新型コロナウイルスをきっかけに、多くの人のライフスタイルが変化しましたが、特にアメリカでは女性の間で仕事に対する考え方が大きく変わっているようです。パンデミックによる経済活動の一時休止から一転し、アメリカの就職市場では現在、記録的な求人数があると言われていますが、女性に限ってみると、新たな仕事に就く人の数はアナリストの予想を下回っている模様。アメリカの女性たちに何が起きているのでしょうか?
米ABCニュースの記事で紹介されたのは、4人の子どもを持つシングルマザーのペーニャ(41歳)のケース。彼女はGoogleでエグゼクティブアシスタントとして勤務していました。給料や福利厚生など待遇面では申し分なさそうに見えますが、彼女は新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに「子どもか? それとも仕事か?」という選択を迫られたように感じたそうで、この夏に退職を決意。「新型コロナウイルスで子どもたちの日常生活が崩れ、仕事よりも家庭で自分がより必要とされていると感じた」とのことでした。
求人サイトのIndeedによると、13歳以下の子どもを持つ男性の2021年9月の就業率は、コロナ前より1%低いだけですが、女性の場合はコロナ前の水準を4%下回っています。ペーニャのように、子育てや家族の介護などを理由に女性が仕事から遠ざかるケースは珍しいことではないのかもしれません。
しかし、そこには別の理由もありそうです。コンサルティング業界の大手マッキンゼーが発表した最新の調査によると、女性がコロナ禍でバーンアウト(燃え尽きること、極度の疲労)していることが明らかになりました。同社が行ったアンケート調査で「バーンアウトを感じた」と答えた人の割合は、男性が35%に対して、女性は42%。2020年は前者が28%、後者が32%だったので、男女ともに前年から増えていますが、女性の増加が特に顕著です。在宅勤務へのシフトがその一因かもしれません。
在宅勤務の代償
在宅勤務には通勤時間が削減されたり、子どもや家族の世話をしながら仕事ができたり、多くのメリットがあります。その反面、ONとOFFの切り替えが難しいことや、長時間労働になりやすいことなどのデメリットもあり、一概に良いとはいえません。昇進や昇給などを考えると、在宅勤務の人は、会社で働く人に比べて不利になりやすいという見方もあり、在宅勤務をする人は男性より女性のほうが多いことから、女性がキャリアで遅れを取る可能性も指摘されています。
以前からスポーツ界でもバーンアウトする選手がいますが、回復するのは簡単ではありません。働き盛り世代の女性が燃え尽きて「引退」に追い込まれることがないように、在宅勤務をする人と出社している人が公平に評価される仕組みの構築や、女性のメンタル面をサポートする体制づくりが求められています。