新連載「謎の規格USB」
普段からすごく使っているけど、「え、そんなTipsがあるの?」と驚くことの多い規格「USB」。この連載ではそんな知識を少しずつお届けしよう。
充電、転送からストレージまで、日常に欠かせないUSBの謎を解き明かしていく新連載、スタート。まずは著者の橋本新義さんからごあいさつを。
昨今のPCやMacスマートフォンやタブレットに欠かせない存在となっているUSB端子。読者の皆さまも、例えば毎日のスマートフォンの充電や、PCやMacへの周辺機器の接続といった局面でお世話になっている……というより、普段は意識せずに使っているのではないだろうか。
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USBロゴ
しかし、実はこのUSBという端子とその仕様は、一皮むくとけっこう謎と不思議が積み重なる、最後のフロンティア……いや、トワイライトゾーン的な世界でもある。
というのも、長い歴史(初期の仕様であるUSB 1.0の発行は1996年1月、つまりもう四半世紀なのだ)の中で、拡張に次ぐ拡張や当初から意図しなかった仕様変更、そして良い意味でも悪い意味でも「ユーザーのニーズに寄り添った」変更が積み重なった結果、非常に複雑な仕組みとなってしまっているためだ。
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USB-IF公式サイト
また、USBの仕様をとりまとめる団体である「USBインプリメンターズ・フォーラム」(USB Implementers Forum、通称USB-IF)は、複数の企業集団による非営利団体として運営している。
そのため、いざ仕様を作るとなった際は、良くも悪くも1社だけの要求による改良などが通りにくい、という事情もあるのだ。
あまりにもダイナミックな拡張がUSBの持ち味?
そう紹介してきたが、実はUSBの“奥深さ”を示すには、これだけでは足りないところがある。というのも、実際の仕様拡張が非常にダイナミックなのがUSBのすごさであり、複雑な点であり、また「ユーザーのニーズに寄り添った」結果であるからだ。
この辺りの良い例が、最新の仕様拡張(米国時間で2021年5月26日に発表)された『USB PD リビジョン3.1』だ。この仕様拡張により、USB機器を通して供給できる電源容量は240Wにまで拡張された。
USB Type-C、240W電力供給をサポートへ
それまでのUSB PDは最高100Wだったため、プラス140Wであり、一気に2.4倍になったのである。これだけでもすごいのだが、1.0仕様の時点では、供給できる電力は最大2.5Wでしかなかったということを考えると、「四半世紀で、規格上で扱える電力がなんと96倍になった」とも取れる。
昨今PCで消費電力の話というと、高性能GPUやCPUにおいて(電力当たりの処理効率は高まりつつも)消費電力が増大している点を連想する読者もおられるだろうが、それでも96倍などという倍率にはならない(例えば1994年や95年のCPUは、その時点で最大10Wほどの消費電力だった)。
もちろん本来は、同じ電力とはいえ直接比較するものではないため、この表現はレトリックがバリバリに使われているのだが、USBの拡張がいかにとんでもないか……という一端を表現するのには適切ではないか、と思われる数値なのである。
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USB Type-A端子(上)とType-C端子(下)
そして端子の形状も、今はまだまだ移行期にあり、Standard-A(いわゆるType-Aを正式にはこう呼ぶ)とUSB Type-C、そしてマイクロUSB(Micro-USB)ことUSB 2.0 Micro-B端子などが混在している。
将来的には無事に(?)Type-Cへの移行となりそうだが、そもそも同じ仕様でありながら、ここまで大きく違う端子が導入されるという仕様自体、けっこうレアな事例でもある。
スマートフォンの充電は「想定外」
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2021年06月30日 11時00分 公開
「USBってスマホの充電に使うやつだよね」の誤解を解く 仕様がこれほどこんがらがったワケ
新連載「謎の規格USB」
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スマートフォンの充電は「想定外」
また、実は使われ方という点でも、この25年間で大きく変わっているのがUSBだ。
というのも、多少乱暴な説明となるが、当初のUSBは「データ通信がメインで、電源供給としての使われ方は主流ではなかった」ためである。
2.5Wという電力が供給できたのは、接続した機器が比較的電力を食わない場合、別途電源を接続しなくても使えるほうが便利なので、というメリットを考えたものだった。
しかし今や、よほどのiPhoneヘビーユーザーでない限り、USB端子を接続する局面で最も多いのは「スマートフォンとACアダプター(充電器)やモバイルバッテリーを接続して、充電する」場合ではないだろうか。
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ACアダプターのUSBからスマートフォンに充電
こうした視点で見ると、現在では一般的な「スマホの急速充電に使われるUSB」でさえ、実は仕様が作られた当初の想定からすると想定外に近いのである。
使われ方でさえもここまで大きく変わったのは、USBが当初から汎用性を考慮した仕様であることもあるが、それ以上にやはり、結果的にではあるけれど「ユーザーのニーズに寄り添った」結果であるから……と呼ぶのがふさわしいだろう。
このようにUSBは、歴史を振り返ったり、仕様を細かく見たりすると、意外な話や不思議な話がかなり多く出てくる仕様でもある。「謎と不思議が積み重なる、最後のフロンティア……いや、トワイライトゾーン的な世界」と表現したのは、こうした事情があるためだ。
このコーナーでは、そうした普段使っているとなかなか気が付かない、USBの謎や不思議の一端を、新しい話から古い話までを混ぜつつ、また手広く、なるべく堅苦しくならないように語っていきたい。意外なまでに奥深いUSBの世界、読者にもきっと驚く話があるのではないかと思っている。
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初代iMac(1998年)のUSB端子
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