先月、バンクーバーでは、1年に一度開催される最も大きな日本酒のお祭り『Sake Fest 2017』が開催されました。
今年もレストランやリカーストアを招く午後の部と、一般客を招く夜の部があり、夜の部には250名ほどのお客さんが来場したと運営者から伺いました。会場は非常に賑わい、参加者がテイスティングした日本酒の情報を熱心に質問していた様子が印象的でした。
そんなイベント当日の様子をまとめた動画はこちら。
そして本記事では、現在インターンとして私たちにジョインしてくれていて、インポーターのAXISプランニングさんのサポートを受けて今回のイベントでお酒をサーブした、駆け出し唎酒師の鈴木せいかさんに、当日の様子、日本との違い、想像とのギャップについてレポートをまとめてもらいました。
彼女は新潟県出身で、まだ日本では大学院生ですが、この一年間カナダに滞在し、トロントとバンクーバーで日本酒やお酒に関する様々なことを体験してきました。是非、彼女なりの視点のレポートをご覧ください!
[レポート] 海外の日本酒イベントでお酒をサーブして感じたこと
新潟大学大学院自然科学研究科の鈴木聖袈です。私はトビタテ!留学JAPANのご支援のもと、トロントとバンクーバーに約1年間日本酒留学をしています。目的は2つあり、カナダでの効果的な日本酒販売方法を探ることと、クラフトビールから日本酒への応用点を探ることです。バンクーバーでの1ヶ月半では1つ目の目的達成のため、Japanese Sake Loversさん、Axis Planningさんでインターンとしてお世話になっていました。今回はSake Fest 2017でサーバーとして働いた上で気づいた点、感想をレポートにまとめました。
まず、消費者の反応についてはかなり良かったです。多くの方が特定名称酒を知っていたり、タイプの異なる日本酒の味や香りの違いを理解してくれたりと予想以上の反応でした。このイベントが日本酒のためのイベントであったため、日本文化や日本食が好きという方々が多く来ていたからだと思います。ただ、バンクーバーのレストランやリカーストアで日本酒を買うのは高いから、このようなイベントでしかハイランクの日本酒は飲めないと言っていた方が多くいました。改めてテイスティングイベントの重要性を感じました。
海外(バンクーバー)で日本酒を売ることの難しさ
ところで、バンクーバーがあるブリティッシュコロンビア(BC)州では輸入される酒類には多くの関税や分析費用が課せられ、日本で買える2~3倍の値段で消費者のもとに届きます。これにはアメリカ禁酒法時代の政府の知恵でアルコールの関税を高くし、州政府の大きな財源としたことに由来します。値段の面で日本酒販売しにくい中、輸入や分析、管理まで州政府が行うため、日本酒の鮮度を保たせ、1番美味しい状態で消費者に届けるのも難しい状況です。
Axis Planningさんのような卸売会社や日本の酒造会社ができることはテイスティングイベント等でのプロモーション活動が主になります。このようなプロモーション活動で消費者が気に入る→レストランやリカーストアで買う→州政府が日本酒需要に気づく→州政府が日本酒の冷蔵管理を作る→鮮度が保たれた様々な種類の美味しい日本酒がBC州で買えるようになる。といった地道なステップのみによってようやく様々な美味しい日本酒がバンクーバーで飲めるようになります。
このことから、テイスティングイベント等のプロモーション活動の重要さがわかります。Sake Festは年に一回のバンクーバー最大の酒イベントですので、かなり重要なプロモーションの機会と言えるでしょう。
海外の日本酒イベントが、もっとこうだったら良いのに!
サーバーとしてSake Festに参加して2点、改善できる点を考えてみました。1つ目は立地です。今回Sake Festが行われた会場はバンクーバーで最も治安が悪いと言われるエリアでした。その中の一見、貸し物件のような小さい建物内の小さいイベント会場(50m×50mくらい)で行われました。イベントの時間帯は夜ですので、これでは会場へ行くのも怖いですし、会場もわかりづらいと感じました。もう少し治安が良く、見た目で会場だとすぐわかるようなところや、たまたま通りがかった人にも興味を持ってもらえるような、人が集まるエリアで行った方がいいのではないかと思いました。2つ目は日程です。今回は9月下旬の木曜日の夜(一般客)に行われ、翌日に仕事で最後までいれない、仕事の都合で友達が来れなかったという方々が多くいらっしゃいました。これも可能なら週末開催や2日間開催にすることで集客をした方がいいのではないかと思いました。
もちろん、バンクーバーでの日本酒需要がまだまだ少ない中での運営で経済面でも厳しいのは理解できます。しかし、本当に日本酒を広めるためにはたった年に1回の大きなチャンスに賭けてもいいのではないかと思います。これには酒造会社側の協力が必要で、英語でプロモーション活動ができる人材がそれぞれの日本酒の愛を直接消費者に伝えることが、消費者に日本酒の良さを理解してもらうために重要だと思います。
まとめ
今回、Sake Festのサーバーをさせていただいたことで多くのことを学びました。1番の収穫は、消費者やレストラン・リカーストアの関係者とコミュニケーションをとることで、どういったことが日本酒に求められているかということです。それはペアリングです。
カナダ人を含めワインの文化がある国では必ずペアリングにこだわる方が多いと気づきました。日本酒単独で飲むのももちろん美味しいですが、それぞれの日本酒には必ず食との相乗効果でさらに美味しくなることができます。日本酒は日本食のみならず西洋料理といった日本食以外でも合わせることが可能です。私はまだまだ勉強中ですがこれからもペアリングの提案の幅が広がるような努力を続けていきたいと思います。