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8月20日(金)にスタートするWOWOWオリジナルドラマ『グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』に主演する松本穂香さん。ごくありふれたモノまで“BL”に置き換えてしまう熱狂的BL愛好家・児島あかね役を演じた松本さんが妄想を炸裂させる脳内モノローグも見どころです。

 

◆漫画「グラップラー刃牙」でBL妄想をする腐女子を演じていらっしゃいますが、脚本を読んだ時の感想を教えてください。

最初にこの原作をドラマにするんだという驚きがありました。そしてモノローグやせりふの多さに圧倒されましたが、読んだだけでは中身が想像できない脚本だったので「どうなるんだろう」というワクワクはありました。

 

◆確かにものすごいせりふ量でした。

読めば読むほどプレッシャーでした。今までに経験のないせりふ量だったので。とにかくリズムで覚えようと、脚本をずっと読んで読んで読んでって感じでしたね。『グラップラー刃牙』を知らない方は何を言ってるか分からないだろうけど、でもころころシチュエーションが変わるので、漫画の中身を知らなくても楽しめるくらい面白いなと思いました。しかも放送尺が30分なので何も考えずに楽しめる内容になっているんじゃないかと思います。

 

◆『グラップラー刃牙』という漫画はご存じでしたか?

タイトルは聞いたことがありましたが、格闘漫画というジャンル自体に触れたことがなかったので、今回初めて読みました。読んでみて筋肉の描き方がすごいなと思ったのと、激しい描写もありますが、純粋に面白かったです。格闘漫画を読んだことがない私でも楽しめる、読みやすい漫画でした。

 

◆腐女子を演じるにあたり、山岸聖太監督からは要望はありましたか?

特にありませんでした。聖太さんとご一緒するのは3回目くらいなので、多分聖太さんの中で私がこういうふうにしゃべっていたらと想像した上でお声掛けしてくださったと思うんです。なので毎回段取りでは役についてというより、1つひとつのシーンのテンションみたいなものを付けてくださいました。

 

◆松本さんが演じるあかねが腐女子仲間と居酒屋で繰り広げる妄想トークが熱くて笑えますが、実際に演じてみていかがでした?

カラッとした楽しさではなく、ちょっとジメッとした感じのお芝居だったんです(笑)。監督にも「その笑顔じゃなくて、もっとニタニタァとして」「もっと気持ち悪い感じで!」といった、今までに受けたことがない演出をたくさん受けたので、すごく楽しかったです。やればやるほどいいみたいな。

 

◆むしろやりすぎなくらいでもいいと?

盛り上がってるところはそうでしたね。演じる上では熱を上げるみたいな感じで、テンション高くというよりは温度を上げるようにしていました。会社のあかねは腐女子の部分を出さないので、居酒屋の腐女子トークの場面で普段とのギャップが出ているのかなと思いました。

 

◆毎回、教育番組風、囲み取材風など、いろんなバリエーションで『グラップラー刃牙』を脳内プレゼンする場面も見どころになりそうですね。

撮影の時は、私の話を聞いてくださる人たちがだんだんだんだん増えていくのが恐ろしかったです(笑)。現場に行くたびに「え、こんなに聞く人がいるんですか?」と思いました。想像以上の人が私のせりふを聞いているので、「どういう感じでやるんだ?」なんて思いながら見られているんじゃないかという恐ろしさがありました(笑)。囲み取材風の時は記者役の皆さんもすごい熱量で聞いてくださるんです。あかねの妄想なので、いかにも「記者です」という雰囲気でその場にいてくださるのが面白かったです。台本にはないけど、囲み取材では、新婦風っぽく何も付けていない薬指を記者の皆さんに見せました(笑)。この場面もそうでしたが、現場で「これやってみましょうか」とアイデアがどんどん出てくるので、みんなで作ってる感がありました。

 

◆モノローグは演じる前に全て収録されたのでしょうか。

お芝居をする上で必要なモノローグを最初に録って、全部撮り終わってからちゃんとしたモノローグを撮りました。別日に2日くらい、相当時間をかけてモノローグも録りましたね。全部で12時間くらいかかったと思います。

 

◆岡山天音さん演じる竹野と神尾楓珠さん演じる柴本、2人の男性キャラクターについてはどう感じましたか?

竹野と柴本に限らず、出てくる人みんな真っすぐだなと思いました。屈折した人はいないなと。竹野君は「あかねが好き」という気持ちに真っすぐすぎるくらい真っすぐだし。柴本君は神尾さんが演じたことによって、台本で読んだ時よりも良い感じに膨らんだ気がしました。神尾さんがいろんなアドリブを盛り込んだことによって、良い感じのウザさみたいなものが出てるなーと(笑)。台本にはなかったのに神尾さんが去り際にピースをして、そこに岡山さんがぎりぎりって悔しそうに反応する場面もあって。空気を読めない感じがすごく良かったです。神尾さんは私より年下なんですけど、堂々としてすごい方だなと思いました。

 

◆岡山さんの印象はいかがでした?

ご本人はそのつもりはないんでしょうけど、傍から見るとすごくストイックな方だなと思いました。恐らくご本人としては、一番やりやすいことをやっているんだと思うんです。それがすごくカッコよくて。今回のようなコメディでも、1つひとつの場面に集中して、「ここの動きはどうだろう」って真剣に考えて、監督とも話し合って動いていらっしゃるんですね。そのお芝居に対する真摯な姿勢はいつも尊敬しています。

 

◆すごい熱量で好きなものに盛り上がるあかねの気持ちに共感はしましたか?

そういうものがあるって良いですよね。健康的だと思います。発散する場所があって、生きがいになるものがあるって素晴らしいことだなと思いました。私も結構妄想するほうで、多分女性はみんなそういう部分があると思うんです。

 

◆妄想することはありますか?

妄想好きな人の方が多いんじゃないかと思います(笑)。あかねのようにカップリングまではいかなくても「この人が好きで…」みたいな妄想したり…(笑)。

 

◆あかねは会社で「好きなもの」を隠していますが、その気持ちはいかがでしたか?

多分自分の中で大事にしていればしているほど、人に言いたくないことってある気がします。人に言ったらちょっと好きな気持ちが軽くなるような気がするんだと思います。それは好きなものに限らず、大事な気持ちや大事な思い出もそうで。これが「好き」という情報をバラまけばバラまくほど、軽くなってしまう感覚は分かります。

 

◆松本さんご自身が熱くなるほど好きなものがあれば教えてください。

それが最近欲しくて(笑)。時間がある時に映画や舞台、お笑いを見たりするんですけど。中学生くらいのころはドラマ『花より男子』を繰り返し見て、ドラマの中のキャラクターに夢中だったこともあります。それで最近、韓流アーティストのミュージックビデオを見たりもするんですが、「いい歌だなー。ダンス上手だなー」とは思うんですけど、学生だったころの熱量で好きになるものには出会えていないです。“推し”がいたら楽しそうだなとは思います。

 

PROFILE

松本穂香
●まつもと・ほのか…1997年2月5日生まれ。大阪府出身。主な出演作に連続テレビ小説『ひよっこ』、『この世界の片隅に』『竜の道 二つの顔の復讐者』、映画「君が世界のはじまり」「酔うと化け物になる父がつらい」「みをつくし料理帖」など。今後の出演作に映画「ミュジコフィリア」(2021年秋公開)、Netflix映画「桜のような僕の恋人」(2022年配信)がある。

 

番組情報

WOWOWオリジナルドラマ「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」

2021年8月20日(金)後11・00 放送・配信スタート
WOWOWプライム 毎週(金)後11・00【第1話無料放送】
WOWOWオンデマンドにて配信【無料トライアル実施中】
TELASAでは各話終了後配信スタート

 

(STAFF&CAST)
原案:金田淳子「『グラップラー刃牙』はBLではないかと1日30時間300日考えた乙女の記録ッッ」(河出書房新社)
監督:山岸聖太
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
出演:松本穂香
岡山天音、神尾楓珠
岩崎う大(かもめんたる)、島田桃依、穂志もえか

 

(STORY)
文具メーカーでデザイナーとして働く児島あかね(松本)は、会社では誰にも知られていないがBLが趣味。身の周りにあるモノまで“BL”に置き換えてしまうほど熱狂的なBL愛好家である彼女が、国民的格闘漫画「グラップラー刃牙」に出会い、格闘家たちの肉体美や言動にBLの可能性を見いだす。家では漫画を読みながら、主人公・範馬刃牙ら格闘家同士のカップリングを妄想し、居酒屋で腐女子仲間とBLトークを展開する幸せな日々を送っていた。しかし大事なプレゼンを控える後輩・竹野(岡山)と再会した同級生・柴本(神尾)により、あかねの平穏な日々が揺らぎ始める。

●photo/金井尭子 text/佐久間裕子 hair&make/尾曲いずみ styling/道端亜未