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「初めて被告人を見たのは、’07年の秋頃、私が中学2年生のときです。JR南越谷駅のホームにいて、そこから通学の電車内で痴漢されるようになりました。中学のときはほぼ毎日痴漢されていました」

11月24日、さいたま地裁で被害者の女性が証人尋問でそう証言すると、法廷は水を打ったように静まり返った。

「被告人」とは、6月25日に逮捕された橋本憲介被告(41)のこと。橋本被告は20代の女性に対して痴漢やストーカー行為を行った疑いで逮捕され、いまその裁判がひっそりと行われている。その法廷で、同じ女性に14年間にわたって痴漢やつきまとい行為をしていたという凄絶な事実が明らかになった。

「中学のときはほぼ毎日です。高校に入ってからは週に3〜4回ほどだったと思います。基本的には衣服の上から陰部を触られるということが多かったです。一番被害が酷(ひど)かった中学生の頃はスカートや下着の中に手を入れられることもありました」(被害女性)

女性が大学に通っている間は年に数回程度にまで減ったというが、社会人になると再び執拗(しつよう)につきまとわれるようになった。電車内での痴漢以外に、駅で待ち伏せされる、スマートフォンで盗撮されるなど、さまざまな被害を受けた。

橋本被告は埼玉県内の団地で育ち、地元の中学に進んだ。周囲の人は彼を「大人しい」「記憶に残らない」と口を揃(そろ)える。

「大人しくて、親御さんの言うことをなんでも『はい』と聞くような子でしたね。ちょっと変わった子という印象で、中学のときは吹奏楽部に出入りしていたのですが、部員ではなかったようなんです。『僕は演奏とかはしなくていい』と言って、もっぱら楽器や機材を運ぶ手伝いばかりしていた。同級生の間では『なんのために来ているんだろう』と不思議がられていました」(同級生の保護者)

高校からは栃木県にある中高一貫校に進学。逮捕されるまでは埼玉県内のリフォーム会社で働いていたという。

被害女性は14年間に及ぶつきまといに「我慢の限界だった」という。今年5月頃からつきまといの頻度が増え、行為もエスカレートしていた。そこで今年6月、意を決して橋本被告を捕まえ、警察に突き出したのだ。

橋本被告は警察の取り調べに対し「(女性と)仲良くなりたかった」と語ったという。次回期日である12月17日には、橋本被告の被告人質問が行われる。「ストーカー男」は何を語るのか。

『FRIDAY』2021年12月24日号より