つ、つ、つ、ついに出た! お笑いコンビ、ハライチの岩井勇気さんエッセイ第二弾『どうやら僕の日常生活はまちがっている』(岩井勇気・著/新潮社・刊)が、発売されました。
2019年に初のエッセイ本『僕の人生には事件が起きない』(紹介記事はコチラ)が出版され、あっという間に10万部を突破。すっかり先生になった岩井さんですが、出版社や周りの人たちの反応が変わっても、まったくブレず、むしろ強度が増しています。私も購入してすぐに読み始め、電車を乗り過ごすくらい夢中になっていました。新刊では23編のエッセイに加えて、初の小説作品も掲載されています。どの話もニヤニヤできる面白さ! 前作を読んだ方も、読んでいない方も、ハライチ岩井さんを知っている人も、知らない人にも読んで欲しい一冊です。
今作も描かれているのは「日常」
前作に引き続き、今作でも描かれているのは岩井さんの日常生活。ネットで自転車を購入する話や、トイレを詰まらせてしまった話、友達の結婚式を忘れてしまった話、初めてのヨガ教室に行く話など23のエッセイが綴られています。
個人的に一番好きなのは、渋谷でおじいちゃんおばあちゃんに混ざって映画『男はつらいよ おかえり 寅さん』を観た話。仕事の合間にできた3時間、仕方ないから映画でも観るか……と映画情報を調べ始めた岩井さん。ちょうどいい時間にやっているのは全く知らない寅さんだけだった、というところからエッセイは始まります。
『男はつらいよ』は言わずと知れた名作だが、世代的な問題で1作品も観たことがない。しかもそれが50周年記念作品の『おかえり 寅さん』だというのだからついていけるのかが不安だ。「いってらっしゃい」の時に居なかったのに「おかえり」の時に突然居ては、帰ってきた寅さんも「こいつは誰だ?」という話になるだろう。例えるなら、先輩の同窓会に参加するような訳のわからない行動である。
(『どうやら僕の日常生活はまちがっている』より引用)
そんな先輩の同窓会に参加した岩井さんですが、映画の寅さんにどんどん引き込まれていきます。『男はつらいよ』シリーズが大好きな私は、この過程を読んでいるだけでも「そうそう、その感じ!」と感情が昂ってしまったのですが、ラストの一文には、す〜っと一筋の涙が……。エッセイを読んで笑うことは多々ありますが、思わず泣いたのは初めてでした。勝手に、寅さんと岩井さんを重ね「私にとっての寅さんは、岩井さんだ!」なんて思いながら、エッセイを読み終えたのでした。
お母さんとのやりとりも最高
毎週木曜日、TBSラジオで放送されているハライチのラジオ番組『ハライチのターン!』でも語られることの多い、岩井さんのお母さんも『どうやら僕の日常生活はまちがっている』に登場します。
「珪藻土マットをめぐる母との攻防」では、自主回収をしている珪藻土のマットを今すぐに交換したい岩井さんのお母さんと、新しいマットを買ってから交換したい岩井さんとの攻防が、コントのような展開で繰り広げられていきます。お母さんから何度もかかってくる催促の電話を無視していると「卑怯者」とだけメールが届いたり、サッとやれば2〜3分で終わることを頑固として譲らない岩井さんとのやりとりが笑えて、自分の母親のことまで思い出させてくれるようなお話にまとまっています。
個人的には『どうやら僕の日常生活はまちがっている』の助演女優賞は、岩井さんのお母さん(笑)。30歳まで実家暮らしをしていて、暇さえあれば「実家に帰りたい」と語っていたこともある岩井さんらしいエピソードが満載です。エッセイにあるお母さんとのエピソードをまとめて、Netflixのオリジナルドラマとして制作して、世界中から称賛されたらいいのに……なんて、勝手な妄想をしている今日このごろです。
今後も、新潮社さんからエッセイを出し続けて欲しい
エッセイも最高ですが、岩井さんの本職はお笑い芸人、作家ではありません。しかし、こうして本が売れていくと、出版社もなんとか次回作をお願いします! と姿勢が変わってくるわけで……。それに対しても岩井さんは、「はじめに」でこんなことを話しています。
というか出版社。「2冊目に向けた連載は〜」なんて言ってきてるけど、お前ら1冊目の初版6000冊しか刷ってなかったよな? 甘く見積もっていたくせに、如実に手のひらを返してきやがる。
(『どうやら僕の日常生活はまちがっている』より引用)
本の中で本音を言えるのがすごい(笑)。しかし、それが岩井さんなのだ!
ちなみに頑張って売りたい新潮社さんは、読者ファンを巻き込んだ『“帯”総選挙』を開催。こちらも盛り上がって、第3弾のエッセイ本が出版されることを願っています。新潮社さん、ファイトですっ!
そんな岩井さんですが、今年はハライチとしてM-1に出場します。エッセイストとしての岩井さん、漫画の原作を手がける岩井さん、さらに俳優としての岩井さんと、ここ数年で活躍の幅をどんどんと広げていますが、根底にあるのは「お笑い芸人」。M-1の2回戦も通過し、10月末にはコントライブを開催。今後のハライチからも目が離せません!!
【書籍紹介】
どうやら僕の日常生活はまちがっている
著者:岩井勇気
刊行:新潮社
あの不敵な笑みを浮かべながら、ハライチ岩井が平凡な毎日に一撃を食らわせる。初小説も収録!読めば世界が変わる、最新エッセイ集。小説『僕の人生には事件が起きない』も収録。