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ビスにその座を追われてしまった感もあるが、古くから木材の接合に活躍してきたクギ。長い歴史の中ではぐくまれたいろいろなクギや、DIYで活躍するクギを目的別にピックアップ。

 

クギのショートストーリー

どのくらい古くからクギが使われてきたかというと、日本では法隆寺金堂の調査で確認されているというので、なんと飛鳥時代のこと。西暦700年ぐらいだとすると、日本のクギには約1300年の歴史があるということになる。それから明治時代のごく初期までは和クギと呼ばれる四角い断面のクギが使われてきた。このクギはクギ鍛冶という専門の鍛冶屋によって鍛造。和クギは現在ではすっかり見る機会もなくなってしまったが、2013年から行なわれた伊勢神宮の式年遷宮では、新潟三条や燕の鍛冶によって特別に作られた和クギが使われた。

明治4~5年になると文明開化、欧風文化の導入による洋館の建築のためにフランスからクギを輸入。これが現在使われているクギが国内に広まるきっかけとなった。その後、クギはヨーロッパ各地、アメリカからも輸入される。クギの需要の広がりから国産品も作られるようになり、1908年北九州の官営八幡製鉄所で原料の線材の本格生産が開始され、現代使われている多種多様なクギの生産につながっているというわけだ。

 

斜めに打って接合力を高くする

クギは真っすぐの引き抜きに対して抵抗なく抜けてしまうが、意識的に少し斜めに打つことで、引き抜きに対する抵抗力を強くすることができる。写真では少し大げさに示しているが、クギ頭が凸凹に並ばない程度に斜めに打つのは非常に効果的。

斜め打ちするクギの方向を変えることで、効果が高くなる

 

使うクギの長さの目安は接合する材の厚みの約3倍

材を打ち留めるクギの長さは、写真のように板厚の約3倍を目安にする。接着剤を併用するなら2.5倍でもいいだろう。この目安はネジ山のあるビスに比べると長く設定されている。これはネジ山がない分保持力が低くなることを長さで補うためだ。厚さ12mmの板なら使うクギは30mmから36mm。厚さ20mmの板なら使うクギは50mmから60mmを目安にすればいい。

材に対するクギの長さは写真のようなイメージになる

 

丸クギのバリエーション

ステンレス丸クギ
丸クギのスタンダードとなる鉄丸クギのステンレスタイプ。JIS規格では16mmから100mmまで12種類の長さが規格化されている。サビに強いステンレス製なので、エクステリアや水分、湿気の強い場所では、積極的にステンレス丸クギを使用したい。

 

真ちゅうクギ
真ちゅうは黄銅のことで、身近では五円玉の素材として使われる。真ちゅうクギは元来下穴をあけた真ちゅう板を木材に打ち留めるために作られたクギ。強度は鉄、ステンレスより劣るが、磨くと金色に輝くので、クラフト作品の組み立てにアクセントとして使われることもある。

 

銅クギ
下穴をあけた銅版を木材などに打ち留めるためのクギだが、錆びにくさや風合いの渋さから民芸品、下駄、草履などの工作にも使われる。また、真ちゅうと同様に一般の木工の接合でもアクセント的に使うと和風の雰囲気を醸し出し、効果的な場合もある。

 

小鋲(こびょう)
軸径が0.9mmという極細のクギ。長さは6mmから25mmの間に6種類が規格化されている。薄い板材の接合に使われ、小型のクラフト作品で活躍する。クギ自体の保持力はあまり強くないので、組み立てには接着剤を併用したい。

指で支えられない場合は、プライヤーなどでつまんで支えて打つと安定して叩ける

 

フロアクギ
木製フローリング材を床下地に固定するために使う専用クギ。写真のように軸は細く頭が小さく、スクリュー加工されているので、一度打ち留めると抜くのは難しい。実際の作業はフローリング材のサネ部分に45度で打ち留め、クギシメで頭を材に沈めて固定する。

フローリング材のサネに斜めに打ち込んでいるところ
材の面まで打ったら、クギシメをあてて打ち、頭を完全に沈める

 

150mm鉄丸クギ
鉄丸クギの規格でもっとも長い150mmの鉄丸クギ。いわゆる五寸クギと呼ばれるもの。藁人形を打つのではなく、梁や棟木、柱など大型の建築構造を接合するのに使われる。鉄丸クギなので、建築構造の内部で使用し、湿気のある外部には使用しない。

 

材を傷つけないでクギを抜く

クギ抜きはなるべくしたくない作業だが、どうしてもクギを抜かなくてはならない場合、材を傷つけないように、写真のようにクギ抜きの下に当て木を置き、材を傷つけないようにして作業する。スペアの材がない場合などは慎重に作業したい。

当て木をしてクギを抜いているところ

 

丸クギの頭を目立たなくするつぶしクギのやり方

クギの頭をできるだけ目立たせずに打つ方法につぶしクギがある。クギの頭をアンビルや万力のたたき台に載せてカナヅチで叩いてつぶしたクギを使う。つぶした頭が材の木目と平行になるように打つと効果的だ。気になるようなら、打ち込んだ痕を木工パテで埋めてしまい、塗装すればクギ打ちの場所を完全に隠すことができる。

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