現職、新人の計8人が立候補している横浜市長選(22日投開票)で、得票が足りずに当選者が決まらず、再選挙となる可能性が取りざたされている。市長の任期は29日までで、再選挙の場合、最長で10月末までトップ不在となる。副市長が職務代理者を務めるものの、感染拡大が続く新型コロナウイルス対策の指揮や国への予算要望など課題は山積しており、市政の停滞を危惧する声も上がっている。
市長選には現職のほか、知事や国会議員経験者ら過去最多の8人が立候補。高い知名度や実績がある候補者が多いことから支持が分散し、誰も法定得票(有効投票総数の4分の1以上)に届かない可能性が指摘されている。再選挙となった場合、14日間の異議申し出期間を経て50日以内に実施することになっており、次期市長の誕生が10月末までずれこむ可能性もある。
市長の不在に備えて、市はあらかじめ副市長4人の職務代理順位を定めている。
市によると、職務代行者は市長の「長としての身分・資格」が要件とされる市議会の解散や副市長の任免など一部を除き、すべての職務権限を行使できる。
しかし、コロナ患者激増で市内の各区役所が担う健康観察などの業務は増大の一途をたどっており、市は不急の業務を休止して職員をコロナ対策に充てるなど、全庁的な対応をとっている。さらに行政サービスを制限する長期的な感染対策を打ち出すには、民意で選ばれた市長が不可欠だ。
また、市は毎年11月に国に次年度の予算要望を行っており、重要な要望は市長をトップとする経営会議で決められる。大まかな内容は10月中に固め、予算化に向けて市長自ら各府省の政務三役と折衝するのが通例だ。ある市幹部は「市長がいなければ、かなりの影響が出ることは避けられない」と話す。
候補者の多くが反対しているIR(カジノを含む統合型リゾート)の誘致。仮に、再選挙後も誘致を進める場合でも、事業者決定が大幅に遅れてスケジュールに影響する可能性がある。職務代理者による決定も法的には可能だが、複数の市幹部は「選挙で争点となっている問題を副市長が判断することはできない」と話す。
市の事務方は現在、決定した事業者と共同で区域整備計画を策定し、来年1月の市議会の議決を経て国に申請したい考えだが、「事業者決定が遅れれば、日程は非常に厳しくなる」としている。