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【ワシントン=大越匡洋】バイデン米政権が子育て支援や気候変動対策に10年で1.75兆ドル(約200兆円)規模を投じることをめざす歳出・歳入法案の実現が一段と不透明になった。与党・民主党のマンチン上院議員(ウェストバージニア州選出)が19日、反対を表明し、看板政策が成立のメドの立たない状態に陥る恐れが出てきた。

サキ大統領報道官は同日の声明でマンチン氏がこれまでのバイデン大統領との合意を突然翻したのなら「約束を破ったことになる」と批判。「マンチン氏に圧力をかけ続ける」とし「決して諦めない。2022年も前進する方法を見つける」と強調した。

民主党と政権は上院で21年中の可決をめざしてきたが、すでに決着は翌年にずれ込む見通しとなっていた。上院は民主、共和両党が50議席ずつで勢力を二分し、賛否同数なら上院議長を務めるハリス副大統領が投票して民主党はようやく法案を通せる。

野党・共和党は反対のため、与党議員全員が一致して賛成することが法案実現の前提となる。1人が反対するだけで法案の実現は見込めなくなるなか、マンチン氏は19日に米フォックス・ニュースで「できる限りのことをやってきたが、この法案についてはノーだ」と断言した。債務の増加やインフレ加速の恐れなどを理由に挙げた。

マンチン氏は党内中道派で、財政拡大や増税を嫌う保守に近い立場をとる。歳出・歳入法案は党内の急進左派が中心になって推進している。これまでもマンチン氏ら中道派議員は財政拡大に懸念を表明し、当初案から規模を半減させた。マンチン氏の地元は石炭産地のため、気候変動対策の拡充をめざす急進左派と対立を繰り返している。

今回、マンチン氏が明確に反対を表明したことで、さらなる規模削減といった修正で事態を打開できるのかも見通しにくい。実現には一段と時間がかかる可能性が高い。バイデン政権は歳出・歳入法案の実現で低迷する支持率のてこ入れをめざすものの、与党内の内紛で政策運営は停滞しており、22年秋の中間選挙への影響は必至だ。

バイデン大統領はこれまで自らマンチン氏との調整にあたってきた。看板政策の実現が宙に浮けば政権の求心力の低下も避けられない。歳出・歳入法案を推進するサンダース上院議員は19日、CNN番組で「法案を早期に採決し、マンチン氏に地元住民に対してなぜ強大な利権に立ち向かう根性がないのか説明してもらおう」と批判した。