リモートワークが日常化し、自宅で過ごす時間が長くなることによる運動不足を解消してくれる自転車だが、ここで紹介する「e-Bike」は、一般的な自転車とは異なり電動アシストを持つ『次世代の自転車』として新たな歴史を刻み始めている。読者の中には「e-Bike=電動アシスト付き自転車」と思われている人も多いと思うが、この2つのカテゴリーは似て非なるモノであり、求められる用途に大きな違いを持っているのだ。電動アシスト付き自転車は日常を支える道具であり、e-Bikeは機能性を追求した趣味のギアである。
そんなe-Bikeの楽しさを多くの人に知ってもらうため、e-Bikeや電動アシスト付き自転車の主要コンポーネンツである電動アシストモーターを供給する「BOSCH(ボッシュ)」が主催するイベント「BOSCH e-Bike試乗会」に筆者が参加した。ボッシュはドイツで誕生した自動車機器サプライヤーであり、現在は電動工具や自転車用モーターなども手掛ける世界的なブランドとして認知されている企業である。
e-Bikeを駆り、標高1202mのヒルクライムに挑戦!
今回のイベントはe-Bikeの実力と楽しさを知るには最高のロケーションが用意されていた。場所は河口湖からほど近い山梨県南都留郡にあるトレッキングの聖地として知られる紅葉台から三湖台までのコースとなり、1202mの標高までを一気に駆け登るというもの。紅葉台の駐車場からスタートした道程は厳しく、自転車を使ってのヒルクライム……と聞いて少しばかり尻込みをしてしまう。
コースの中には最大斜度が10%を越える急坂が続く場所もあり、電動アシスト無しのMTBでは「絶対に無理」と思えてしまうところだが、アシストモードを最大の「TURBO」にシフトすると、ダンシングをすることなくサドルにお尻を乗せたままスイスイと登坂していく。ギアを軽くし高回転ケイデンスで登る気分は漫画「弱虫ペダル」の小野田坂道クンになった気分である。
途中、レストハウスで昼食を取り、撮影をしながらのヒルクライムではあったが、ほど良い疲れを伴う登坂が気持ち良い。ボッシュ製の電動モーターにアシストを受けながらも、自分の脚力を使う充実感は非常に大きく感じられた。モーターに依存し過ぎないことで味わえるほどの疲労感と達成感は絶妙で、登坂力をエンジンに依存するオートバイとは違ったベクトルの楽しさを与えてくれる。
そして、約1時間の道程を経て三湖台へと到着。標高1202mからの見晴らしは素晴らしく、三湖台の名の通り西湖、本栖湖、精進湖を見晴らす眺望と、青木が原の樹海と美しい富士山の姿は圧巻だ。
帰路は紅葉に燃える木々の根が露出した荒れた林道を一気に駆け下るダウンヒルを体験。用意された試乗車たちは基本構造がMTBのため、ストローク量のあるサスペンションや剛性の高いフレームが路面の凹凸を吸収してくれ快適でスリリングな走りが楽しめた。かなりハードなルートを走ったことで気が付いたことは、メーカーが異なる各e-Bikeには同型のボッシュ製のアシストモーターが搭載されているのだが、同じスペックでありながらもフレームやジオメトリーの違いによって異なるライド感が味わえたことだ。
e-Bikeの楽しさが手軽に味わえる施設。トレイルアドベンチャー・フジの魅力!
約2時間のライドを楽しんだ後、一行が訪れたのは「トレイルアドベンチャー・フジ」と呼ばれる施設。今回のツアーガイドを担当してくれた岩間一成氏が勤める同施設は、富士の裾野に広がる広大な敷地にトレイルコースを整備し、初心者から上級者までがMTBを楽しめるように設計されている。
また、家族連れが手ぶらでも楽しめるようにレンタルバイクが数多く用意され、気軽にMTBを体験することも可能。もちろん、レンタルバイクにはe-Bikeも用意されているので「e-Bikeが欲しいけどしっかりと試乗してみたい」という人にもおすすめだ。
BOSCHが供給するドライブユニット! 今回のツアーで満喫した注目のe-Bike!
ボッシュが開発した電動アシストモーターには2つのモデルが存在する。主にMTBタイプに採用される「パフォーマンスラインCX」は圧倒的な走破力をもたらす85Nmの駆動トルクを発生し、テクニカルセクションや変化する路面に合わせてライダーの踏力に応じた最適なアシストを発揮する「e-MTBモード」を搭載。バイクとトラクションを意のままにコントロールすることが可能。
また、走る楽しさを求めるスポーツモデルに搭載されるのが「アクティブライン プラス」と呼ばれるユニット。静粛性と信頼性に優れ、快適な加速を約束するユニットはあらゆるシーンで活躍する。最大トルクは50Nm。
そしてココからは、今回のツアーで筆者が満喫したボッシュユニット搭載の注目e-Bikeを紹介します。
【その1】長距離ツーリング、未舗装路を走りきる!
cannondale
Topstone Neo carbon Lefty 3
キャノンデールのグラベルロードとして唯一無二の存在感を発揮するe-Bike。軽量かつ高剛性を誇るカーボン製フレームにボッシュ製のパフォーマンスラインCXを搭載。特徴的なレフティ―フォークは30mmのトラベル量を誇り悪路の走破に貢献する。
【その2】ロングライドが余裕を持って楽しめる
corratec
SHAPE PT500
乗り易さと快適性を追求したe-クロスバイク。コラテックが日本人向けに設計したスペシャルモデル。アシストユニットにはボッシュ製のアクティブライン プラスを搭載する。スタイリッシュなインチューブバッテリーがスタイリッシュさを助長。
【その3】トレイル遊びに最適なハードテール
corratec
X-VERT CX
日本人のプロライダーの思想を具現化した、トレイルライドを楽しむためのハードテイルモデル。ボッシュ製のパフォーマンスラインCXを搭載し、66°のヘッドアングルを採用することでダウンヒルでのハンドリング安定性を発揮する。
【その4】坂を素早く登り、下りをより楽しめる
TREK
Rail 9.7
トレックが誇るハイエンドe-MTB。ロングトラベルのカーボンフレークにボッシュ製のパフォーマンスラインCXを組み合わせ、パワフルなライドを約束する。太いダウンチューブに内蔵したバッテリーが存在感とデザイン性をアピール。
ボッシュの電動アシストモーターによるサポートは大きな魅力
今回のツアーに参加し強く感じたことは「電動アシスト自転車=e-Bike」ではないということだ。e-Bikeは趣味性が高く、自転車とオートバイの中間を担う自然環境に優しいパーソナルビークルである。コロナ禍により生活スタイルの変化を余儀なくされた今、密になることなく移動ができ、適度な運動ができるe-Bike。通常のMTBや電動アシスト自転車では辿り着くことのできないフィールドをより身近にしてくれる相棒は、これから欠かせない存在になることは間違いない。
特にボクのように年齢を重ね、脚力の落ちたミドルエイジからシルバー世代にとって、ボッシュの電動アシストモーターによるサポートは大きな魅力になることだろう。1980年代の後半にMTBブームを経験した世代がリターンサイクリストとして再びペダルを漕ぐには最適のチョイスになるはずだ。
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