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自民党調査で激戦区が50以上

 自民が衆院選に向けた候補者調整を終え、2次公認を発表した同月15日。首相は党本部で甘利明幹事長、遠藤利明選対委員長と向き合いながら、こうこぼした。

 今回、首相らが候補者調整の基礎資料として使ったのが、党が今年3回行った全選挙区を対象とした情勢調査の資料だ。首相が特に落胆したのは、新政権の誕生後となる10月7~10日に行った最新調査の結果だった。菅前首相の退陣と、総裁選で政策論争をやり抜いた効果は出ていたものの、立憲と共産が進めた候補一本化の影響で相殺され、与野党候補の支持率の差が数ポイントしかない激戦区が50カ所以上にのぼっていた。

 今回、立憲と共産、社民、れいわ新撰組の4野党は市民グループ「市民連合」を介在役に政策協定を結んだうえで、選挙区で緊密な候補一本化の調整を行なった。その結果、全289選挙区のうち約210で、共産が候補を降ろすなどして候補を一本化。政策協定に加わらなかった国民民主党も、4野党と実質的なすみわけを行うケースが増えた。

 2017年の前回衆院選では、野党勢力が小池百合子都知事の率いた「希望の党」と枝野幸男代表が創設した立憲に分裂して争い合い、野党が候補を一本化できた選挙区は全体の2割程度にとどまっていた。それが今回は、一気に7割強まで比率が増えたのだ。

 一般に共産は、各選挙区で支持層として2~3万票を有しているとされ、一本化に成功した野党候補は純粋に票が上積みできる。

 自民は安倍晋三政権などの下で行った過去3回の衆院選で圧勝したが、足元をみると1~3万票程度の僅差で勝ち抜けた地盤の弱い議員が多い。一本化の影響で当選が危うい状況に陥った議員は、若手だけでなく閣僚経験者などのベテラン勢にも少なくない。

 立憲・共産は、公示直前まで激戦区の分析を続け、10月上旬にも、25選挙区で共産候補を撤回するなど候補を一本化。結果的に、共産は今回、選挙区の候補者を前回(206人)から半減して105人まで絞り、選挙区での野党共闘を進めた。