もっと詳しく

ポルトガルの植民地になった歴史を持つブラジルは、カトリック教国として有名です。でも、同国のクリスマスについて知らない人が多いのではないでしょうか? そこで本稿では、ブラジルのクリスマスの祝い方や、大人気のプレゼント交換ゲームを紹介します。

 

さまざまな宗教、ほぼ同じクリスマス

↑リオデジャネイロのクリスマス

 

ブラジルには多様な宗教があります。2020年に行われた調査によると、国民が信仰する宗教はカトリックが50%、プロテスタントが31%とキリスト教系が大多数を占めていますが、キリスト教以外では無宗教が10%、心霊派(スピリチュアリズム)が3%、アフリカ系のウンバンダやカンドンブレが2%います。

 

ウンバンダやカンドンブレは、奴隷としてブラジルへ連れてこられたアフリカ系移民を中心に、先住民の精霊信仰やカトリックの教えが融合し、独自の民族宗教となった宗教。ウンバンダもクリスマスを祝いますが、太陽神オシャラを称えるためのお祝いであり、カンドンブレは人類の始まりの重要性を考える日となっています。

 

ただ、どの宗教も宗派や教義が違うというだけで、キリスト教やキリスト教がルーツの宗教を信仰している人が大多数であり、クリスマスの過ごし方にあまり大きな違いありません。

 

クリスマスの4週前の日曜日になると、カトリックの習慣である降誕節(こうたんせつ)のシンボルである「イエスの馬小屋」が教会や広場に飾られます。ドイツのクリスマスマーケットと似ていますが、街やショッピングモールには、大規模なクリスマスデコレーションが出現。大きなクリスマスツリーやサンタクロースと一緒に写真を撮影する場も設けられ、ブラジルの風物詩になっています。

↑降誕節のシンボルである「イエスの馬小屋」

 

ブラジルの多くの会社では、「セスタ・デ・ナタル(クリスマスの箱)」というクリスマスや年始用の食材を詰め合わせた箱を従業員に配ります。その箱の中には、「パネトーネ」というクリスマスに食べるクリスマスケーキが必ず入っていますが、この習慣はイタリア移民の影響を受けながら定着したようで、ブラジルではお世話になった人にもパネトーネを渡します。

↑セスタ・デ・ナタル(クリスマスの箱)の中身。右端の箱2つがパネトーネ

 

クリスマスの12月24日と25日は休日となり、商業施設が閉店します。ブラジル人にとってクリスマスは日本のお正月に相当する家族で過ごす大事な行事であり、家族や親戚と集まります。焼いた七面鳥、フレンチトースト、ポルトガル料理であるタラのフリットやパネトーネを食べたり、ワインを飲んだりしながら、賑やかに夕食を楽しみます。

 

欧米では25日にプレゼント交換をしますが、ブラジルでは24日のクリスマスイヴに行います。25日の午前0時になるとシャンパンを開けて乾杯し、みんなでクリスマスを祝うのです。

 

大人気のプレゼント交換ゲーム

しかし、ブラジルのクリスマスの最大の特徴は「アミーゴ・セクレット(秘密の友達)」という大人気のクリスマスプレゼント交換ゲームと言えるかもしれません。子どもたちの集まりだけでなく、クリスマス前の会社や友人同士の忘年会など、さまざまな場所でこのゲームを楽しむ人たちが増えていますが、このゲームをすれば、間違いなく場が盛り上がります。

 

アミーゴ・セクレットの準備と遊び方は次の通りです。

 

【準備】

1: ゲームに参加したい人を集めてグループを作り、プレゼントの種類や予算を決めます。

 

2: ゲームに参加しない人から一人選んで、誰が誰にプレゼントを渡すかを決めてもらい、各参加者にプレゼントを渡す相手の名前だけを伝えてもらいます(この抽選を請け負う無料専用サイトや携帯アプリもある)。

 

3: 参加者はクリスマス当日までにプレゼントを買っておきます。自分が誰にプレゼントを渡すのか、他の参加者へ口外してはいけません。

 

【プレゼント交換日の遊び方】

① 最初の発表者が「私の秘密の友達は男です」「ひげがあります」など、自分がプレゼントをあげる相手のヒントを一つ言い、参加者はプレゼントを受け取る人(秘密の友達)を誰か当てていきます。

 

② ある参加者が、ほかの参加者のプレゼントを渡す相手を当てたら、プレゼントをあげる人ともらう人は抱擁し、プレゼントを開封して一緒に記念撮影をします。

 

③ このときプレゼントをもらった人が次の発表者となります。参加者全員にプレゼントが行きわたるまで、①と②を繰り返します。

↑アミーゴ・セクレットの様子

 

アミーゴ・セクレットの起源については3つの説があります。

 

1つ目は、祝祭の期間中に市民が役人にランダムに贈り物をする習慣があり、受け取る役人を選ぶために抽選を行っていたという説。2つ目は、8世紀にノルマン人たちが神との協定儀式のために贈り物を交換していたことをアミーゴ・セクレットの始まりとする見方です。3つ目は、20世紀前半の世界恐慌下のアメリカが舞台。労働者たちは同僚全員にプレゼントを渡したいと思っていましたが、経済的に難しいうえ、同僚全員と親しいわけではありません。そのような条件の中で同僚全員がプレゼントを交換するにはどうすればよいかと考えた末、生み出されたのがこの方法だったそうです。

 

近年では、アミーゴ・セクレットの“変種”である「イニミーゴ・セクレット」というゲームも楽しまれています。「イニミーゴ」は「敵」の意味で、プレゼント交換法はアミーゴ・セクレットと同じですが、相手の嫌いなものをわざとプレセントして盛り上がるゲームです。例えば、ビールが好きな人に安くて不味いビールをプレゼントするなど、何をあげるかではなく、どれだけ盛り上がるかを楽しむゲームと言えるでしょう。

 

コロナ禍で2020年はアミーゴ・セクレットをする人が減ってしまいましたが、そんな中でも抽選代行サイトでは、相手の家へ直接プレゼントを送付するという新しいサービスが誕生しました。人と接触することなく、アミーゴ・セクレットを楽しむ人が現れたのです。

 

ブラジルはカトリック教国ですが、ヨーロッパ、アジア、アフリカ系移民を多く受け入れ、多様な移民文化や宗教の影響を受けたクリスマスの習慣が根付いています。ブラジル人がクリスマスで最も大切にしていることは、「神の愛や教えについて考えること」「家族で過ごすこと」「みんなで楽しむこと」。アミーゴ・セクレットでも、みんなでゲームを楽しむことが最も重要です。