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最近、twitterをはじめとする各種SNSを激しく使っている。使い分けもうまくなった。そんな中、どんな媒体でも見るジャンルの広告のバリエーションが気になっている。

 

 

出会いの場の主流となったマッチングアプリ

それは、マッチングアプリの数々だ。30歳までの年齢層に特化したもの、50歳以上のシニア狙いのもの、変化球的にはパパ活したい女性たちの受け皿になっているものもある。

 

気軽な出会いから結婚相手をがっつり探すためのものまで、真剣度のグラデーションもさまざまだ。頻繁に行われているマッチングアプリの利用率に関する調査を見ると、どのサービスもメンバー数が上昇していることがわかる。ごく普通の飲み会もできなくなった今、第一義的な出会いの場として選ぶには弱めだったかもしれないマッチングアプリが主役になりつつある。

タイトルから勝ってる婚活ドキュメンタリー

57歳で婚活したらすごかった』(石神賢介・著/新潮社・刊)は、もうタイトルから勝っている。婚活という戦場に舞い降りた57歳の戦士にとって、何がどうすごかったのか。どうしても知りたい。プロフィールを見たら、著者の石神氏は1962年生まれ。同い年だ。がぜん距離が縮まる。序章に、次のような文章を見つけた。

 

この本は57歳からの、オヤジの“熟年婚活記”だ。婚活アプリ、結婚相談所、婚活パーティーなどを利用したリアルな体験をつづっていく。いい大人になってなお女性と上手に付き合えないもどかしさも、はるか年下の女性に罵倒された屈辱も、ありのまま打ち明ける。

『57歳で婚活したらすごかった』より引用

 

石神さんと筆者は、同じポップカルチャーの影響を受けているはずだ。高校から大学時代にかけて、身近に『週刊プレイボーイ』とか『HotDog Press』とかの恋愛情報ツール的な性格が強い媒体がいつもあった。こうした媒体から得た恋愛ノウハウには、耐用年数みたいなものがあるのだろう。それに、時代精神と恋愛行動のコンパティビリティみたいなものもあるだろう。序章の文章を読んだだけでさまざまな思いや場面が浮かび、広がっていく。

 

年齢を重ねてからの婚活はディストピアでしかないのか

章立てを見てみよう。

 

序章  57歳で一人、がつくづく嫌になる

第1章 41歳女性に「クソ老人!」とののしられる

第2章 予期せず本気の恋をして打ちひしがれる

第3章 結婚相手の愛犬に尻をなめられる

第4章 イベント系婚活は人柄がわかる

第5章 コロナ禍で追い詰められる婚活者たち  

終章  誰かと生きるのではなく、誰かのために生きる

 

各章のタイトルを見て感じられるのは、ある程度年齢を重ねてからの婚活のディストピア感だ。ただ、それだけが本書のテーマかといえば、決してそうではない。ディストピア感の向こう側に、温かく柔らかいものが確実に存在している。

 

プロフィールと現実の絶望的乖離

マッチングアプリを使えば、自分と相手の需給関係の調整をある程度までの段階まで、ある程度のスピード感を持って進めることができる。ただ、実際に会って話をして、ある程度うまくいったという“打感”があっても安心はできない。プロフィールによる選択と実際の顔合わせは、まったく違うゲームなのだ。そのあたり、第1章で詳しく触れられている。

 

石神さんは41歳の女性と会った。かつて地方のテレビ局でレポーターの仕事をした経験があり、離婚歴が一度ある銀行員だった。趣味が合うことも確かめ、アドレスを交換し、二人とも好きなR&Bアーティストの来日公演に行くことまで約束して別れた。

 

チケットも買ったが、全く連絡が来ない。LINEでメッセージを送ったら、3回目に「しつこいです。もう連絡しないでください。無理です」という返信が来た。そこで、「失礼しました。もう連絡はさしあげません」と送信して寝ると、翌朝こんなメッセージが届いていた。「連絡すんなって書いてあんの読めないのかよ。老眼鏡つけとけよ。てめーからLINEくるだけでゾッとして不眠になるわ。クソ老人!」

 

老眼鏡、クソ老人というワードの響き。石神さんと同い年である筆者自身が世界からどう見られているのか、思い知らされる気がする。

 

行くぜ! 婚活

60歳近くになってからの婚活が順調に進むわけがないし、それを望む方がまちがっているのかもしれない。ただ石神さんは、クソ老人と罵られたり、思わず出会ってしまった本気の恋で心折れたりしながらも、ある境地に至った。以下に紹介するものも含め、本書に記された一つひとつの文章を味わい、行間から感じ取るべきものはたくさんある。

 

自我が育ち切ってしまった中高年の場合、一人で生きていく自信があってこそ、自分以外の人間に費やす時間と余力があってこそ、誰かと一緒に生きることができるのではないだろうか。

『57歳で婚活したらすごかった』より引用

 

驚きとか嘆きとか、喜びとかキュンキュン感など、振れ幅の大きなさまざまな感情が交差しながら進んで行く超リアリスティック恋愛ドキュメンタリー。57歳、恋の大冒険。『レイダース/失われたアーク』とか、『ロマンシング・ストーン/秘法の谷』とか、80年代前半のアドベンチャー映画のバイブスも感じる。確実に言えるのは、婚活はいろんな意味で本当にすごかったということだ。

 

【書籍紹介】

 

57歳で婚活したらすごかった

著者:石神賢介
制作:新潮社

やっぱり結婚したい。57歳で強くそう思った著者は、婚活アプリ、結婚相談所、婚活パーティーを駆使した怒涛の婚活ライフに突入する。その目の前に現れたのは個性豊かな女性たちだった。「クソ老人」と罵倒してくる女性、セクシーな写真を次々送りつける女性、衝撃的な量の食事を奢らせる女性等々。リアルかつコミカルに中高年の婚活を徹底レポートする。切実な人のための超実用的「婚活次の一歩」攻略マニュアル付!

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