空気を利用してホログラムに物理的に触れている感覚を作り出す新たな技術「エアロハプティクス(Aerohaptics)」が開発された。この研究は英グラスゴー大学によるもので、2021年9月1日付で『Advanced Intelligent Systems』に掲載された。
触覚ホログラムのアイディアは、SFシリーズ「スター・トレック」のホロデッキのように、SF作品に登場するものとして多くの人に親しまれている。そして近年、触覚フィードバックとボリュームディスプレイの技術は大きく進歩し、仮想物体とのいかにも本物らしい触れ合いが可能になる時が近づいている。しかし、現在のハプティック(触覚)技術では、今なおウェアラブルや手で持てる周辺機器が必要になることが多く、コスト増加やより複雑化していることが、技術普及の妨げになっている可能性がある。
それに対し、エアロハプティクスは、比較的低コストで、ユーザーの手に物理的なインタラクションのリアルに近い感覚を生み出す。
今回開発されたシステムは、ガラスと鏡を使って2次元の像が空間に浮かんでいるように見えるようにする擬似ホログラフィックディスプレイを基礎としている。19世紀に「ペッパーズ・ゴースト」として知られた錯視技術の現代版だ。また、ユーザーの手の動きを追跡する市販の「Leap Motion」センサーを、手のひらや指先に向けて空気を噴出する可動式エアノズルと組み合わせている。ボリュームディスプレイ技術と、正確に制御された空気の噴流とを組み合わせることで、ユーザーの手、指、手首に触覚を生み出している。
論文では、このシステムを使い、バスケットボールを弾ませたときのリアルな感覚を作り出した例が紹介されている。コンピューターで生成したバスケットボールの3D映像を空中に表示し、Leap Motionセンサーでユーザーの手の動きと位置を追跡すると、システムが空気の噴流の方向と力を変化させてエアロハプティック(空気触覚)フィードバックを生成する。
このフィードバックは、バスケットボールの仮想的な表面に基づいて調整されており、ユーザーは、ボールを弾ませたときに指先からボールの丸い形状や、ボールが戻ってきたときの手のひらを打つ感覚を「感じる」ことができる。さらに、バーチャルなバスケットボールをさまざまな力で「押す」ことで、強く弾ませた場合と柔らかく弾ませた場合で手のひらの感触がどのように変化するかを感じることもできる。
この技術は、仮想物体と対話する新しい方法や、先進的なテレビ会議の基礎となる可能性がある。また、外科医が仮想空間で難しい手術のトレーニングをしたり、さらには遠隔手術を行ったりといったことも可能になるかもしれない。
研究チームは、空気の噴流に温度制御機能を追加して、熱いものや冷たいものに触れているような感覚を深めるなど、このシステムにさらなる機能を追加することも検討している。
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