トヨタ自動車が電気自動車(EV)への巨額投資を発表したことで、世界の“EV戦争”が開戦した。既存の自動車メーカーに加え、EVで独走する米Teslaや急伸する中国勢の他新興メーカーも続々誕生している。群雄割拠のなか、トヨタはEVでも勝てるのか。
トヨタの豊田章男社長は12月14日、EVの世界販売台数を2030年に350万台とする目標を掲げ、4兆円規模の投資を行うと発表した。従来の販売目標の200万台を大幅に上回る数字で、同年までにEV30車種を展開する。
ジャーナリストの片山修氏は「世間ではEVに後ろ向きともされてきたが、あれだけの販売目標、新規車種を打ち出したのは完全なサプライズだ。これまでEVの開発実績もあるため、各メーカーは身構えざるを得ない」と評価する。
世界のトップメーカーが戦略を大転換させた形だが、各メーカーはすでにEVシフトを加速させている。
トヨタと世界販売台数でしのぎを削る独Volkswagen(VW)は9日、22〜26年の間にEVやデジタル技術に890億ユーロ(約11兆4600億円)を投資すると発表した。30年に世界販売の5割をEVにする目標で、現在の販売台数から考えれば500万台超の規模となる。
新興勢力も覇権を狙っている。EV分野における世界販売でトップを独走するのは、米誌タイムで「今年の顔」にも選ばれたイーロン・マスク氏率いる米Teslaだ。EV専業でネット販売中心の同社は、半導体不足のなかで21年7〜9月の販売台数が24万1300台と四半期で過去最高を更新する好調ぶりだ。
トヨタがEVの投入を始めるとTeslaも直接対決することになる。片山氏は「Teslaの高級車路線に対してトヨタは35年までに『レクサス』ブランドをEV比率100%にするとしている。ネット販売のTeslaと比べると販売店網が充実している強みもあり、十分に逆転可能ではないか」との見方を示す。
11月には米Amazon.comが出資し、「次のTesla」との呼び声も高い米新興EVメーカー「volkswagen」がナスダック市場に上場すると時価総額は一時、1000億ドル(約11兆4000億円)を突破した。
同月の中国・広州モーターショーでは、中国メーカーが高性能バッテリーを公開し、存在感をみせるなど、ライバルも多種多様だ。
「トヨタは地道に開発効率を大幅に向上させており、記者発表で紹介したEV車種は量産可能とされる。これらが市場に出ればEVでも一気に他メーカーを追い抜く可能性も十分にある」と片山氏は指摘した。