4Gamer読者の皆様,おひさしぶりです。25年超のジャニーズファンであり,ジャニーズについて書く仕事が多いという,公私両面のジャニヲタ(ジャニーズオタクを自認する強火のファン)なライター,みきーると申します。
以前,木村拓哉さんが主演を務める「JUDGE EYES:死神の遺言」(PS4 / PS5 / Xbox Series X 以下「ジャッジアイズ」)をプレーして,“推しに転生”という贅沢を味わったジャニヲタの私。そんな私のもとに,またしても朗報がもたらされました。
なんと,続編の「LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶」(PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One 以下「ロストジャッジメント」)では,本編とは別軸のストーリーが楽しめる“ユースドラマ”で,八神と部活を楽しめるそうじゃないですか! しかも,ドーンと10種類。もうそれ,八神とまわる青春スタンプラリーってことですよね……?
「もう一度,あの日に帰りたい」と思ったことは,誰にだってあるはず。再び八神の姿を借りて,熱くさわやかな青春の日々をいざ体験しなくては!
ユースドラマ体験記の前に,まずは事のあらましを見ておきたい。
「ロストジャッジメント」は,「ジャッジアイズ」の3年後が舞台となっている。主人公・八神隆之は弁護士資格を持つ38歳の私立探偵。演じるのはもちろん,我らが木村拓哉さんだ。八神は東京・神室町を根城に,相棒の元極道・海藤正治と共に探偵業を営んでいる。浮気調査から猫探しまで快く引き受け,革ジャンにデニムで颯爽と街を駆けるさまは健在だ。
そんな八神のもとに,友人の天才ハッカー・九十九誠一と元窃盗団の杉浦文也から応援の依頼が舞い込む。八神にインスパイアされた2人は,横浜・伊勢佐木異人町で探偵事務所を開いたのだという。九十九らは横浜の私立誠稜高校の理事長から「学内でイジメがないか,しらみつぶしに調べてほしい」というオーダーを受けたものの,全校生徒の調査はさすがにしんどい。そこで八神に声を掛けたのだ。
しかし,さっそく向かった高校で,八神は思いがけず出鼻をくじかれる。調査のために仕掛けたカメラが,ミステリー研究会の部長・天沢鏡子に見つかったのだ。このままでは,“盗撮目的の不審者”の烙印を押されてしまう。やばいよやばいよ!
やむなく正体を明かした八神は,ミス研が顧問不在で廃部の危機にあることを知り,“外部指導員”を買って出る。外部指導員になれば校内を自由に出入りできるので,仕事もはかどるというもの。プロの探偵に興味津々の天沢は,学内で非行生徒が相次ぐ事件の裏に潜む,とある都市伝説を調査することを条件に,八神にミス研の外部指導員を頼むという。……オーケー。やってやんよ!
硬軟ごちゃまぜの部活十番勝負へGO!
八神は天沢から送られる情報をもとに,誠稜高校の部活動や外部活動など,さまざまなコミュニティで潜入調査を行うことになる。“潜入調査”といえば,木村拓哉さんが演じたエリート刑事・新田浩介(映画「マスカレード・ホテル」「マスカレード・ナイト」)が記憶に新しい。高級ホテルのフロントクラークに扮し,そこで働く人々の矜持や美学に触れ,誠実に向き合うことで真実に近づいてゆく。その姿は八神とも重なる。
外部指導員とはいえ,口先で檄を飛ばしていればいいわけでなく,求められるのはプレイングマネージャーともいうべき姿勢だ。潜入先は活動のベースとなるミス研をはじめ,ダンス部,eスポーツ部,ロボット部,写真部,スケボーチーム,ボクシングジム,果ては暴走族やカジノ,ガールズバーまで。実に硬軟ごちゃまぜのラインアップとなっている。
手始めに乗り込むのは,「パパ活をしている女生徒がいる」との疑惑がささやかれるダンス部だ。
キャプテン・西園さやか率いる“誠稜ラビッツ”は大会を前に今ひとつ伸び悩んでおり,部員たちは八神に助言を求めてくる。八神はカンフーの動きを取り入れた振り付けを提案し,これにひらめきを得た部員たちは色めき立つ。冴えてる? でしょうよ。だって八神だもの。
なりゆきで八神も踊ることになるが,ここでプレイヤーに要求されるのはタイミングに合わせてボタンを押す,音ゲーのスキルだ。リズミカルにボタンを押すと,女子を従えた八神がイキイキと踊る。
……え,待って。これって,木村さんファンにとっていきなりの玉手箱じゃね!?
ダンスの練習をする際は曲目を選べるうえに,フリースタイルやロッキング,ポッピングなどの好きな振り付けを自由に組み合わせられる。しかも,振り付けを選ぶたび,八神が手本を踊って見せてくれるのだ。な,なんて手厚い……!
そうやって吟味した振り付けで,愛しい八神が踊る。八神の“中の人”,木村さんには大いなる魅力がいくつもあるが,なかでもチャーミングなダンスの魅力は計り知れない。その輝きは,八神もまた然り。“推しの専属コレオグラファー”になった気分を堪能でき,さらに“私のために舞う八神”を鑑賞できるなんて多幸感が渋滞してるよ!
ダンスの上達具合に応じて,「いい感じだと思います!」「八神さん,すごいです!」と女子たちがほめそやしてくれるのも心地よき。のっけからナンだが,もう一生ダンス部にいたい。
とはいえ,精進を重ねダンス大会で勝つほどに“パパ活女子”の真相にも迫れるので,ここはがんばって先を目指すことにする。
誠稜高校の四神獣として頑張る八神
ダンス部で信頼を勝ち得ると,また新しい人間関係が広がり,新たな潜入先の糸口も見つかる。さまざまな部活やコミュニティをハシゴし,真実をつかむためには,八神の指導力をガンガン上げねばならない。指導力はコミュニティのチームワーク,集中力,アピール力,度胸の4つをバランスよく高めることでアップする。
だが,ここで外部指導員たる八神(筆者)の前に,得手不得手がどかん!と横たわる。
八神の潜入先の生徒たちは基本的に彼を信用しておらず,うさんくさく思っているので,彼らに認められるには勝負で勝つ,または他校との試合でチームを勝利に導く必要がある。
しかしながら,戦いのテーマが苦手分野だと,八神をめちゃくちゃかっこ悪い目に遭わせてしまうのだ。筆者の場合で言うと,暴走族にレースを挑んで惨敗したり,スケボーで壁に激突したり,ロボット部の試合に至っては自陣を広げることもできずに完敗を喫してしまった。リモコンを握りしめたまま顔をゆがめ,「すまない,みんな……」と八神に謝罪させる切なさよ。
それでもめげずにバイクにまたがり,スケボーに乗り,ぎこちなくもロボットを操り続けると,次第に光が射してくる。見事勝利をつかみ,「よっしゃ〜!」と快哉を叫ぶ八神の表情は,清々しくいとおしい。
ところで,八神,そして誠稜高校の生徒たちの活動圏でもある横浜・中華街は4つの聖なる獣――青龍・白虎・玄武・朱雀を各門に頂き,街の護りとしている。くしくもユースドラマの八神は,四神獣が司る4つの立場から生徒たちを支えることになるのだ。
青龍は,金運を呼び込み,商売繁盛や業績アップを叶える神様。攻めの部活動には,潤沢な資金力も必要だ。
たとえばロボット部。良いパーツを開発するには,良い素材を調達しなくてはならない。だが,「煌びやかなアルミニウム」「綺麗な電線」など,良いパーツはそこそこお高い。かくして八神は不要品を売ったり,全身ギラギラの成金野郎を倒してお金をかすめ取ったりして,部活の経済的支援に貢献することとなる。
暴走族のデスレースに臨むため,速いバイクを買ってカスタムすることも,ボクシングの必勝スキルを買い取ることも,やがては生徒たちの成長につながる投資と言えよう。
白虎は,邪悪な気運を遠ざけ,幸せを引き寄せるという。
生徒の中には,スリルを求めてカジノに出入りしたり,ゲーム感覚でスリに手を染めたりする者も。未熟さゆえの行動は,ゆくゆく大きな悪に踏み込むきっかけにもなりかねない。ギャンブル好きな生徒はポーカーの腕を磨いて負かし,スリを楽しむ生徒は犯罪の瞬間を撮影して自省を促す。「対象者の顔が写っている」「ピンボケしていない」など,条件を満たした証拠写真を押さえるのは探偵業務のお約束。若者に芽生えた禍の芽は,とっとと摘み取ってやるべし。
玄武は,逆風の盾となって繁栄と長寿をもたらす力を持つ。
顧問が不在だったり,顧問にやる気がなかったり,顧問が部活をつぶそうとしていたり……。誠稜高校には,部員が気の毒になる部活がけっこうある。また,恋愛や家族,友人関係のもつれに部員たちが揺らぐこともある。大切なものを守りたい一心で不穏な行動に出る者もいて,そんな彼らの心を開くにはとことん寄り添ってやることが大切だ。
探偵としての観察力,傾聴力を活かし,逆風を追い風に変えてやる八神のやさしさは,生徒たちの本来あるべき姿を照らし出す。
朱雀は,大いなる翼で悪を払いのけ,平安を守るという。
校内にうごめくトラブルの背後には,少年少女の悩みにつけ込む裏サイトや,半グレ集団の影,さらには“プロフェッサー”と呼ばれる黒幕の姿も見え隠れする。調査中に敵と出くわし,大事な生徒を守らねばならない場面もある。悪にまみえたら,華麗な足技で集団を蹴散らす“円舞”,強力な手技を敵に撃ち込む“一閃”,さらに相手の攻撃を受け流し,襲いかかる武器を奪って無力化する“流”(ながれ)。こうした3つのバトルスタイルを使い分け,正義の鉄拳制裁を下そう。
本作でも「誰でも,簡単に,カッコいいアクションバトル」のコンセプトのもと,戦いに不慣れなレディも適当なボタン連打で大丈夫。赤・青・緑の閃光をまばゆく放ち,八神が凜々しく戦ってくれる。
これも仕事! ガルバ通いにイッヌとお散歩
そういえば男の人って,ガールズバーやキャバクラ通いを問いただすと,「いや,仕事でさぁ」とか言いますよねぇ……。「バナナはおやつに入りますか!?」よろしく,「ガルバは部活に入りますか!?」と訊きたいところだが,八神のガルバ通いは本当に調査の一環である。
なんでも,高校生の分際でガルバに出入りする者がいるらしく。情報を引き出すべくナンバーワンのエミリちゃんとだけ話したいが,そんな雑な態度では他の子たちに総スカンを食ってしまう。将を射んと欲すればまず馬を射よ。紳士たるもの,すべての女の子にときめいてメモリアルを積み上げるような態度で臨むべき。
さすがの八神もへべれけになると会話が怪しくなってくるが,ふだんから女の子の話に耳を傾けておけば,素っ頓狂な返事をしてがっかりされることもない。どの子にも丁寧に接し,「一緒に飲もう!」と明るく勧め,きれいにお酒を楽しむ八神の振る舞いは,とても好もしい。
ほどよく酔って帰ると,九十九,杉浦,そして探偵犬・乱歩が迎えてくれる。伊勢佐木異人町では九十九らの事務所“横浜九十九課”が八神の拠点になる。八神に影響を受けたというだけあり,横浜九十九課のしつらえは,神室町の八神探偵事務所とよく似ている。
ここでは八神の事務所と同じようにレコードをかけてくつろいだり,好きなインテリアを飾ったりできる。
さらに,連日の調査に疲れたら,犬を連れて散歩に出るといい気分転換になる。乱歩は天沢家の愛犬だが,好奇心旺盛で八神にもなついている。街を歩けばラッキーなアイテムをめざとく見つけ,八神を案内してくれることもある。
探偵犬は外出先からスマホで呼ぶこともできるので,「最近,犬分が不足してるわ」と思ったら,呼んでみるといい。駆けつけてきたイッヌを「来たな! よしよし! よーし,よし!」とねぎらう八神は最高にほがらかで癒される。ぜひとも試してみてほしい。
いつの間にか全身にみなぎる,指導員愛
部活動やコミュニティの活動に励み,人の輪が広がるほどに,ひとつひとつの事件のつながりや,おぼろげだった黒幕の姿が浮かび上がってくる。八神は,それぞれのコミュニティについて関係者の写真や証拠品をまとめた調査ファイルを作っているが,とくにきめ細かく記された内容にじっくりと目を通したい。そこには調査の概要だけでなく,「指導員としては○○くんの気持ちに気づけてやれなかったのはくやしい」「ここまで積み上げてきたものをぶっ壊されてたまるかってんだ」など,部員を思う八神の気持ちも綴られていて,彼が本当に人を大切にしていることが染みわたるように伝わってくる。
ゆっくりと読み進めると,八神が紡いだ言葉たちは,頭の中で冬の陽だまりのような木村さんの声で再現される。部員たちの青春の伴走者でもある八神の尊い記録,読み飛ばしてはもったいない。
10種類のコミュニティを制すると,都市伝説とされる事件の全貌が白日の下にさらされる。ハードな展開なれど,これまで誠心誠意“人”とぶつかってきた八神の人望が,なみなみならぬ救いを呼ぶ。
八神は15歳で両親を亡くし,自身は青春のきらめきを味わうことなく大人になってしまった。青春をかみしめなくとも大人にはなれる。それでも,ほろ苦く甘やかなその時を逸したことを,彼は切なく思っていたようだ。では,“青春”というチャプターをスキップした人は,もうそれっきりなのだろうか? ――そんなことはない。
スタンプラリーをするように八神と共に部活やコミュニティをまわり,そこに集う人と触れあうことで失われた青春の追体験をすることができる。八神も,埋めそこねたピースをようやく手にすることができたのではないか。ユースドラマのクリアは,「ひととおりの部を見てまわりました」という状態にすぎない。「自分はこれ!」という部を見つけたら,さらにやりこんで新しいアイテムを手にしたり,難度を上げて試合に挑戦し直したりもできる。
きっと,青春に終わりも締め切りもない。それを八神は教えてくれた。やり残したなら,新たにチャレンジしたいなら,いつからでもまたやってみればいい。八神と一緒に。今日が駄目でもまた明日。「また明日」って,いい言葉じゃないか!