もっと詳しく

顔認識のような危険なバイアスのかかった監視技術の導入を拒絶する都市、郡、州が増えているが、これにメイン州も加わった。

同州の新しい法律は、米国で最も強力な州全体にわたる顔認識に関する法律であり、幅広い超党派の支持を得ただけでなく、州議会の両院で満場一致で可決された。法案を支持した進歩的な議員から、法案を委員会の外で採決した共和党議員、メイン州のACLU、州の法執行機関に至るまで、さまざまな政治的立場の議員や支持者が一堂に会し、メイン州やプライバシーの権利に関心を持つすべての人たちにとっての大きな勝利を手にした。

メイン州は、ACLUなどの草の根の活動家や組織が主導する、顔認識技術の使用を禁止または厳格に規制する全国的な運動の最新の成功事例だ。Pine Tree State(メイン州)からGolden State(カリフォルニア州)に至る、顔認識を規制する全国的な取り組みは、21世紀のデジタル時代にテクノロジーで自由の境界を決めることはできないという広範な認識を示している。

顔認識技術は、市民の権利と自由に対する深刻な脅威となっている。民主的な監視がなければ、政府がこの技術を捜査網の監視ツールとして利用し、言論と結社の自由、正当なプロセスの権利、そして放置される権利が脅かされてしまう。この技術が規制されないままだと、民主主義そのものが危機にさらされることになる。

顔認識の負荷が平等にかかっているわけではないことは認識されている。黒人や褐色人種のコミュニティ、特にイスラム教徒や移民のコミュニティは、政府による差別的監視の対象となっている。さらに悪いことに、顔監視アルゴリズムでは、肌の色が濃い人、女性、高齢者、子どもの顔を正確に分析するのが難しい傾向がある。簡単にいうと、この技術は機能していても機能していなくても、危険をはらんでいるということだ。

もっとも、この技術を規制するすべてのアプローチが平等になされているとはいえない。メイン州は、州全体の包括的な規制をいち早く可決した州に挙げられる。公民権団体、地域社会、宗教的自由団体の強い反対にもかかわらず脆弱な法案を可決したのは、ワシントンが最初だった。その法案が可決された背景には、ワシントンに本拠を置く巨大企業Microsoft(マイクロソフト)からの強力な支持があった。ワシントン州の顔認識法の下においても、テック企業は数百万ドル(約数億円)相当の自社技術を、考えられるあらゆる政府機関に売却することができるのだ。

これとは対照的に、メイン州の法律は別の道をたどり、一般のメイン州民の利益を民間企業の利潤動機よりも優先させている。

メイン州の新しい法律は、公立学校や監視目的など、行政のほとんどの分野で顔認識技術の使用を禁止している。法執行機関が顔認識を使用する際の例外を慎重に設定し、その使用基準を作成し、米国の他の地域で見られたような悪用の可能性の回避を図っている。重要なのは、メイン州で仕事をしたり、政治集会や抗議活動に参加したり、友人や家族を訪ねたり、医療を求めたりする人々に対して、顔認識技術を使って監視を行うことを禁じている点だ。

メイン州では、法執行機関が顔認識の要請を行う前に、さまざまな制限がある中で、正当な理由があるかどうかの基準を満たす必要がある。また、顔認識のマッチングを唯一の根拠として、逮捕や捜索を行うことはできない。さらに、地元の警察が独自の顔認識ソフトウェアを購入、所有、使用することも禁じられており、他の起きているように、Clearview AIのような後ろ暗い技術が、メイン州の行政当局によって秘密裏に使用されることはない。

メイン州で制定された法律をはじめとするこの種の規制は、顔認識のような未検証の新しい監視技術によってコミュニティが被害を受けないようにするために不可欠なものだ。しかし、米国人のプライバシーを顔の監視から効果的に保護するには、地方レベルの断片的なアプローチだけでなく、連邦レベルのアプローチが必要である。だからこそ、米国民にとって、2021年6月に両院の議員が提出した「顔認識および生体認証技術モラトリアム法案」を支持することには大きな意味がある。

ACLUは、米国のすべての人々を侵入的監視から保護するこの連邦法を支持している。私たちは、顔認識技術を阻止し、それを支援する運動に参加することを議員たちに要請するよう、すべての米国国民に強く呼びかけたい。

編集部注:本稿の著者であるAlison Beyea(アリソン・ベイヤ)氏はメイン州のACLUのエグゼクティブディレクター。Michael Kebede(マイケル・ケベデ)氏はメイン州のACLUの政策顧問。

関連記事
ニューヨーク市で生体情報プライバシー法が発効、データの販売・共有を禁止
物議を醸し出しながらも広く使われる顔認識のAnyVisionがソフトバンクなどから約261億円調達
英個人情報監督局が公共の場でのライブ顔認証による「ビッグデータ」監視の脅威に警鐘を鳴らす

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:メイン州顔認証プライバシー

画像クレジット:FotografiaBasica / Getty Images

原文へ

(文:Alison Beyea、Michael Kebede、翻訳:Dragonfly)