イギリスは、ことし3月に発表した向こう10年の外交や安全保障の方針で、インド太平洋地域への関与を強める姿勢を明確に打ち出しました。
その象徴とされるのが、最新鋭の空母、クイーン・エリザベスを中心とする空母打撃群のインド太平洋地域への派遣です。
空母打撃群には、アメリカやオランダの艦艇も加わり、日本やアメリカ、シンガポールやインドなどとも共同訓練を実施したほか、先月には南シナ海を航行しました。
価値観を共有する国々と連携した空母の派遣は、インド太平洋地域で影響力を拡大する中国をけん制するねらいもあるとみられています。
イギリスは、中国に対し、航行の自由の重要性を強調し、国際的なルールを順守して行動するよう繰り返し求めています。
世界第2位の経済大国となった中国との関係は一時、黄金時代にあるともいわれましたが、香港での反政府的な動きを取り締まる法律の施行や、新疆ウイグル自治区の人権問題などをめぐり、このところ悪化しています。
ただ、気候変動や環境といったグローバルな課題については、中国との協力が重要だと繰り返していて、空母の派遣は、中国と対立するものではないとも強調しています。
イギリスは、EU=ヨーロッパ連合を離脱後、ヨーロッパだけでなく、世界に広く目を向ける「グローバル・ブリテン」を掲げているほか、TPP=環太平洋パートナーシップ協定にも加入を申請し、交渉を進めています。
経済や貿易面で著しい経済成長を続け、今後も発展が見込まれるインド太平洋地域を地政学的に重要だと位置づけているだけに、今回の空母の派遣を通じて、中国に対しルールに基づく秩序を守るよう促すとともに、この地域におけるみずからの存在感を高めたい思惑もうかがえます。