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激突!衆院選2021・経済対策【選挙の争点・ポイント解説(2)】

「酒をだせなきゃ、おでん屋はやっていけねえんだ」――東京に緊急事態宣言が出る前の日の夜、新橋のおでん屋の親父はそう言って、おでん鍋の湯気の中で涙をぬぐいました。

新型コロナの新規感染者数は各地で減少傾向が続いていますが、2年近く続いたコロナ禍で飲食業、旅行業、観光業を始めとして、世界第3位の経済大国の我が国の経済は大きく傷ついています。

今月31日に迫った衆院議員選挙。経済対策の争点を整理します。

■最大関心は“経済政策”与野党ともに「分配」を訴えるも・・・■

直近の世論調査(共同通信16、17日)では「何を重視して投票するか」との問いに、34.7%が「経済政策」をあげて、関心の高さを浮き彫りにしています。ちなみに、2位は「新型コロナ対策」19.4%、いつもは1位常連の「年金、医療、介護」16.5%の2倍で、痛手の深さを表しています。

岸田総理は、10月11日の代表質問への答弁で、「『成長か分配か』ではなく、『成長も分配も』が基本スタンスだ。成長なくして分配ができるとは思わない。まずは成長を目指すことが極めて重要で、それが民主党政権の失敗から学んだことだ」と声を張り上げて野党をあおりました。そして、「成長も分配も実現するために、あらゆる政策を総動員する。『新しい資本主義実現会議』を創設し、議論を進める」「今後とも大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の推進に努めていく」と強調しています。

自民党は、「数十兆円規模の経済対策」で、現金給付も視野に、コロナ禍で傷ついた個人や事業者への手厚い支援を約束しています。与党パートナーの公明党は0~18歳に一律10万円を給付すると打ち出しています。
一方、立憲民主党の枝野代表は代表質問で「安倍、菅政権の経済政策は株価こそ上げたが、個人消費は冷え込んだまま。期待された効果は生じていない。『新しい資本主義』もアベノミクスとどう違うのか」「『成長と分配の好循環』というのは一般論にすぎない。適正な分配が機能せず、成長を阻害している。好循環の出発点は適正な分配にあると言える」と強調しています。具体的な政策では、立憲民主党は年収1千万円までの個人を対象に、所得税を一時的に実質免許するとしています。消費税の時限的な引き下げも主張しています。

立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組、4野党共通政策では「所得、法人、資産の税制、および社会保険料負担を見直し、消費税減税を行い、富裕層の負担を強化するなど公平な税制を実現し、また低所得層や中間層への分配を強化する」と盛り込んでいます。

いずれも、コロナ禍の有権者の悲鳴を背に「分配」に積極的に取り組んでいるのが、今回の選挙戦の特徴です。国全体で稼いだ富を、中間層や低所得者層に配るべきだとのことです。

■分配?バラマキ?経済政策の争点■

ただ、かつて池田首相が掲げた「国民所得倍増論」が実現したのは、「昭和の高度経済成長」時代のことです。分配する「財源」はどこから持ってくるのか。「バラマキ」にならないのか。そこが、今回の経済政策の争点です。ちなみに欧米では「成長」にむけてデジタルや脱炭素の分野に予算を集中する計画を打ち出しています。

(TBS報道局政治担当解説委員 石塚博久)