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血糖値のモニタリングに対し、針不要のアプローチを追求するGraphWearは、シリーズBラウンドで2050万ドル(約23億円)を調達した。このシリーズBラウンドは、GraphWearのアプローチ、つまり「皮膚をまったく傷付けずにブドウ糖のような体内の重要な指標を監視する手法」に対する投資家の信任投票のようなものだといえる。

GraphWear Technologiesは2015年、Rajatesh Gudibande(ラジャテシュ・グディバンデ)氏とSaurabh Radhakrishnan(サウラブ・ラダクリシュナン)氏によって創設された。2人はともにペンシルベニア大学でナノテクノロジーの修士号を取得している。具体的にいうと、GraphWearはグラフェン(この材料については後で詳しく説明)で作られた皮膚表面レベルのウェアラブルを開発している。このセンサーは小さく、Apple Watchと同じサイズだが、中核となる重要なテクノロジーは実は裏側部分にある。薄いグラフェン片をウォッチの裏や、下腹部に貼るステッカーの上に設置して使用する。

グディバンデ氏によると、このシリーズBは、同社が以前行ったこのウェアラブルの検証研究を踏まえ、極めて重要な試験を完了し、FDAへの承認申請を提出することに焦点が絞られている。このラウンドはMayfieldが主導し、MissionBio Capital、Builders VC、VSC Venturesが参加して行われた。

「追求すべき重要な課題は、皮膚に穴を開け血液を取るための道具を使わず、血液の中でなにが起きているかを本当に知ることができるのか、ということでした。GraphWear は進歩を遂げつつあり、何百万という人にお届けできる製品を実際に作り出す最初の企業の1つになる可能性があると考えています」とMayfieldの工学生物学投資部門の共同リーダーであるUrsheet Parikh(アーシート・パリク)氏は述べた。

持続血糖モニタリングは、糖尿病関係者の中で注目を集めている。2017年にFDAに承認を受けたFreeStyle Libreなど、いくつかの持続血糖値モニターが近年承認されている。このデバイスは現在でも血糖値を計測するのにアームパッチに取り付けられた皮下フィラメントを利用している。

これらのデバイスは1型糖尿病の糖尿病患者(体がインスリンをほとんどまたはまったく生成しない人々)にとって明確なメリットがある。そうした患者は米国だけでも160万人  いる。米国糖尿病学会は、定期的にインシュリンを注射しているほとんどの患者に対し、持続血糖モニターを含め、血糖値を自己監視できるテクノロジーの使用を「促すべきである」と同学会発行の2020年ガイドラインの中で、述べている。

2型糖尿病の患者(米国では3400万人)、または定期的にインシュリンを注射していない患者の場合は、議論が行われている。一部の人々は、これらの患者にとって、、モニターを用いて定期的に血糖値をモニタリングすることは(これこそ持続血糖モニターが行うことであるが)、それほど意味がないと主張している。例えば、2017年に行われたJAMA Internal Medicineが行った調査によると、患者が血糖値を定期的に自己監視して1年経過しても、患者の A1cレベル(糖尿病の重要なバイオマーカー)は改善しないことが判明した。しかしこの調査は非侵襲的な血糖値モニターではなく、指から血を採血するフィンガースティックテストを定期的に使用していた患者を対象にした調査であった。

しかし、米国糖尿病学会は、インスリン治療と組み合わせて適切に持続血糖モニターを使用することができれば、2型の人々にとってもこのツールは有用になり得ると 述べている

GraphWearの持続血糖モニターのセンサーには、ナノテクノロジーに基づくアプローチが取られている。このデバイスは、小さな引き込み式フィラメントやフィンガースティックを必要とする他の持続血糖モニターと異なり、皮膚をまったく傷付けずに済むとグディバンデ氏はいう。

「グラフェンには分子を引き上げる電場があります。約200の分子が対象になります。次にグラフェンはそれを『吟味』し、電気信号に変換し、Bluetoothを介してユーザーの携帯電話に転送します。携帯電話は、血糖値を持続的にグラフ化して表示することができます」。とグディバンデ氏は説明する。

これらのセンサーは血液中のブドウ糖ではなく、実際には間質液中にあるブドウ糖を計測している。しかし、米国糖尿病学会の2020年のガイドラインによると、間質液中の血糖値は「血漿ブドウ糖とよく相関している」という証拠があるため、この方法で測定された値は糖尿病の患者にとって臨床的に適切なものである。グディバンデ氏は「私たちの経験的臨床データでも同様のことが示されています」と付け加えた。

GraphWearはすでに1型と2型の両方について、40人の患者を対象にこのウェアラブルセンサーの実行可能性調査を実施した。同社は、静脈血から収集した血糖値とこのデバイスがモニタリングした値を比較する検査をしたのだが、結果はまだ公表されていない。しかしグディバンデ氏によると、GraphWearの精度は従来のセンサーの精度と「同等」だったとのことである。

ブドウ糖のモニタリングはさておき、GraphWearについて語る際に、他に注目すべき点は、センサーの素材であるグラフェンだ。

グラフェンは単一原子からなる薄いカーボンシートであり、大変よく電気を通し、強く、軽く、柔軟性がある。グラフェンが2004年に発見されて以来、この素材は大変な注目を集め、まだ完全にそうなってはいないが、次なるシリコンになるだろうと喧伝された。

英国、中国、EUはグラフェンの生産に大々的な投資を行っており、グラフェンを使った製品が少しずつ市場に登場するようになっている(2019年のレビューペーパーで強調されていたいくつかの用途をあげれば、自転車、靴、センサー、テニスラケットがある)

グディバンデ氏によると、GraphWearは、センサーの中で使用されているグラフェンを「新品の状態」に保つことができるため、グラフェンのブドウ糖分子に対する感度を非常に高い状態に保てるという。同社は大規模にその素材を製造することもでき、またナノテクノロジーを用い、ブドウ糖のセンサー以上に有益な新しい用途を開発中である、とパリク氏は述べた。具体的には、同社は分極化された液体をトランジスタとして用いる方法で特許を取得している。

「ブドウ糖分子が皮膚上にあれば、それは一時的なトランジスタのように立ち表れて作用します。これは新しいカテゴリーのトランジスタで、本格的なイノベーションといえます」とパリク氏。

しかし、血糖値モニタリングは GraphWearにとって賢い最初の一歩と言える。というのも承認への道筋がはっきりしているからである。GraphWearの重要な試験が他の持続血糖モニターと同類であることを示せば、同社はFDA 510(k) 承認を求める可ことができる。ただしグディバンデ氏が認識しているように、予測できない落とし穴がいくつかあるかもしれない。例えばGraphWearの非侵襲的なアプローチのために、このデバイ氏が独自のカテゴリーに分類されてしまうことも考えられる。

「ですから、私たちが510(k)になるのかどうかわからない、というリスクはあります。しかし、いずれにしてもそのプロセスは6カ月から14カ月ほどです。当社のゴールは試験を通過して規制機関に承認をもらえるよう申請することです」とグディバンデ氏はいう。

GraphWearがグラフェンプラットフォームを用いて他のバイオ分子を計測できる製品を実現できれば、そのプラットフォームを利用して他の分子を検出したり、あるいは体内でなにが起こっているかを持続的にモニターすることができる。しかしこのシリーズBラウンドは「臨床的に評価された、グラフェンを用いたセンサー」という最初のステップを実現することに焦点をあてている。

画像クレジット:GraphWear

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)