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銅メダルをかけたオランダ戦のシュートオフ。最後の1射に臨む武藤選手の頭に嫌な光景が一瞬浮かびました。

「韓国戦の敗戦が若干頭の中にあった」

この試合のおよそ1時間前、シュートオフにもつれ込んだ準決勝の韓国戦で最後に放った武藤選手の矢は9点部分へ。
10点を出していれば大金星を挙げられただけに悔しさの残る敗戦となりました。

そして迎えたオランダ戦、10点を出すだけではなく、オランダの選手がマークした10点部分よりも内側に入れなくてはいけないという極限のプレッシャーがかかる状況に追い込まれました。

このとき、そのプレッシャーを察した古川選手は武藤選手に声を掛けました。

「武藤ならできるよ、武藤ならしっかり決められるよ」

オリンピックは今回で5回目、数々の修羅場を乗り越えてきただけに武藤選手の気持ちが痛いほど分かる古川選手は短くひと言だけ、前向きなことばを掛けたのです。

決めればメダル、外せば終わりという中、大先輩のひと言で背中を押され、韓国戦の嫌なイメージは吹き飛んでいました。

冷静な心を取り戻し、「自分のできることをやるしかない。悔いが残らない1本を撃とう」と目の前の的に集中した武藤選手。

鮮やかに10点を射ぬき、日本アーチェリー界にとって歴史的な勝利をもたらしました。