もっと詳しく

米国時間10月20日、Netflixの従業員が10月5日に封切られたデイヴ・シャペル・スペシャルに対する同社の取り扱いをめぐってストライキを行った。それと同時にロサンゼルスのトランスジェンダー活動家Ashlee Marie Preston(アシュリー・マリー・プレストン)氏が、ストライキに参加しているNetflixの従業員への連帯集会を主催した。その集会のために作られた動画では「Queer Eye(クィア・アイ)」のJonathan Van Ness(ジョナサン・ヴァン・ネス)や「Cowboy Bebop(カウボーイビバップ)」と「The Sandman(サンドマン)」のMason Alexander Park(メイソン・アレクサンダー・パーク)といったNetflixのスターたちが、その他のハリウッドスターや、Angelica Ross(アンジェリカ・ロス)、Jameela Jamil(ジャミーラ・ジャミル)、Kate Bornstein(ケイト・ボーンスタイン)、Our Lady J(アワー・レディ・J)、Sara Ramirez(サラ・ラミレス)、Peppermint(ペパーミント)、Colton Haynes(コルトン・ヘインズ)らのトランスジェンダー擁護者とともに連帯を表明した。

Netflixの広報担当者は「私たちはトランスジェンダーの同僚や協力者を大切に思っており、ストライキを行った社員の決定も尊重します。また私たちは、Netflixのコンテンツ内にも、やるべき多くの仕事があることも認識しています」とTechCrunchに述べている。

従業員のストライキや連帯集会の正確な参加者数は不明だが、プレストン氏が先手を打ってもっとスペースのある場所に移動させたことで、周辺では大きな騒ぎとなった。

ストライキに参加した従業員が求めているのは、Netflixが「トランスフォビアやヘイトスピーチのプラットフォームにならないための対策を講じること」と書簡に記している。彼らは、コンテンツへの投資や従業員関係、安全、被害の縮減などの分野でNetflixが対応すべき要求のリストを作っている。

コンテンツでは、Netflixがトランスジェンダーやノンバイナリーの人材への投資を増やすことと、有害の可能性のあるコンテンツに関しては話し合いに被雇用者専門集団を参加させること、製作担当役員としてトランスとノンバイナリーを増やすこと、センシティブな作品については検討委員会の内部手続きを改定することを要求している。従業員関係と安全については、トランスやBIPOC(黒人、先住民、その他有色人種)を上級管理職に雇用することと、ダイバーシティや差別解消の宣伝動画への出演を拒否(あるいは前作からの消去)できること、そしてトランスフォビックのタイトルやタレントの利用を避けることが求められている。被害の縮減に関しては、Netflixがトランスフォビックのプラットフォームなることによって加害者になることを認め、そんなタイトルを使う場合は免責事項があること、トランスを肯定するタイトルに変えること、反トランスとされている作品については、トランス肯定のコンテンツを提案せよとしている。

要求には、今回の騒動の元となったデイブ・シャペル・スペシャルのNetflixからの削除は含まれていない。それは最初、トランスフォビック発言のプラットフォームになることを懸念する一部のNetflix従業員と会員からの反発を浴びた。

The Hollywood Reporterのインタビューで、共同CEOのTed Sarandos(テッド・サランドス)氏は、要求への応否を明言しなかった。

「この2、3日の間、人々の声に耳を傾け、彼らがどう感じているか、何を望んでいるかを聞き出すことに専念してきました。私たちは、スクリーン上でも、カメラの後ろでも、そして職場においても、インクルージョンに深くコミットしていることをお伝えしたいと思います」とサランドス氏は述べた。

ストで不在です。

シャペルの特別番組の前にトランスフォビアに関する免責事項を追加して欲しいという要求に対してサランドス氏は、あまり乗り気でないようだった。

「コンテンツにすでに年齢制限があり、番組の冒頭でデイブ自身がはっきりと警告しているため、これに関しては不要だと思う」とサランドス氏はいう。

Netflixがシャペル・スペシャルを公開する前から、従業員たちは反トランスのジョークがあることに懸念を表明していた。シャペルは、自分が「チームTERF」であると宣言し、トランスジェンダー運動に反対する女性過激集団の名を具体的に挙げていた。しかしサランドス氏は社内のメールでもその特別番組を擁護し「画面上のコンテンツが現実の害になることはない」という。しかし批判を浴びた彼はその後のThe Hollywood Reporterで「画面上のコンテンツが現実世界でインパクトを持つこともありうると、私は100%信じている。肯定的なインパクトもあれば、ネガティブなインパクトもある」という。

カリフォルニア州ロサンゼルス、10月20日。トランス派の従業員と賛同者たちがカリフォルニア州ロサンゼルスで、2021年10月20日にデイヴ・シャペル・スペシャルに抗議してNetflixでストライキを行い、その壇上でライターで監督のJoey Soloway(ル・ソロウェイ)氏がスピーチしている。Netflixが放映を決めたシャペル・スペシャルには、トランスジェンダーの人たちに関するジョークがあり、すでに一部の従業員が懸念の声を上げていたにもかかわらず、会社はそれを無視した。(画像クレジット:Rodin Eckenroth/Getty Images)

自身もトランスジェンダーであるNetflixのシニアソフトウェアエンジニアTerra Field(テラ・フィールド)氏が、シャペル・スペシャルに関するバイラルなスレッドをツイートしている。

私たち自身は被害者でもなければ、神経過敏でもない。私たちが反対しているのは、今後このようなコンテンツがトランスのコミュニティに及ぼす被害に対してだ。特に有色のトランス、トランスの黒人女性への悪影響が大きい

報道によると、フィールド氏はその後、他の2人の社員とともに、トップのオンライン会議に出席しようとしたため、停職処分を受けました。しかし、Netflixは、ある取締役が会議のリンクを彼女と共有し、出席しても問題ないことをほのめかしていたことを発見し、彼女を復職させた。取締役級の上司同伴ならOKのようだ。

 

真実も多少はある。Netflixは多くの人の生活を変えたすばらしい企業だ。Netflixは大失敗を犯した。しかし、ここが分岐点だ。Netflixの社員としての私たちには、このプラットフォームの上や外に変化を作り出す特権と責任がある。

そのすぐ後に、Netflixのトランス社員のリソースグループがストライキの組織化を開始した。しかし、その組織者で、黒人とトランス両方の社員のリソースグループのグローバルなリーダーであるB. Pagels-Minor(B・ページ-マイナー)氏たちは、米国時間10月15日に解雇された。これらの解雇で、Netflixに対する反発は一層激化した。

関連記事:Netflixがトランスジェンダーの従業員によるストライキを計画した社員を解雇

先週、Netflixの代表者はTechCrunchに対して「当社は、商業上の機密情報を社外で共有した従業員を解雇しました。この社員がNetflixへの失望や被害が動機となっていることは理解していますが、信頼と透明性の文化を維持することは当社の中核をなすものです」という。

TechCrunchはB・ページ-マイナー氏らに接触できたが、彼らのコメントは得られなかった。

その問題のリーク情報は、Bloombergの記事に登場する「The Closer」に関する内部的な数字のようで、Netflixはその1回かぎりの特別番組に2410万ドル(約27億4000万円)を投じたという。一方、同社はBo Burnham(ボー・バーナム)の最近のコメディ・スペシャル「Inside(明けても暮れても巣ごもり)」に390万ドル(約4億4000万円)、9話で構成される大人気の「Squid Game(イカゲーム)」には2140万ドル(約24億3000万円)投じた。後者は、Netflixのデビュー番組としては過去最高の視聴率だった。

Netflixによると、その社員はコンテンツを外部にシェアしたことを認めた。しかしページ-マイナー氏の弁護士がThe New York Timesに今週語っているところによると「ページ-マイナー氏はセンシティブな情報をプレスにリークしたことを強く否定している」という。この状況に詳しいNetflix社員によると、ページ-マイナー氏がこれらの文書をリークしたことは非常に疑わしいとみんなが思っているという。なぜなら、2人とも上場企業のチャットでリークすることには批判的だったからだ。

Netflixによると、同社の内部的アクセスのログによると、Bloombergの記事の中で言及されている番組に関するセンシティブなデータを見た人物は1人だけだったという。

画像クレジット:Al Seib/Los Angeles Times/Getty Images

原文へ

(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)