英サリー大学とケンブリッジ大学は、従来あまり注目されていなかった2つの半導体材料が、膨大な量のデータをこれまで以上に高速に通信するという通信業界の要求に応える論文を発表した。
通信各社が5Gのサービスを開始するなど通信の高速化が加速する中、電波を使用するWi-Fiに対してLEDなどを使用した光で通信するLi-Fiが注目されつつある。理論上の通信速度がWi-Fi と比べて20~100倍で、光を利用することから、屋内の壁で通信を遮蔽することができてセキュリティーの面でも有利な上、照明器具の機能を併用することでエネルギーの消費削減にも貢献できるメリットがあると言われている。
サリー大学とケンブリッジ大学の研究者たちは、中国電子科技大学のパートナーとともに、有機半導体であるコロイド量子ドット(CQD)と金属ハロゲン化物ペロブスカイト(ペロブスカイト)を、LEDベースのLi-Fiにどのように利用できるかを検証した。
共同第一著者であり、サリー大学の客員博士研究員であるAobo Ren博士は、「CQDとペロブスカイトは、低消費電力で費用対効果が高く、拡張性のある通信モジュールの実現に向けて大きな期待がもてます。Li-Fiでは、従来の無機薄膜技術が今後も主流であると思われますが、これらの材料を用いたLEDは補完的な役割を果たし、業界に大きな影響を与えることができると考えています」と述べている。
同じく共同第一著者でケンブリッジ大学の博士課程に在籍するHao Wang氏は、次のように述べる。
「LEDの将来的な応用は、照明やディスプレイの分野に限られません。光通信を目的としたこれらの材料を用いたLEDの開発はまだ始まったばかりで、求められている性能にはまだ及びません。LEDを使用した通信の実装に向けて、材料、デバイス、システムの側面から、潜在的な戦略の議論と現在の技術的課題の提示は必要かつタイムリーです」
また、責任著者の中国電子科学技術大学のJiang Wu教授は、「IoTや6G通信システムのための光学デバイスには、高速、低コスト、そして組み込みが容易であることが求められます。CQD、ペロブスカイトは、特定のオプトエレクトロニクス用途において、従来の無機半導体を補完、あるいは競い合いながら使用できる有望な材料です」と述べている。
研究成果は8月23日付の『Nature Electronics』に掲載されている。
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