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運動の秋が到来しました。公園で散歩したり、スポーツをしたり、ヨガをしたり。秋は外で身体を動かしやすい季節ですが、最近行われた大規模な定量調査で、日中に屋外で過ごす時間は、睡眠の改善やうつ病のリスクの低下につながることがわかりました。

↑さあ、日光を全身で浴びよう!

 

日中は明るく、夜は暗くなることで、私たちは自然と昼夜の区別をしています。しかし現代の生活では、夜眠る直前までPCやスマホのブルーライトを浴びている人が多く、そのような夜間における光の照射が身体に悪影響を及ぼすことは近年よく知られるようになりました。しかし、日中に光を浴びることの効果は科学的に明らかにされていないことが多くあります。

 

そこで、オーストラリアのモナッシュ大学で睡眠の研究を行っている心理学者のチームが、日光が人間の健康に与える影響について調査を行うことにしました。

 

この研究チームでは、イギリスの調査機関「UKバイオバンク」と協力して、40万人以上の成年のイギリス人を対象に、屋外での過ごし方、そのときの気分や服用している薬などについて質問を行いました。

 

やっぱり外は気持ちがいい

その結果、イギリスの成人は屋外で1日平均2.5時間を過ごし、朝型の人は夜型の人よりも、屋外で過ごす時間が長いことがわかりました。さらに日中に屋外で過ごす時間が1時間増えるごとに、うつ病の発生率と抗うつ剤使用量が下がり、幸福感が増し、朝の目覚めやすさや疲れにくさが改善されていることもわかったのです。

 

日中に屋外で日光を浴びることは、心身に良い影響を与える。このことは多くの人が実感していることですが、今回の大規模調査の意義は、日中に屋外で過ごす時間が増えるごとに、うつ病にかかるリスクが下がり、幸福感や睡眠の質が上がるということが客観的にわかったことでしょう。

 

この論文で、「現代の生活では、昼夜の区別が曖昧になっている」と書かれているように、太陽の光を浴びる時間が減り、起きている時間のほとんどを人工的な照明のもとで過ごしている人が多いかもしれません。しかし、光は睡眠を促すメラトニンを抑制する働きがあるため、本来なら暗くなる夜間に多くの光を浴びると、睡眠が乱れることになってしまいます。このような睡眠サイクルの乱れが、幸福感の減少やうつ病発症のリスクなどにつながるのでしょう。

 

もしも「最近気分が落ち込みがち」「よく眠れない」と感じたら、それは日中に太陽の光を十分浴びていないことが関係しているのかも……。夜は強い光をできるだけ避け、仕事をしている平日であっても、昼休みには積極的に外に出るなど、意識して外出することがいいのかもしれません。

 

【出典】Angus C. Burns, Richa Saxena, et al. (2021). Time spent in outdoor light is associated with mood, sleep, and circadian rhythm-related outcomes: A cross-sectional and longitudinal study in over 400,000 UK Biobank participants, Journal of Affective Disorders, 295, 347-352. https://doi.org/10.1016/j.jad.2021.08.056