大きな影響を及ぼしています。
しかし、そんな中でも気長に待つことに慣れているのがイギリス人。「家のリフォームはスケジュール通りに進まないものだ」と諦め、リフォーム後の生活を思い浮かべながら、状況が改善するのを気長に待っている様子です。手間と時間をかければかけるほど、良い家になるのでしょう。
執筆者/ukihaddy