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持っている服を長く着ることの気運が高まる今、そもそも心地良い服を選ぶことはもちろんですが、すでに持っている服をカスタマイズするという方法もアリ。ただ、カスタマイズと聞いて若干のハードルの高さを感じてしまう方も多いはず。そこであえてここでは、調味料などで料理の味に変化をつける“味変”と例えましょう(と言いつつ、記事中ではカスタマイズという言葉を使ってますが)。

今回は、これまで数々の味変レシピを開発(?)してきたという高円寺『Lampa』オーナー・遠山さんに、味変の思い出、魅力、3つのレシピをお伺いしました。話を先取りすると、2つのレシピなら今すぐ実践できそう。いつもながら脱力ムードでお届けします。


遠山勇さん
“TOKYO STRONG STYLE”をテーマに、タフで男らしく都会的なアイテムをセレクトする『Lampa(高円寺)』のオーナー。生まれも育ちも東京のヒップホップ好き。最近はスーパー銭湯にハマっている。

人と違う服を着たいと思うのと同じで、表現方法が違うだけ

ー そもそも洋服のカスタマイズ(=味変)をやり始めたのはいつ頃ですか?

……たぶん、高校の頃じゃないかな。服好きの人ならよくやってたと思うけど、学ランをいじったのが最初だね(笑)。

ー ああ(笑)。

よく「改造」とか言ってたっけ。一見普通の学ランなんだけど、裏のボタンを付け替えたり、裏地をサテン地のビッカビカな生地にしたり、あとはズボンの裾幅を狭くしたり。校則が比較的ゆるい高校ってのもあったけど。あ、でも短ランだけは先生によく注意されてたなあ。

ー 制服を、その、「改造」するきっかけはなんだったんですか?

当時のファッション雑誌でよくカスタム術が紹介されてたんだよね。たしか渋カジ全盛の時、1990年頃かな。ジーパンの裾を切るだの、スリットを入れてブーツカットにするだの。で、それを高校生の主戦場たる制服にアメカジ風に落とし込む。周りもよくやってたね。それこそズボンをブーツカットに改造してる人もいたし、カスタマイズとは言わないけど〈ジョニーケイ〉っていう変形学生服ブランドのボンタンを穿いてる人もいた。

ー 遠山さんは?

自分は被るのが嫌だったから、アメリカのスケーターの真似をして裾幅を狭くしてた(笑)。要は、制服という決まった枠組みの中で、いかに個性を出すかを楽しんでたんだよね。

ー カスタマイズすることに抵抗はなかったんですか?

ないね。というか、そういう年代なんだと思う。雑誌からの情報を否応なく受け取ってた年代。やっぱりアメリカへの憧れが強かったんだろうね。「アメリカのリアルな作業着を目指すぞ!」なんつって、砂場に埋めたり、アスファルトに叩きつけたりもしてたね(笑)。懐かしい。

ー 黄色っぽい色味のデニムを目指してたわけですね(笑)。

そうそう(笑)。結局、飽きたTシャツの首元をわざと伸ばしたり、乾燥機にかけたり、それらと対して変わらないんじゃないかな。さすがに砂場に埋めるのはおすすめしないけど(笑)、カスタマイズはその延長線上にあるイメージ。人と違う服を着たいと思うのと同じで、表現方法が違うだけなんじゃないかな。

味変レシピその1_
キャップを染めQで染めてみる

ー 本日は、遠山さんがこれまでカスタマイズ(=味変)してきた物の中から、3つのアイテムを持ってきてもらいました。まずは1品目。これはなんでしょう?

1992年頃かな? 大学2年の時に買った〈ギャップ〉のロングビルキャップです。元の色はネイビーだったんだけど、染めQというスプレーで2〜3年前にブラックに染めてみました。そしたら、すごくいい感じになって。ブラックはブラックでも他にはない感じ? コーティングした感じが良いでしょ?

ー 「それどこの?」と思わず聞いてしまう見た目ですね。染めたきっかけはなんだったんですか?

大学の頃、かなり気に入っていて、クラブでもよく被ってたんだよね。そしたら、いつの間にか汗染みができていて、それが見るに耐えないほどになっていて…っていう。

ー キャップあるあるですね。

そうそう。すごい汗染みって、取り返しがつかないでしょ? 一度クリーニングに出そうとしたら「5,000円は見ておいてください。あとは応相談です」って言われたこともあって。でもデザイン自体は好きで、ずっと取っておいたんだよね。で、2~3年前に、たまたま東急ハンズに行ったら染めQを見つけて、「こんなものがあったのか!」と。すぐ試したよね。カスタマイズする時は勢いが大切。

「ずっと気になっていたNo.1の文字も染めQのおかげで目立たなくなった(笑)」と遠山さん。

ー これはカスタマイズ初心者にとってもハードルが低そうですね。

うん。スプレーするだけだからね。コスト的には、このキャップを染めるときにはスプレー1.5本使ったから、3,000円くらい? キャップはもちろん、実はスニーカーも染めたことがあって、それもおすすめ。ただもちろん、よっぽど履かない物で最初は試したほうがいいね。自分も失敗しておじゃんになったことがあるから(笑)

味変レシピその2_
ファットシューレースを穴に通してみる

1996年購入

ー さて、次は2品目です。これは?

大学を卒業した後ぐらいに買ったネルシャツだね。たしか、高円寺の古着屋で買ったと思う。色がドンズバで、ずっと持ってる。

ー カスタマイズした跡が見受けられないのは…。

いや、無くしたんだよね(笑)。実はこれ、胸元の穴の部分にファットシューレースを通してたんだよ。

ー ファットシューレース!

そう(笑)。おそらく元々はレザーの紐が通っていたんだろうけど、古着屋で買った時点ではもう無くて。「じゃ〜、ファットシューレスを通そう」と。当時よく聴いていたヒップホップに影響されたんだろうね。

ー カスタマイズによって自分の趣味を主張していたと。

そう。ただ、自分でも「なんじゃいこれ」って思ってた(笑)。ネルシャツにファットシューレース…ってね。合ってるのかよくわからない。でも周りの人には「なにそれ?」ってよく聞かれたなあ。あれこれ説明すると「あ〜よく考えたね」って。ダメとは言われなかった。

〈Sportland〉というブランドのネルシャツ

ー 紐が通せる穴にはファットシューレースを入れてみる、斬新なカスタマイズ術ですが、今やるならいかがでしょう?

う〜ん、自分も今年で48(歳)だし、さすがに服には付けないかな(笑)。あ、でも〈ブルーオーバー〉のスニーカーに通したらおもしろそう。国産のクリーンなスニーカーが、途端にストリートに寄る感じ? ブルーオーバーでそんなことをしてる人はいないから、同じスニーカーでもより長く楽しめるし、オンリーワンになると思うな。

『Lampa』で取り扱っているブルーオーバーのスニーカー。たしかにファットシューレースを入れることで表情が変わりそう。おまけに丸っこいフォルムとも相性が良い。

味変レシピその3_
パンツのシルエットを自分に合わせてみる

ー さて、最後のカスタマイズ品です。これは?

お店の開店当初に売っていた、ドイツのワークブランド〈ケンペル〉のデッドストックだね。実はストレートとフレアシルエットの2種類があったんだけど、フレアのほうだけ売れ残っちゃって…。それなら「フレアもストレートにしてしまおう!」ということで、知り合いの古着屋に頼んで自分のものだけストレートにしてみたんだよね。結局、他のものはめんどくさくてやってないんだけど(笑)

ー「急を要して」がここでくるわけですね(笑)。たしかに、シルエットの調整は自分でやるにはハードルが高そうですね。

そうね。ただ特に古着だと、デザインや色は気に入ってるんだけど、シルエットだけは気に入らないってことはあると思うんだよね。あとは、そもそも自分のキャラや体型に合わないってのもあるだろうし。そんな時の一つの策として、シルエットの調整は頭に入れていても良いんじゃないかな。

ー 本日お話を聞いていて、長く服を着るためのカスタマイズというよりかは、カスタマイズそれ自体を楽しむのが大事なんだと思いました。

そうね。長く着ることが目的なのではなくて、自分にフィットするように服をカスタマイズしていった結果、長く着られているという感じかな。服と戯れるというか。もちろん自分が気に入っている物であるという前提はあるんだけど。

ー 奇しくも売れ残ってしまったケンペルのワークパンツも、誰か気に入ってくれた人の手に渡ると良いですね。

最近、高円寺ではフレアを履いてる人を多く見かけるようになったし、もはやカスタマイズしなくてもいいんじゃないかと思ってる(笑)

ー では、欲しい方はぜひLampaさんへ。

うん、値段は応相談ね(笑)。


Lampa

住所:東京都杉並区高円寺南4丁目8−1
営業:13:30~19:30(不定休)
電話:03-3316-4030