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遠い昔、火星では火山の噴火が起きていましたが、最近のNASAの調査で、そこでは「スーパー噴火」が数千回も起きていたことが明らかになりました。一体これはどのような噴火なのでしょうか?

↑火星の「アラビア大陸」に残されたクレーター(画像提供/NASA・JPL-Caltech・University of Arizona)

 

火星には多くの火山があり、その中には太陽系で最大規模のオリンポス火山があります。ハワイ島にあるマウナロアは地球上で最も大きな火山で、標高4000m以上、基底での直径は100kmほど。それに対して、火星のオリンポス火山は標高25000m、直径は約700kmに及びます。ただし火星には多くの火山がありますが、いずれも10億年以上前に活動をやめた死火山です。

 

NASAのゴダード宇宙飛行センターに所属する地質学者たちが、そんな火星の北部にあるアラビア大陸の地形や鉱物の組成を調べたところ、過去にスーパー噴火が何千回も起きていたことがわかりました。

 

スーパー噴火(英語で「supereruption」)は、日本語では「破局噴火」とも呼ばれています。スーパー噴火は、大気中に大量の塵、二酸化硫黄などの有毒ガスを放出。それらの塵やガスによって太陽光が遮られて寒くなるなど、この規模の噴火はその後の惑星の気候を変化させるほど大きな影響を及ぼします。

 

もともとこの地帯には、クレーターのような窪みがあり、当初この窪みは小惑星が火星に衝突したことで生まれたと考えられていました。しかし2013年の研究で、この窪みは火山によるカルデラ(火山活動でできる円形または楕円形の凹地)である可能性が指摘されたのです。

 

そこで、この地質学者のチームは、火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)が撮影した画像とアラビア大陸の3D地図を使って、火山灰を調査。画像から地表にある鉱物を特定し、そのデータをアラビア大陸の3D地図に重ね合わせていきました。彼らはこうして、およそ40億年前にスーパー噴火が何千回も繰り返し起きていたことを突き止めたのです。

 

このスーパー噴火では、50mプール4億杯分もの量の溶解した岩石とガスが地表に吹き出したそう。火星でのスーパー噴火はアラビア大陸に集中していたようですが、なぜそうなったのかなど、まだ火星の噴火に関する疑問は数多く残されています。

 

【出典】Whelley, P., Matiella Novak, A., Richardson, J., Bleacher, J., Mach, K., & Smith, R. N. (2021). Stratigraphic evidence for early martian explosive volcanism in Arabia Terra. Geophysical Research Letters, 48, e2021GL094109. https://doi.org/10.1029/2021GL094109