NHKの大河ドラマ『青天を衝(つ)け』のVFX映像の制作過程や裏話、現場の様子などをご紹介する本企画。3回目となる今回は第1回の放送で登場する「追鳥狩り」(おいとりがり)の場面で、飛ぶキジを七郎麻呂が矢で撃ち落とすシーンについて解説したいと思います。
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TEXT_『青天を衝け』VFXチーム(NHK)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
[青天を衝け] VFX編 | 激動の幕末をダイナミックに描く舞台裏 | 青天を衝けの世界 | NHK
© NHK
ミッション<3>「キジと命中する矢をVFXでつくる!」
前回は「追鳥狩り」での人増やしについてご紹介しましたが、今回は同じ「追鳥狩り」の場面に出てくる、飛んでいる「キジ」や七郎麻呂が放つ「矢」についてどうVFX技術を使ったのかをご紹介します。
▲VFX処理した映像
▲キジCGレンダリング
実際にキジを矢で撃つわけにはいきません。そこでCGでキジをつくっています。
▲Mayaのポリゴン画面
キジのCGモデルを今後、頻繁に使用する予定はないので、このシーンだけの使用と考え、ドアップにならない想定のクオリティでモデルを制作しました。羽毛についてもYetiなどで毛を生やすのではなく、板ポリゴンとテクスチャで対応しています。
▲リグセットアップ
▲キジのアニメーション
▲CGレイアウトムービー
前回解説した、フォトグラメトリで立体化したロケ場所のCGモデルを参考にカメラトラッキングを行ない、実写カメラに合わせたレイアウトシーンをつくりました。
▲CGアニメーションムービー
そのシーン内でキジのアニメーションを付け、Alembicでキャッシュ出力をします。レンダリング時にはレンダリングシーンにAlembicキャッシュを読み込み、リグのない状態で軽いシーンとしてライティング、レンダリングを行ないました。
▲矢が命中するキジ
次にそのキジを撃つ「矢」です。七郎麻呂は馬上から矢を撃ちます。キジはもちろん、命中する矢もCGです。
▲撮影風景
今回は七郎麻呂が弓を引くカットの矢もCGにしました。「キジに命中するカットではないし、実際の矢で撮影をすればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、実はこの動画からもわかるように、撮影現場ではカメラマンが七郎麻呂の正面にいます。ドラマ撮影ではよく演者とカメラの間にアクリル板を置き、もし本物の矢がカメラ方向に飛んできても安全になるように対応しています。しかし、このカットは、馬上の七郎麻呂をクレーンで回り込みながら見せるため、アクリル板をカメラ前に置くことができませんでした。そこで安全のため、このカットの矢もCGにしました。七郎麻呂は矢がない弓を引き、そこに存在しない矢を放ちます。
▲矢の手付けアニメーション
クレーンカメラの回り込み映像にはトラッキングポイントがなく、また、弓矢を引く動きも入るため、CGの矢の動きはすべてアニメーターの手作業です。こうして矢をCGにすることにより、カメラマンの安全も保たれました。
▲ブレイクダウン
「追鳥狩り」シーンでの飛ぶキジを矢で撃ち落とす映像はこうやってつくりました。今後もNHKの大河ドラマ『青天を衝け』でのVFX技術をたくさん紹介していきますので、ぜひ放送をご覧ください。(『青天を衝け』VFXチーム)
info
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大河ドラマ『青天を衝け』
【放送情報】
NHK 総合 毎週(日)夜 8:00~/[再放送]毎週(土)午後 1:05~
NHK BSプレミアム 毎週(日)午後 6:00~
NHK BS4K 毎週(日)午後 6:00~
公式HP www.nhk.or.jp/seiten© NHK