2021年、アメリカでは移動体通信事業者(MNO)向けに「Cバンド」と呼ばれる3.7GHz帯の割当が行われました。
「面的展開と高速通信を両立できる5G向け中周波数」を所有していなかった同国のMNOであるAT&TとVerizonなどは、現在この周波数の整備を満を持して推し進めている最中です。
しかしこの周波数の展開に、連邦航空局(FAA)が待ったをかけたようです。
新しい5G周波数の展開は2022年1月まで延期
AT&TとVerizonは、新たに割り当てられたCバンド(3.7GHz~3.98GHz)の展開を一時停止することに合意しました。
この5G周波数の展開は2022年1月5日まで延期し、FAAと協力して干渉への懸念に対処する予定としています。
CNETによると「”悪天候時に航空機の着陸を支援する自動操縦システム”に悪影響を及ぼす可能性があるとFAAが主張している(意訳)」とのことですが、具体的にどの周波数を指しているのかは不明です。
航空関連で用いられているCバンド付近の電波は、電波高度計(4.2GHz~4.4GHz)やマイクロ波着陸システム(MLS)(5GHz強)などがありますが、「悪天候時に着陸支援を行う自動操縦システム」という文脈から読み取ると、後者を指しているのではないかと考えられます。
しかし電波高度計のほうが今回の5G周波数帯に近い帯域のため、いずれにせよ前者の干渉も考慮する必要があるでしょう。
なお日本では空港周辺などへの基地局設置制限を行い、100MHz幅の周波数離調(ガードバンド)を設けつつ基地局側にフィルタを挿入することで、3.7GHz帯・4.5GHz帯の5Gと電波高度計との共用を実現しています。
MLSについては、帯域自体は確保(保留)されているものの、国内で実際に運用されているかどうかは不明です。
なお航空機の着陸支援には、300MHz帯以下の低い周波数を利用する計器着陸システム(ILS)が主に運用されています。
アメリカの5Gは課題が多い?
アメリカはその他先進国と比較してCバンドのような「高速通信が可能な中周波数帯」を所持しているMNOがT-Mobileといった一部に留まっており、エリアが都心のみと非常に限られる「ミリ波」でしか5Gの高速通信を謳うことが出来ませんでした。
AT&TやVerizonなどはCバンドの電波オークションに数百億ドルの莫大な投資を行い、悲願となる「中周波数帯の確保」を達成したところです。
そのため、各社は何とかしてCバンドの運用を目指すでしょう。
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参考
AT&T and Verizon agree to pause 5G rollout over FAA safety concerns – CNET