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東京都新型コロナウイルスの感染急拡大に伴う医療提供体制の逼迫(ひっぱく)に対し、臨時医療施設の設置に向け検討を始めたことが21日、関係者への取材で分かった。

 東京五輪・パラリンピックの競技会場など関連施設の転用案が浮上している。医療向けの利用が想定されていない建物の構造やスタッフの確保など課題も多く、いわゆる「野戦病院」へ転用が可能か慎重に見極める。

都や関連団体が保有・管理する五輪・パラリンピックの競技会場は、東京アクアティクスセンター(江東区)や武蔵野の森総合スポーツプラザ(調布市)など都内の広範囲に点在する。救急医療の面から利便性の高い場所も多く、医療関係者らから臨時医療施設としての使用を求める声がかねて上がっていた。

都は検討を急ぐが、24日に開幕するパラリンピックは9月5日まで行われるため、競技会場や関連施設の転用は早くても同月6日以降となる。関係機関との調整も生じ、開設までに時間を要する可能性もある。

また、それぞれの競技会場はアスリートや観戦者ら向けに建造され、新型コロナの医療施設として使用する場合は、厳密な感染対策と高度の医療設備が必要となる。医師や看護師ら多くの医療スタッフの確保も大きな課題だ。

感染力が強いインド由来の変異株「デルタ株」の広がりで新型コロナの感染拡大は歯止めがかからず、都内の自宅療養者は増加が続く。今月12日には2万人を超え、自宅療養中に症状が急速に悪化して死亡するケースも起きている。

自宅療養者の急増は全国的な課題となっており、田村憲久厚生労働相は20日の記者会見で、「臨時の医療施設の確保を検討してもらわなければならない」と指摘し、各自治体に早急の施設整備を求めた。日本医師会の中川俊男会長も18日の記者会見で、「大規模イベント会場や体育館などを臨時の医療施設として確保することを(各自治体に)提案する」と述べた。

都関係者は「医療提供体制の逼迫に懸念の声が集まる中で、病床の確保は喫緊の問題となっている。あらゆる可能性を探りたい」と話している。