自民党総裁選は29日の投開票日を見据え、4陣営が熾烈(しれつ)な票の争奪戦を展開している。産経新聞の調べでは、国会議員票の支持動向は岸田文雄前政調会長、河野太郎ワクチン担当相、高市早苗前総務相に三分。これを野田聖子幹事長代行が追い、未定は約3割となっている。党員・党友票は河野氏が優位とされるが、他候補も支持拡大に躍起となっている。本命なき混戦だけに決選投票も視野に入れた駆け引きが続きそうだ。
竹下亘元復興相の死去に伴い、党所属国会議員票と党員・党友票各382票の計764票を争う。産経新聞の取材では、岸田氏は国会議員票の4分の1近くを固め、河野、高市両氏もそれに迫る勢い。野田氏は推薦人20人から大きな上積みができていない。
岸田氏は自身が率いる岸田派(宏池会、46人)を固め、細田派(清和政策研究会、96人)や麻生派(志公会、53人)、旧竹下派(平成研究会、51人)という主要派閥のベテランに浸透。17日の出陣式には代理を含めて107人が出席した。態度未定の中では来年の参院選を見据え、安定感を重視する参院議員の間に岸田氏を支持する動きがある。
河野氏は、菅義偉(すが・よしひで)首相ら現政権の中枢幹部に加え、「選挙の顔」や世代交代を求める中堅・若手が支持する。17日にオンラインで行われた出陣式には代理を含め約80人が出席した。知名度の高い石破茂元幹事長、小泉進次郎環境相らの支援も受け、世論を背景に議員心理に訴える戦略だ。
保守層の期待が高い高市氏は細田派衆院議員の7割超から支持を得る。同派出身の安倍晋三前首相が支持する影響が大きく、19日には稲田朋美元防衛相がツイッターで高市氏支持を表明した。17日の出陣式には代理を含め93人が出席した。陣営幹部は「世論調査で支持も上がっている。議員票は100を超える」と語った。野田氏は現時点で支持が広がっていない。
共同通信が17、18両日に行った党員・党友に対する支持動向調査では河野氏が48・6%と最多で、総裁選の仕組みに沿って換算すると、党員・党友票のうち河野氏は210票を超えた。今のところ河野氏が優位とされるが、岸田、高市両氏陣営も手応えを感じており、情勢は流動的だ。
4候補の出馬により、1回目の投票で過半数を得る候補がおらず、上位2人による決選投票に進むとの見方が強い。その場合、国会議員票の比重が高まるだけに、各派閥の合従連衡が想定される。(沢田大典)