<p>木材を通常の23倍硬くする加工方法が誕生、ステンレスのナイフより3倍切れる木製ナイフが作成可能に</p><p>木材を通常の23倍硬くする加工方法が誕生、ステンレスのナイフより3倍切れる木製ナイフが作成可能に</p><p>材料科学関連の査読付き科学誌であるMatterで2021年10月20日に発表された論文の中で、木材を従来の23倍硬くする加工方法が発表されました。この方法で加工された硬化木材を用いてナイフを作れば、ステンレススチール製のナイフよりも3倍切れ味が鋭いナイフが完成します。</p><p>食事に使用するナイフといえばステンレススチールやセラミック製のものがほとんどですが、これはどちらも人工材料であるため、高温の炉で鍛造する必要があり環境に優しいものとは言えません。プラスチック製のナイフも存在しますが、これは切れ味が悪く、そもそも世界的なプラスチック削減の動きもあります。 これらのナイフの代替品となるような「環境にやさしいナイフ」の開発を目指した研究チームが、木材を通常の23倍硬くすることで、頑丈で切れ味が鋭くステンレススチール製ナイフなどの代わりになるナイフを作成しました。 研究論文の筆頭著者は、メリーランド大学の材料科学者であるテン・リー氏。同氏は「研究で発表した木製ナイフは焼き上がりがミディアムのステーキを簡単にカット可能で、通常のディナーテーブルに並べられるナイフと同程度の性能を発揮します」と語っています。 研究チームはナイフだけでなく、従来のステンレススチール製の釘と同じように使用可能な木製の釘を作成することにも成功しています。実験では、木製の釘を使って釘を痛めることなく3枚の板を打ち合わせることに成功しており、「板を貫通する鋭さ」と「打ち合わせても破損しない頑丈さ」を実現していることが実証されています。また、木製の釘の場合は「錆びにくい」という利点も有しています。 一般的な木材加工は何世紀にもわたり行われてきました。家具や建材用に木材を準備する場合、木材を蒸気や圧縮でのみ処理するため、成型後にいくらかの跳ね返りがあるそうです。そのため、天然の木材は使用が面倒という欠点があります。リー氏は、「木材の主成分であるセルロースは、セラミック・金属・ポリマーなどのほとんどの加工材料よりも強度と密度の比率が高いですが、既存の木材の使用方法はその可能性をほとんど発揮できていませんでした」と語っています。 木材は建築材料として頻繁に使用されますが、木材そのものの強度はセルロースに劣るものです。その理由は木材が40~50%のセルロースで構成されており、残りはヘミセルロースと結合剤として機能するリグニンで構成されているため。リー氏ら研究チームは、木材のベースとなっているセルロースを破壊せずに、より弱い成分を除去するように木材を加工する方法を考案することに成功しています。 リー氏らによる硬化木材の加工方法は主に2段階のプロセスに分かれています。まず最初のステップで木材を化学薬品に漬けて100度で熱することで、リグニンを抜きます。木材は硬い材質ですが、リグニンを除去すると柔らかくて柔軟性がありスクイーズ(低反発の粘土)のような材質に変化するとのこと。次に、圧力と熱を加えるためにホットプレスを実行し、木材から水分を除去して緻密化します。 これで硬化木材はほぼ完成ですが、適切な形状に加工したのち、</p>