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H邸のストーブ全体像

 

Hさんの作った暖房システムはなんと3段構造! 土間に取り付けたロケットストーブから、室内に作ったレンガのヒートベンチを通過し、煙道末端に取り付けられた薪ストーブへ続く…というユニークなもの。その使い方だが、まず右側の薪ストーブで火を焚いて、煙突への上昇気流を起こし、ついでロケットストーブに点火し、ヒートベンチを温める…という手順で始動。ここではその詳しい構造を紹介していきたい。まずは、見た目はどこか懐かしいロケットで、その実、ピザも焼けてしまう(?)というユニークなロケットストーブをご覧あれ!

 

<DATA>
Hさん(62歳)/自営業/DIY歴…50年
製作費用…約30万円
製作期間…約3カ月
焚き口…鉄製の円筒
燃焼室…地中に埋設したトンネル
燃焼筒…U字溝
メンテナンスの頻度…年に一度、煙突を外して掃除する

 

1、ロケットストーブ

名前のとおり、今にも発射しそうなデザインのロケットストーブ。製作者であるHさんのおちゃめな一面が伺える

<H邸のロケットストーブ構造図>

土間に設置されたロケットストーブ。周囲を取り囲むレンガの壁も自分で積んだとのこと。全部で使用したレンガは1000個以上!

 

ストーブ着火時の様子。炎を眺めるのが好きなHさんは、燃焼室の一部に耐熱ガラスを使用。炎が引き込まれているのがよくわかる

 

鉄板で作った焼き室の上にアサヒキャスターを塗り付け、保温&ロケット型デザインを実現

 

ロケットストーブの上部につけられたピザ用の焼き室は、鉄板とカットした中華鍋を溶接して自作

 

2、ヒートベンチ

土間のロケットストーブと室内の薪ストーブをつなぐヒートベンチ。内部には3本のスパイラルダクトが配置されており、ダンパーを使って温度管理を行なう

 

<ヒートベンチの構造と熱の流れ>
ヒートベンチ全体を温めたいときは、熱がS字にダクトを回るようにダンパーAとCを閉める(上段イラスト参照)。ダンパーAとCをあけると、ダクト分岐部分で熱が一気に広がるので、分岐部分が一番温まり、先に進むにつれて温度が下がっていく(下段イラスト参照)。ベンチに寝転がって、足元部分だけ温めたい場合などにぴったり。ダンパーBは各ダクトの熱の流れの微調整に使う。

製作中の1枚。自宅フローリングの上にレンガを敷き詰め、ベンチの枠を作る

 

レンガで作った枠内にスパイラルダクトを3本配管する。ダクトの周囲とレンガの間にモルタルを詰めて、しっかり固定&断熱

 

仕上げにダクト上部にもレンガを敷き詰め、ヒートベンチの完成。この先に薪ストーブが続く

 

ダクトに取り付けたダンパーB。ダンパーのレバーを回すと、各ダクトのフタがあく仕組み

 

3、薪ストーブ

ロケットストーブから始まった煙道の最終コーナーに位置するのが薪ストーブ。石油ストーブ用耐熱ガラスから揺らめく美しい炎を眺めることができる

 

<H邸の薪ストーブ構造図>
Hさんがヒートベンチの先に薪ストーブを製作したのには大きな理由がある。というのも煙道が長いロケットストーブの場合、煙突末端の近くに焚き口を設け、ロケットストーブの点火前に上昇気流を作る必要があるからだ。最初にここで火を焚いて、煙突内部を温めると、排気方向への気流が生まれ、ストーブ全体の燃焼効率が上がるというわけだ。

 

ところで煙突ってどうなってるの?

H邸の煙突は、薪ストーブからほぼ垂直に上がり、いったん壁を抜け、屋外で屋根上までまっすぐ延びている。その高さは約8m。ヒートベンチのついた煙道の長いロケットストーブ単体であれば、ここまでの長さは必要ないが、薪ストーブ単体での使用も考慮し、この形に。なお、最低でも年に1回は煙突を取り外し、内部をきれいに掃除するそう。

壁からまっすぐ立ち上がる煙突はφ200mmのスパイラルダクトを塗装したものを使用

 

煙突から流れる雨や煙が冷やされて出る木酢液は、煙突底部に取り付けたドレンで回収。家庭菜園にまいて、園芸に使用する

 

写真◎清水良太郎、製作者提供

*掲載データは2015年10月時のものです。