【編集部注:】
11月下旬、ヤンゴン市内のショッピングセンター「ミャンマープラザ」で、警備員によるデモ隊への暴行騒ぎがあり、これに抗議したテナント数十店舗が閉鎖し、市民も買い物をボイコットする事態に発展しました。
事件から1カ月が経ち、本来ならクリスマス商戦真っ最中の12月下旬の様子を伝えるnoteの投稿を紹介しました。
~ 以下、noteの投稿より ~
先日、ヤンゴン市内にあるショッピングモールのミャンマープラザを訪れた。クリスマスセールに向けて多くの店舗が営業していたものの、客は異様に少なく、店員の方が多いぐらいで、館内に響くジングルベルの陽気なメロディーが、かえって不気味さを際立たせていた。
店内で抗議活動の若者たちを拘束
ベトナム資本のミャンマープラザは、ヤンゴンで最も人気のあるショッピングモールと言っていい。地方部では今も悲惨なニュースが伝えられるが、ヤンゴン市内は人出も戻り、一見すると日常を取り戻しつつあるように思われる。中でも最近のミャンマープラザは、クーデターのことなどすっかり忘れてしまったかのように連日買い物客で賑わい、特殊な空間だった。
異変が起きたのは、11月25日のことだった。多くの人で賑わうミャンマープラザの館内を、女性を含む数人の若者たちが、クーデターを起こした軍への抗議活動の意思を込めてプラカードを手に歩いていた。それを見咎めたミャンマープラザの警備員たちが彼らを捕まえ、暴行を振るった。彼らはその場で一時拘束され、しばらくして解放された。
その後の展開は早かった。若者たちが拘束されたニュースはたちまち広がり、くすぶっていた人々の怒りに火が付いて、ボイコット運動が自然発生的に生まれた。タクシーでミャンマープラザを行先に告げると、運転手は乗車を拒否し、ミャンマープラザに出店している店も相次いで一時閉店を発表した。ミャンマープラザ側が慌ててFacebookページに謝罪のメッセージを公表したが、人々の怒りは収まらなかった。
事件から1カ月が経ち、Facebookに出されていた謝罪メッセージは気づくと消えていた。ボイコットがまだ続いているのか気になり、ミャンマープラザを訪ねることにした。
人のいない店に響くクリスマスソング
大通りに面した入口は閉鎖されていたため、別の入口に回った。兵士の姿は見えなかったが、どこかから監視しているかもしれないと緊張しながら歩くと警備員がいたため、店が開いているかどうか尋ねた。
「はい、多くの店が開いてます。はい!!」
警備会社か、ミャンマープラザから指導されているのか、行き過ぎのように思われるほど丁寧な応対だった。
館内に足を踏み入れ、驚いた。客が非常に少ないのだ。いつもの1割もいないのではないだろうか。クリスマスを前に、館内ではサンタクロースが応援に出ており、店舗も8割ぐらい開いていたが、人の声が聞こえてこない。ゴーゴーと唸る空調に、カタンカタンと鳴り続けるエスカレーター。そこに陽気なクリスマスソングだけが鳴り響いている様子を見ているうちに、人が突然消えたSF映画の世界に入り込んだような気がした。
日本人の中には、「ヤンゴンに日常が戻ってきた」と言っている人がいると聞く。しかし、その「日常」とは、ミャンマープラザに見る通り、かりそめのものに過ぎない。
*参考:
The Irrawady
Shoppers Boycott Myanmar Plaza After Attack on Anti-Regime Protest
Shoppers Boycott Myanmar Plaza After Attack on Anti-Regime Protest (irrawaddy.com)
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