今また“ラルフ”を着たい気分です
老若男女問わず、幅広く愛される〈Polo Ralph Lauren(ポロ ラルフ ローレン)〉。今またその存在が改めて気になっている人は少なくないはず。50年以上の歴史を持つ同ブランドの魅力は新品だけでなく、古着のアイテムにこそ凝縮されているのではないでしょうか。
そんな中、「ラルフがまた一周した」と語るのは『instantbootleg store』の坂本一さんです。これまで数々の古着に触れてきた坂本さんのその言葉の真意とは?そして今こそ手に取るべきラルフローレンのアイテムとは?新しいラルフの楽しみ方をたっぷりと語っていただきました!
坂本一さん
(instantbootleg store)
キャリアのスタートは「Levi’s」。その後、原宿「BerBerJin」にて8年余り古着業界に携わりバイイングを経験。セレクトショップ「FAN」を経て、2020年に自身のwebショップ「instantbootleg store」を立ち上げる。親しみやすい語り口でいま着たい古着を提案してくれる頼れる存在。
古着の世界で愛されてきたラルフローレン
―そもそも、坂本さんにとってラルフローレンってどんなブランドですか?
うーん、ていうかラルフはずっと“アリ”なブランドなんですよ。
―ずっとアリなブランド…。どういうことでしょうか?
例えば、70年代のアイテムでさえヴィンテージとは見なさないような、骨太なアメカジの古着屋さんでもラルフローレンはセレクトされるんです。そんなに古い年代のラルフのアイテムじゃなくてもね。ジャンル問わず、いろんな古着屋さんに置かれることが許されるブランドなんです。
―確かにそう言われれば…。その背景にはどんな理由があるんでしょうか?
古着屋さんって、アメカジのファッションに憧れた人たちが店主をやっている事が多いので、やっぱりみんなラルフローレンをリスペクトしているし、単純に愛されているんですよね。自分も「BerBerJin」に入ったタイミング付近で改めてラルフローレンを見つめ直したんですが、「最近着てなかったけど、やっぱかっこいいじゃん」と思いました。
―古着という世界では確固たる支持があると。その一方、古着に馴染みがない人にとってもラルフローレンは身近なブランドのように思います。
そうですね。確かに自分の幼い頃のアルバムを見返しても、ラルフのシャツを着ている写真が出てきたりします。親戚とかからいただいたやつだったのかな?いわゆるファッションというものを認識する年齢になる前から存在していたブランドという側面はありますね。その感覚は世間の人にもあるんじゃないかな。
―数多くの古着に触れてきた坂本さん個人としては、これまでラルフローレンのどんな部分に惹かれてきたんですか?
ラルフローレンって基本的に何でも作るんですよ。MA-1も作るし、ちょっとマニアックなフライトジャケットも作るし。オリジナルのヴィンテージものだったら15万くらいするようなアイテムでも、それを参照した古着のラルフであれば、下手したら7800円とかで買えたりするわけです。元ネタになるようなヴィンテージはやっぱりなかなか買えないし、見つからないという状況がある中で「あ、でもラルフなら着てもいいなー」と思えるんですよね。
―なるほど。元ネタのヴィンテージと比較した時、より気軽に買える存在としてのラルフに魅力を感じていた時期があったと。
そういう感覚があるヴィンテージ好きの人は僕以外にも多いと思います。言い方こそアレですけど、ヴィンテージフリークにとってのファストファッションというか。古着だけでなく、セールの時を狙って表参道の直営店で買い物したりもしていましたね。
今気になるのが、あのポニーマーク
―最近ではどんなアイテムに注目していますか?
また変わってきたんですよ。アメリカの若いスケーターの連中がポニーマーク入りのベタなラルフを着ているのを最近インスタで見かけて、ちょっと衝撃を受けました。「あ、また一周したんだな」って。僕は普通のポロシャツやチノパンには今まで手を付けてこなかったんです。自分が着るものではないなみたいに当時は思っていたので。
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―サイジングもジャスト目ですし、この普通に着ている感じが新鮮ですね。ということは、ラルフの数あるアイテムの中でも、今ならポロシャツがおもしろいということですか?
そういうことです。考えてみれば、ラルフローレンを支えているアイテムって、結局コレですよね。まずはポロシャツ、次はボタンダウンシャツかな。ラルフローレンの歴史の中で一番売れているアイテムのはずです。で、これを今アメリカの若いスケーターの連中が自然に着ている状況があると。例えば、ニューヨーク辺りでは〈シュプリーム〉と立場が逆転してきている部分もあるのかなとも思うんです。
―〈シュプリーム〉と立場が逆転、というのはどういうことでしょうか?
そもそも、90年代中頃はヒップホップ的な流行があって、普通の〈ポロラルフローレン〉や〈ポロスポーツ〉を着ることが当時のメインストリームだったはずなんですよ。そんな中、世界的なファッションカルチャーの発信地であるニューヨークのスケーター連中は、あえてローカルショップオリジナルの〈シュプリーム〉を着ていたわけです。ラルフなんて着ねーよっていう奴ら(笑)。ところが、〈シュプリーム〉もグローバルな存在になってマスに広がった今、現地のファッション感度の高い若者がまたラルフのほうを選び出しているのがおもしろいなーと。
―ラルフに代わって〈シュプリーム〉が出てきて、またラルフに代わりつつある…。海の向こうでそういう流れがあるとしたら、確かにおもしろいですね。
もちろん〈シュプリーム〉もローカルから離別したのかと言うと、全然そんなことはないんですけどね。要するに、みんなが気にするようになって久しいあのボックスロゴ以上に、今はラルフのこのポニーマークがロゴとして気になるんですよ。古着屋で働いていた頃はポニーマークなんて付かないほうがかっこいいと思っていたのに(笑)。
―古着屋さんでラルフを探す際にポニー刺繍を避ける感覚は個人的にも覚えがあります(笑)。その感覚が今では完全に逆転したと。
ですね。僕にとっては、もはやポニー刺繍がないラルフのアイテムは意味ないレベルです(笑)。今まではラルフのアイテムにこのマークがあるのは当たり前過ぎて、ある意味で無地みたいな扱いをされていた部分もあると思うんです。もう一回このポニー刺繍をブランドのロゴとして意識してみたいんですよね。
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オーセンティック=ファッションの系統の垣根がないアイテム
―とはいえ、ポニー刺繍入りのポロシャツって、相当ベタなアイテムですよね…。
わかりますよ。ゴルフに行くおじさんが着るものとか、ハワイ行った時にとりあえず免税店で買うか、とかのイメージですよね(笑)。でも、例えばレッドウィングのようなアメカジが好きなお父さんも、若いスケーターやBボーイも等しく着られるアイテムを探してみると、選択肢って意外となくて。そんな中、ラルフのポロシャツは胸を張ってみんなに薦められるんです。アメカジとの親和性が高いことに加えて、ファッションの系統の垣根がないというのが一番のポイントですね。
―ああ、なるほど。
それってオーセンティックってことだと思うんですよ。僕にとって、オーセンティックという概念はいろんなカテゴリーが重なり合う部分に成立するイメージ。似た言葉でベーシックという表現もあるけど、ベーシックはあくまでひとつのカテゴリーの中の根っこの部分を指す言葉ですよね。その言葉の対比で言うと、ラルフのポロシャツは誰が着ても成立するオーセンティックなアイテムだと思っています。
―坂本さん的にはラルフのポロシャツはベーシックというより、オーセンティックなんだと。そのポロシャツですが、具体的にはどう選んでいけばいいのでしょうか?
そこなんですよ。スケートすることが生活の中心にあるような若い子だったら、何も考えずにラルフのポロシャツを着てもサマになるけど、みんながスケートするわけじゃない。まして、20代の若者ではなく、30代や40代のいい大人が着るなら選び方をまた新たに考えなくちゃいけないんです。まず、先ほど言ったようにポニーマークは絶対にあったほうがいい。さらにポニー刺繍とボディの色の組み合わせに少しこだわってみようというのが僕の提案です。
ポニーの色選びにこだわって、着る理由を見つける
―今回はその具体例として、計5着をピックしていただきました。パッと見は普通のラルフのポロシャツですが、確かにボディとポニー刺繍の色の組み合わせが少し変わっている気がします。
結局みんながよく買うのは定番色なので、古着でよく見つかるポロシャツのポニー刺繍の色は大体ネイビーかレッドなんですよ。もちろんそれもいいんだけど、もうちょっとだけ珍しいものを探してみようよっていう、メンズならではの面倒くさいけど楽しい部分の話です。
Polo Ralph Lauren POLO shirt(¥5,500)
ネイビー地のポロシャツのポニー刺繍によく見られる色はレッド。この一着は温かみのある発色のイエローというのがポイント。実にラルフらしい色合わせで使いやすそう。
Polo Ralph Lauren POLO shirt(¥5,500)※SOLD OUT
―特別レアなものを探すというより、ちょっと注意深く観察して選んでみるという感覚ですね。値段も手頃だし、楽しんで探せそうです。
アメリカのクールな奴らが着てるからと言ってそのまま真似してしまうと、ただのコスプレになってしまうじゃないですか。こういうちょっとしたこだわりを持って選ぶと、コスプレに見えなくなるんです。ただの受け売りではなく、自分が着る理由を見つけていくことが大事というか。こういう視点があると、ファッションって楽しくなるんです。
―いいですね。年代や生産国などのポイントはあるんですか?
ポロシャツは別に古い年代にこだわる必要はないですね。80年代から90年代初頭まではアメリカ製があったりするんですが、今の感覚からすると細長いシルエットのものが多いんですよ。90年代以降のほうが横に広いシルエットになるので、今のファッションとスムーズに繋げやすいと思います。
今のストリートブランドと合わせるのがおすすめ
―サイズは今ならどう着たいとかありますか?
めちゃめちゃ大きくなくていいと思いますよ。ちょっと肩が落ちるかなくらいのサイズ感でいいと思います。僕も最近はまたジャストサイズ寄りの気分になってきてますし。上はちょっとデカくてもいいけど、下はジャストになってきてるかな。
―合わせる他のアイテムについておすすめはありますか?
ちょっとストリートっぽいブランドを合わせると、よりラルフの魅力が引き立つと思います。全身ストリートブランドで固めるコーディネートより、絶対新しく見えるはず。ブランドのチョイスは〈シュプリーム〉でも〈ダブレット〉でも何でもいいんですけど。あ、パンツでいえば〈ニードルス〉のトラックパンツとか合わせるのもいいかも。今までされてなかったような組み合わせを試してほしいですね。
―今回は2着をピックアップして坂本さんのほうでコーディネートを組んでいただきました。
―ラルフのポロシャツを取り入れることによって、コーディネート全体の鮮度が上がって見えるのがおもしろいですね。
ストリートブランドと合わせるというのは提案の一例なので、基本的には服の系統も関係ないし、何を合わせてもいいと思います。アイテムとしては、〈リーバイス〉の501みたいなものですからね。本当にいろんな着こなしができるアイテムだと思いますよ。
―全くノーマークだったアイテムですが、個人的にもかなり欲しくなってきました。
まあラルフローレンというブランド自体に、今またすごくいいタイミングが来ているってことです。30代・40代の人は少し懐かしいだろうし、ラルフに袖を通したことがない20代の若者にとっては新鮮なはず。「なんか今ラルフローレンがキテるらしいよ」って友だちに教えたり、教えられたりして楽しんでほしいなあと。今回紹介したようなポロシャツをその入口にしてくれたらうれしいですね。
instantbootleg store
web:instant-bootleg.com
instagram:@hajime0722