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 「路線を維持するのがやっと」「地域の意向は無視できない」。総務省が、遮断機と警報機がない第4種踏切の対策を国土交通省に求める背景には、地方の鉄道事業者が抱えるこんな事情が垣間見える。危険な踏切の削減に向け、事業者の支援が急がれる。(児玉森生、木村雄二)

 秋田県仙北市の田畑が広がる小山田地区。集落から農地へとつながる里道上に、秋田内陸縦貫鉄道の「鎌足踏切」がある。車1台がやっと通れるほどの幅で、警報機と遮断機はない。

 ここで2019年6月、男性(当時80歳)が乗った田植え機と列車が衝突し、男性が死亡した。農地へ向かう途中で、列車に気付かなかったとみられる。

 踏切付近は緩いカーブで、約300メートル先にある森の陰から列車が現れる。近くに住む60歳代の女性は「農地へ行く人が通る場所で、気をつけている。お年寄りが多く、せめて警報機だけでも付けてほしい」と話す。

 男性の妻(78)も「列車の接近を知らせる設備があれば、夫も渡ろうとはしなかったのでは」と語る。