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米国エネルギー省(DOE)が発表した太陽エネルギーの未来に関する報告書には、今後30年間における明るい未来像が描かれており、30年後には国のエネルギーの半分近くが太陽でまかなわれるようになるという。ただしそれを実現するためには、太陽光発電の性能向上、エネルギー貯蔵量の増加、ソフトコストの低減、そして約100万人規模の労働力の確保という4つの分野における大きなハードルを乗り越えなければならない。

この野心的な目標を達成するためには何が必要なのか、同報告書による考えをご紹介したいと思う。

太陽光発電の向上

DOEが期待するような導入量を達成するためには、太陽電池自体のコストと効率性の両方を改善していく必要がある。2020年には過去最高の15ギガワット分の太陽電池が設置されているが、2025年までにその2倍、2030年までにはさらに2倍の設置量が必要となる。

もし太陽光発電の効率が上がらなければ、すでに野心的な数字をさらに上げる必要がある。また、現在の価格のままではコストが高すぎてその数量を達成することは不可能である。

太陽光発電は確実に進歩を遂げてきたものの、まだまだ今後の進展が必要だ(画像クレジット:米国エネルギー省)

幸いにもすでに効率は向上しているし、コストも下がっている。しかしこれは当然、ただ自然に起きたことではない。世界中の企業や研究者たちが新しい製造プロセスや新素材などの改良に何百万ドル(何億円)も費やしてきたのである。それぞれが少しずつ進化を遂げ、時間をかけて実績が積み上げられてきた。このような太陽電池に関する基礎研究や科学および手法は、これからも過去20年間と同様のペースで、あるいはそれ以上のスピードで進歩し続けなければならないのだ。

DOEは、より特殊なPVをより安価にしたり、バンドギャップによる損失を最小限に抑えるためにセルを積層したりするなどの研究が重要であると指摘している。また、柔軟性のあるタイル状や板状の基板や、作物や建物の内部に光を通す半透明の設備も考えられるだろう。こういった計画全てを通して、2030年までに全体のコストを現在の1ワット平均1.30ドル(約140円)から、0.70ドル(約77円)とほぼ半減させることを目指している。

このレポートでは太陽集光器が取り上げられているが、多くの企業が産業プロセスの代替として太陽集光器を検討し始めている。大規模なグリッドをサポートするために使用されることはないだろうが、多くの化石燃料ベースのプロセスを置き換えることになるだろう。

より多くのエネルギー貯蔵

太陽からエネルギーを得ていると、夜間は何らかの形での蓄電に頼らざるを得ない。当初は原子力や石炭が使われていたが、最近では昼間に集めた余剰電力を蓄えるタイプのものも増えている。ピーク時の電力を自然エネルギーでまかなうことで、都市は安心して炭素系エネルギーからの脱却を図れるようになる。

蓄電というと電池のイメージがある。確かに電池はあるが、蓄えなければならないエネルギーの大きさを考えると、リチウムイオン電池のようなものは主な蓄電手段としては使えない。しかし、余ったエネルギーは水素燃料電池のようにエネルギーを大量に消費する再生可能な燃料の生産に回すことが可能だ。そしてこの燃料が、太陽光が需要を満たせないときに発電するために使用されるというわけだ。

この図では、通常の需要(紫)、太陽光発電による需要(オレンジ)、蓄電による負荷軽減(混合色)を示している(画像クレジット:米国エネルギー省)

これは数ある計画の中のほんの一部である。報告書には「熱的、化学的、機械的な貯蔵技術は、揚水式熱貯蔵、液体空気エネルギー貯蔵、新しい重力ベースの技術、地中の水素貯蔵など、さまざまな段階で開発が進められている」と記されている。

この国が必要とするさまざまなレベルのエネルギーの冗長性と貯蔵期間をもたらすために、新旧のあらゆるテクノロジーが活用されていくことは間違いない。これらのテクノロジーは、太陽光やその他の再生可能エネルギーがより多くの需要に対応できるようにするため、大いに役立っていくことだろう。

ソフトコストの削減

太陽電池の導入率を2倍、3倍にしようとすれば、太陽電池自体のコストだけでなく、アセスメント、会計、労働、そして当然実際の作業を行う企業の利益など、すべてのエンドツーエンドのプロセスにかかるコストを下げなければならない。

ハードウェア以外のコストを下げるというのは、すでに多くのスタートアップ企業の目標となっている。たとえばAurora Solar(オーロラ・ソーラー)はこの兆候を見逃すことなく、ソーラー設備の計画、視覚化、販売をオンラインでできるだけ簡単に行えるようにしている。

おそらく現在のソーラールーフのすべて込みの価格は、ハードウェアコストの2倍以上になるだろう。これには資金調達、規制、市場など、いくつかの要因があり、それぞれに本稿では説明しきれないほどの複雑な事情がある。ただ、これらの分野で時間やコストを効率化することで、太陽光発電の設置費用を1%でも安くすることができれば、その1%を巨額の金額に変えるだけのボリュームが存在すると言えるだろう。PVの改良に多くの科学者の努力が必要であるように、これを実現するためには多くの組織の努力が必要となる。

100万人規模の労働力

そして何より、これらの作業を実際に行う人がいなければどうしようもない。現在アメリカでソーラー産業に従事していると推定される25万人の何倍にもあたる、大量の労働力が必要となる。

画像クレジット:Will Lester/Inland Valley Daily Bulletin/ Getty Images

この分野での仕事は、建設経験のある熟練工から、送電網を管理してきたエネルギーの専門家、政府の必然的なトップダウンの性質と商業を結びつける官民パートナーシップの専門家まで多岐にわたる。50万から100万の雇用が追加されることで、多くの新企業やサブ業界が形成されることは間違いないが、これまでの一般的な内訳は、設置やプロジェクト開発が約65%、販売や製造が約25%、残りがその他さまざまな役割を担っている。

しかし、現在老朽化しつつある石油や石炭のインフラにしがみついているエネルギー関連企業は、何万人もの従業員を適切に対処していく責任があり、再生可能エネルギー分野がそのための完璧な移行スペースであるということは注目に値する事実である。本報告書では「移行期間中、一部の化石燃料企業の財務状況は悪化する可能性がある」と記されているが、これは控えめすぎる表現である。著者らは、トレーニング、転勤のほか、年金などの既存の経済的利益の保証をカバーする移行プログラムに資金を提供することを強く提案している。

太陽電池業界は他のいくつかの業界と同様、圧倒的に白人と男性が多い業界であるということが同報告書で指摘されている。何百万人もの雇用を少しでも公平にするためには、その面においても努力する価値があるのではないだろうか。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)