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洪水は壊滅的な被害をもたらす。コミュニティをバラバラにし、近隣の人たちを離散させ、毎年何千人もが避難を余儀なくされ、復旧に何年もかかることがある。米国政府は、ここ数十年の洪水により1600億ドル(約17兆6000億円)相当の被害があり数百人が亡くなったと推計している。

地上のセンサーや上空の衛星を活用して、世界中で水がどこにあり、どこへ流れていくのかを示すリアルタイムのモデルがあるはずだと考える人もいるだろう。しかしほとんどない。代わりに、ビッグデータやビッグコンピューティングの可能性を考慮しない旧態依然としたモデルに頼っている。

オーストラリアのブリスベンを拠点とするスタートアップのFloodMappは、水文学(すいもんがく)や予測分析の古いアプローチをやめ、もっとモダンなアプローチで緊急対応責任者や市民に洪水がいつ発生するのか、何をすべきかを知らせたいと考えている。

共同創業者でCEOのJuliette Murphy(ジュリエット・マーフィー)氏は、水資源工学の分野に長年関わり、水が引き起こす大変な破壊の状況を直接見てきた。2011年に同氏は大規模な洪水の際に友人の自宅が水没するのを目撃した。「水が屋根を越えました」と同氏はいう。その2年後にカナダのカルガリーで、同氏は再び同じ状況を目にした。洪水と恐怖の中で、友人は避難するかどうか、どう避難するかを決めようとしていた。

こうした記憶と自身のキャリアから、マーフィー氏は災害担当責任者向けの良いツールを作るにはどうすればいいかを考えるようになった。2018年、同氏は共同創業者でCTOのRyan Prosser(ライアン・プロッサー)氏とともにFloodMappを創業し、130万オーストラリアドル(約1億300万円)とマッチング・グラント(同額補助金)を調達した。

FloodMappの前提はシンプルだ。現在、リアルタイムの洪水モデルを構築するツールはあるが、我々はそれを活用しないことを選んできた。水は重力に従って流れる。つまり、ある場所の地形がわかれば、水がどこへ流れるかを予測できる。難題は、2階微分方程式を高解像度で処理する費用がかさむことだった。

マーフィー氏とプロッサー氏は、何十年にもわたって水文学で一般的に用いられてきた従来の物理学的アプローチを避け、機械学習で幅広く利用される手法を活用して適切に計算し、完全にデータに基づくアプローチをとることにした。マーフィー氏は「これまでボトムアップだったことを、トップダウンでやっています。我々はスピードの壁をまさに打ち破りました」と語る。これが、同社のリアルタイム洪水モデルであるDASHの開発につながった。

ブリスベンの川の氾濫に関するFloodMappのモデリング(画像クレジット:FloodMapp)

ただし典型的なテック系スタートアップとは異なり、FloodMappは独立したプラットフォームになろうとはしていない。そうではなく、他のデータストリームと組み合わせることのできるデータレイヤーを提供してESRIのArcGISといった既存の地理情報システム(GIS)と相互運用し、緊急対応や復旧の担当者に状況を知らせる。顧客はFloodMappのデータレイヤーを利用するためにサブスクリプション費用を支払う。FloodMappはこれまでにオーストラリアのクイーンズランド消防救急サービスや、バージニア州のノーフォーク市およびバージニアビーチ市と連携している。

しかしFloodMappがゆくゆく注目して欲しいと考えているのは緊急サービスだけではない。電話や電力から銀行、実店舗のある小売チェーンなど物理的な資産を持つあらゆる企業がこのプロダクトの顧客になる可能性を秘めている。実は、FloodMappはSEC(米国証券取引委員会)が気候変動に関する財務情報の開示を義務づけることに注目しており、そうなれば新規の取引が大幅に増えるかもしれない。

FloodMappのチームは2人の創業者にエンジニアリングやセールスの人材が加わって拡大した(画像クレジット:FloodMapp)

マーフィー氏は「我々はまだ初期段階です」とし、同社は2021年の水害シーズンを乗り切り新規顧客をいくつか獲得して、2022年の早い段階でさらに資金を調達する見込みだと述べた。同氏は、FloodMappが最終的に「人々を助けるだけでなく、気候変動に直面するオーストラリアが変化しこれに対応するための助けとなる」ことを望んでいる。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:FloodMappオーストラリア自然災害気候変動

画像クレジット:Joe Raedle / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Kaori Koyama)