※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!
つい先日、ユネスコの世界遺産委員会によって西表島(正確には西表島、石垣島、沖縄本島北部、奄美大島、徳之島の森林など)が世界自然遺産に登録されました。
これらの地域には世界的に見ても希少な動植物が生息していることが登録の一因となっているわけですが、中でも西表に棲む巨大な蛾「ヨナグニサン」のインパクトは絶大です。
ヨナグニサンは『あつまれ どうぶつの森(※以下『あつ森』)』にも登場しますが、その迫力はゲーム画面においても健在。
木にくっついてるとホントにびっくりしますからね。
それもそのはず。後ほど詳しく説明しますが、なにせヨナグニサンは世界最大級の蛾なのですから!
ヨナグニサンは国内では西表島以外にも石垣島や与那国島にも分布しています(国外では
むしろ、その「与那国蚕」という名にもあるように与那国島で特に多く見られます。
ちなみに本種は、英名はギリシャ神話の巨神を冠した「アトラスモス」。その名の通り圧倒的な巨体を誇ります。
僕も子どもの頃に昆虫館ではじめて実物を見た時にはあまりの大きさに愕然としたものです。
大人になった今でも、翅を綺麗に広げられた標本を見るたびに「マジかよ……。」と口がポカンと開いてしまいます。
翅を広げた際の幅は25センチにも達するとされ、「世界最大級の蛾」として国内外に広く知られています。
世界最大“級”としているのは、他にも王座を競る巨大蛾が存在しているためで、オセアニアのヘラクレスモス(ヘラクレスサン)や東南アジアのカエサルサン、南米のナンベイオオヤガなどが対抗馬となっています。
なんでも「翅を広げた際の幅で決めるべき」「翅の総面積で決するべき」など判定方法によっても結果が変わるとかで議論がつきないようです。
まあ、いずれにせよ世界でトップを争えるほどの巨大昆虫が日本にも生息しているという事実はなんとなく誇らしいものです。
また、『あつ森』内でフータさんも触れていますが、ヨナグニサンの成虫にはなんと口がありません。
「えっ!それじゃあ餌が食べられないじゃない!」と思うでしょう?そうです。彼らは成虫になると餌を食べないんです。
空を飛んだり卵を産んだりという活動に必要なエネルギーは幼虫の時に木の葉っぱを食べて蓄えたものを切り崩して使っているのです。
ゆえに彼らは成虫となってからは短命で、ただ配偶相手を探して繁殖活動を終えると静かに土へ還っていきます。
大きさやビジュアルだけでなく生き様まで一風変わったヨナグニサンですが、現実世界で温暖な地域に生息していることを反映してか、『あつ森』でも九月いっぱいでいったん出現期間が終わります。まだ未採集の方は採り逃しなく!
■著者紹介:平坂寛
Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。