オーストラリアでは、毎年のように大規模な森林火災が発生しています。
最近でも10月と11月の異常気象の影響により、オーストラリア南部のサバナ地帯で12万km2に及ぶ火災が発生しました。
では、このような大規模火災の発生を制御する方法はあるのでしょうか?
オーストラリア・火災監視の専門家であるロハン・フィッシャー氏は、「火災は水のある場所で起こる」と述べ、オーストラリア森林火災を制御する方法を解説しています。
目次
- 火災は水のある場所で発生する
- 「燃やして」火災をコントロールする
火災は水のある場所で発生する
フィッシャー氏の語る「火災が水のある場所で起きる」とは、一体何を意味しているのでしょうか?
「消火」といえば「水」を連想する人が多いように、普通に考えれば、火災は水のない場所でこそ起きるはずです。
しかし、森林火災の燃料がどこで作られるか考えると、この理由も納得できるでしょう。
オーストラリアの荒野は、基本的になにもない砂漠です。それはすなわち燃えるものもないのです。
水のある場所でだけ植物が育ち、それが乾燥して大規模火災の燃料となるのです。
この傾向はオーストラリアの乾燥地帯を空から見るとよくわかります。
これはオーストラリア西部のピルバラ地域を写した衛星画像です。
この画像を見ると、乾燥地帯で発生した火災の焦げ跡が、小川や排水路に沿って広がっている様子がよくわかります。
さらに乾燥地帯に多くの雨が降ることで、燃料である植物が増え、大規模火災につながることもあります。
例えば2011年には、数カ月間でオーストラリア中央部の40万km2以上が焼失しました。
日本の国土面積が約38万km2であることを考えると、この火災がどれほど深刻なものか理解できますね。
そしてこの大規模火災は、2010~2012年にかけて生じたラニーニャ現象による降水量の増加と重なっているのです。
現代では、異常気象の影響でますます火災が発生しやすくなっています。
では、これらの火災問題を解決する方法はあるのでしょうか?
フィッシャー氏は、「オーストラリア先住民の知恵で火災をコントロールできる」と述べます。
「燃やして」火災をコントロールする
自然発火が大規模火災につながるのは、植物という燃料が均一に広がっているからです。
つまり極論を言うと、植物がなければ大規模火災もなくなるのです。
とはいえ、オーストラリアからすべての植物をなくすような対処法は本末転倒だと言えるでしょう。
ここで、オーストラリア先住民の知恵が役立ちます。
彼らは何千年もの間、オーストラリアの土地を「モザイク状」に燃やしてきました。
すべての植物を燃やしてなくすのではなく、各地で「小規模な火事」を少しずつ発生させていくのです。
当然、燃やされた土地では、新しい植物が最初から育つことになります。
その結果、植物の種類や年齢が土地によって細かく分かれ、オーストラリアの広大な土地の植生が「モザイク状」になりました。
すべての植物がなくなるわけではないので、環境や生態系はある程度保たれます。
またどこかで火災が発生しても、モザイクの薄い部分で火の勢いが弱まるため対処しやすいのです。
実際、1953年の航空写真には、伝統的な土地管理のおかげで火災がモザイク状になって抑えられている様子が写されました。
しかし現代ではこれらの伝統や習慣が衰退しています。
そのため現在の火災規模は、オーストラリア先住民が管理していた時の何倍も大きなものとなっているのです。
フィッシャー氏によると、「広大な乾燥地帯では、以前のような管理が必要」とのこと。
もちろん、植生のモザイクを復活させるには、「正しい技術」や「管理者」を集めたり、「法律の問題」を解決したりしなければいけません。
現在、フィッシャー氏は既にこの課題に取り組んでおり、「燃やして」火災を制御する正しい方法を学んでいます。
参考文献
We are professional fire watchers, and we’re astounded by the scale of fires in remote Australia right now
https://theconversation.com/we-are-professional-fire-watchers-and-were-astounded-by-the-scale-of-fires-in-remote-australia-right-now-172773